M-5000 パワーアンプ

フローティング&バランス・パワーアンプ

21世紀における理想のHiFiオーディオアンプ像を求めて到達したヤマハの 結論、フローティング&バランス・パワーアンプ。1970年代から長らくHiFiアンプの主流であり続けてきたピュア・コンプリメンタリー回路とまったく異なるこの方式は、出力段の+側と−側に同一極性の出力素子を用い、さらにNFBラインや電源供給も含めたL/Rチャンネルそれぞれの+側と−側の計4組の増幅回路を完全独立させることで、出力段におけるプッシュプル動作の完全対称化(プル-プル化)を実現したヤマハの特許技術です。電源を含むパワー アンプ全回路は文字通りグラウンドから完全にフローティングされ、これ まで見逃されてきた微細な電圧変動やグラウンドを巡るノイズの影響も原理的に排除します。さらにこの方式は、1組あたりの増幅回路に要する部品点数が少ないことから信号経路をシンプル化することができ、音の鮮度という面でも大きなアドバンテージがあります。さらにM-5000では、プリメインアンプ A-S3000で実績を積んだMOS-FET出力素子をパラレルで使用することで、低インピーダンス駆動能力の向上を実現しています。

リジッド・ストリームラインド・コンストラクション

リジッド・ストリームラインド・コンストラクションとは、シャーシ全体をイン ナーとアウターの2重構造とし、さらにL側パワーアンプ部、R側パワーアンプ部、電源部の3ブロックをそれぞれ独立したベースフレームで支持する独創的な筐体構造。全5ピース・2mm厚と1.6mm厚の銅メッキ鋼板からなる三次元構造ベースフレーム(インナーシャーシ)が強固な骨格を形成したうえ、電源部とパワーアンプ部がアウターシャーシへ間接的にマウントされる形を採ることで、あらゆる不要振動の全方位的な遮断を実現しています。また、この構造によって生まれたインナーシャーシとアウターシャーシとの間の床下空間は配線スペースとして有効に活用することにより、電源トランスから パワーアンプへ、パワーアンプからスピーカー出力端子へ、左右等長かつ最短距離での理想的な給電と信号伝送を可能にします。さらに電源用ブロック ケミコンは内部インピーダンスを左右するアルミ箔と配線タブとの接点(溶接ポイント)を増強した専用品を一流コンデンサーメーカーと共同開発したうえ、大電流経路の主要配線はすべて特製の真鍮製ネジと真鍮製ラグを使ったネジ止め配線とするなど、電源まわりの低インピーダンス化を徹底して極める地道な努力を細部にわたって積み重ねました。

“機構的な接地”に着目したメカニカルグラウンド・コンセプト

重さのある、すなわち大きな慣性を持つ多数のパーツで構成されるパワー アンプにおいて、それらの振動対策が音を左右する最重要ファクターであることは言うまでもありません。それを具体化したひとつの成果が、前述のリジッド・ストリームラインド・コンストラクションです。しかし、私たちが求める低音のリアリティや美しい響き、抜けの良い開放的なサウンドをさらに高いレベルで達成するには、その先のブレークスルーが必要でした。それが、電源トランスやブロックケミコンなど振動を伴う大型重量パーツの質量を機構的に接地させるメカニカルグラウンド・コンセプトです。左右の重量バランスを完全な均衡に保つことを設計の基本に、シャーシ機構やパーツの搭載位置、溶接やネジ止めといった固定方法の選択を音の観点から総合的に検討して機構的な接地点を求め、さらにピンポイント支持とプロテクトとを両立する真鍮削り出しの新開発レッグ(特許申請中)で最終チューニングを行うことで、実在感あふれる空間描写力と豊かな低音の表現力を獲得しました。そして、その実現に欠かせないもうひとつの要素が、ネジ1本1本の締め付けトルクに至る厳密な生産管理です。開発部門から製造部門までが一丸となって理想の音を目指す一連の行程は、楽器づくりのそれに驚くほど近い。

圧倒的な音のスケールを支える大容量トロイダルトランス

電源トランスには、磁束漏洩が少なく電力変換効率やレギュレーションに優れた容量1200VAのトロイダル型トランスを選択しました。内部巻線をダイレクトに引き出したうえ、圧着された真鍮製ラグ端子で回路と直接接続するなど、ロスのない給電と低インピーダンス化を徹底。トランス底面とインナーシャーシの間にはヒヤリングで厳選した3mm厚の真鍮製ベースプレートを挟み込み、低音の圧倒的なスケールと強靭さ、広大な音場感を実現しました。

比類のない力感と精度感を表現したエクステリアデザイン

VU/ピークの切り替え表示とディマー(減光)が可能な高精度レベルメーターを中央に据え、いかにもヤマハらしいピアノフィニッシュのサイドウッドで装ったM-5000のエクステリアは、フラッグシップ・パワーアンプにふさわしい力感と精度感をシンプルな構成要素によって表現。フロントパネルは9mm厚、トップパネルは6mm厚。いずれもアルミ無垢材の切削加工品で、とりわけトップパネルは、高い剛性と放熱効率を両立しながら、五線譜をモチーフとした放熱口をあしらい楽器メーカーらしい仕上げとしました。また、すっきりとした直線的な開口を持つメーターウィンドウには、パネル側の切り 口と対をなすように上下端をテーパーカットした8mm厚のクリスタルガラスが 嵌め込まれ、音楽の躍動を視覚的に楽しめるようデザイン。レバースイッチにはプリアンプC-5000と同じく、感触にこだわった新規構造を採用しています。

その他の機能・特長

●無垢の真鍮から削り出し加工した専用設計スピーカー端子 ●フェイズインバーターを装備したバランス音声入力端子 ●モノラルアンプとしての使用を可能にするブリッジ接続対応 ●プリアンプなどとの電源連動が可能なトリガー端子 ●電源の切り忘れを防止するオートパワースタンバイ機能