ライブサウンドに最適なネットワークオーディオ
オーディオ機器をネットワーク化することで、ライブサウンドの世界に様々な可能性が生まれます。多チャンネルのオーディオデータを1本のケーブルで送信できるため、従来のアナログシステムで必要とした多数のケーブルが大幅に少なくできます。さらにネットワークオーディオにおける音声の接続(パッチ)は、物理的なケーブル接続とは完全に独立して柔軟に行えます。また、ネットワークオーディオはデジタル伝送なので、アナログオーディオの音質劣化の原因となる電磁干渉やケーブルの静電容量に対する耐性も強いと言えます。ここではライブサウンドに最適な「Dante」についてご紹介します。
Danteは標準的なIPネットワーク上で動作するネットワークオーディオ技術で、低レーテンシー・多チャンネルの高音質オーディオデータを転送できます。さらに、強固なリダンダントシステムも構築可能です。
Danteにより、現代のライブサウンドに求められる柔軟なシステム構築を高いレベルで実現できます。
Dante対応製品:デジタルミキシングコンソール、CLシリーズ、QLシリーズ I/Oラック、Rシリーズ など
Danteネットワーク構築のポイント
ミキシングコンソールCL/QLシリーズ、I/OラックRシリーズ、およびDante-MY16-AUDカードを用いたDanteネットワークを構築する場合、必ずGigabitに対応したネットワーク機器(ケーブルやスイッチなど)を使用してください。
Danteでは、Primary回線とSecondary回線を用いた強固なリダンダントシステムを容易に構築できます。万一いずれかのネットワーク機器にトラブルが生じても信号が途切れることはありません。また、CL/QLシリーズとRシリーズはシンプルなデイジーチェーン接続にも対応しており、スイッチを経由せずにコンソールとI/Oラックをケーブルで直結することもできます。 Danteネットワークは、クロックの位相も含めて高精度で同期していて、さらに機器間のレイテンシーを明示的に固定できます。CL/QLシリーズでは、Rシリーズも含めたシステム内のレイテンシーを一括設定できます(0.25ms~5ms)
このとき、機器間のホップ数(機器とスイッチの数)によって最短レイテンシーが決まることにご注意ください(これを下回るとノイズや音切れの原因となります)。特に大規模システムでレイテンシーに対する要求が重要な場合は、デイジーチェーン接続ではなくスイッチを用いたリダンダント接続として、機器間のホップ数が無駄に増えないようにネットワークを設計する必要があります。
Dante with AES67
「AES67」はAudio Engineering Society (AES)により2013年9月に制定されたオーディオオーバーIP技術の相互接続を実現するための標準規格です。2014年にAudinate社がDanteのAES67対応を発表したことを受けて、ヤマハはDante製品の本体ファームウェアと、搭載するDanteファームウェアをアップデートすることにより、AES67への対応を進めてまいりました。
これにより、「Ravenna」や「Q-LAN」「Livewire」といった異なるオーディオネットワーク対応機器とDante対応機器を「AES67」を介して接続することが可能となり、システム拡張性がさらに向上しています。
Dante with AES67 対応製品:デジタルミキシングコンソール CLシリーズ、QLシリーズ、I/Oラック、Rシリーズなど
Using AES67 with Dante: an Introduction (日本語字幕)
オーディオネットワークの新たな規格AES67の概要、どのような場合に有用か、Danteとの連携、およびシステム例を紹介します。
ケーブルについて
Dante機器の接続には、以下のようなネットワークケーブルをご使用いただけます。ただし最長伝送距離は、ケーブルの性能、端末処理の品質、使用環境などによって異なることにご注意ください。
・CAT5e以上のケーブル
・最長伝送距離は、ケーブルメーカーの公表値をご確認ください
・電磁干渉防止のためにSTP(シールド付ツイストペア)タイプのケーブル
ケーブルの伝送性能が不確かな場合は、ケーブルチェッカーを用いてTIA/EIA-568-Bに準拠しているかどうかで判断することもできます。
検証済みケーブル
ブランド | 品番 | 最大長(*) | 外径 | Note |
---|---|---|---|---|
Link | CUS LK CAT6 STP | 100m | 8.5mm | 柔軟でツアー用途可 問い合わせ先: 有限会社デジコム |
CAE-Groupe | Giga-Audio | 100m | 6.7mm | 柔軟でツアー用途可 耐雨性、耐UV性 |
Klotz | RC5SB | 100m | 6.6mm | 柔軟でツアー用途可 |
TACHII | T-SB5E202W-4P | 100m | 8.0mm | 問い合わせ先: 立井電線株式会社、 有限会社デジコム |
YMH-18C-1 (multi-core) | 85m | 19.5mm | ||
Belden | 74003PU | 80m | 6.65mm | 柔軟でツアー用途可 耐雨性、耐UV性、耐熱性、耐摩耗性、耐油性 問い合わせ先: トモカ電気株式会社 |
TMB | ProPlex PCCAT5EP | 75m | 7.1mm | 柔軟でツアー用途可 |
カナレ | RJC6-4P-SFM | 100m | 8.6mm | 柔軟でツアー用途可 問い合わせ先: カナレ電気株式会社 |
*免責事項
これらのケーブル最大長は、ヤマハで測定して提示しているものです。Fluke社のケーブルアナライザーDTX-1800を使って、該当長でTIA/EIA-568-B(CAT5e)に準拠しているかどうかを測定しています。また、CL5とRio3224-Dを用いたDanteシステムで12時間稼働して音切れなく動作することを確認しています。
ただし、ケーブルの個体差や端末処理の品質、その他ケーブル周りの環境が影響するため、これらの安全な動作を保証するものではありません。不確かな場合は、ケーブルアナライザーを用いてお使いのケーブルを測定することをおすすめします。これらの最大長は、Danteの1Gbpsデータ転送に対して測定したケーブル長のため、100Mbps転送を想定したときよりも短いかもしれないことにご注意ください。
スイッチについて
デイジーチェーン接続に対応したDante機器を除いて、Danteネットワークを構成するには以下のようなネットワークスイッチが必要となります。
・ノンブロッキングGigabitスイッチ
・EEEなどの省電力機能は、確実に無効にできること
・スイッチの設定やモニターが可能なマネージド(インテリジェント)スイッチを推奨
・Strict Priorityで4つのキューを持つDiffserv (DSCP) QoS対応を推奨
また、システムの要求に合わせて、スイッチ間の長距離伝送、大規模ネットワークにおける使用帯域の効率化などを検討する必要がある場合は、下のスライドをご参照ください。
メディアコンバーターについて
機器間(スイッチ間)で長距離伝送する必要がある場合は、光ファイバーケーブルをお使いいただけます。 スイッチを使用する場合は、単体のメディアコンバーターではなく、スイッチにGBICやSFPなどのモジュールを装着して光伝送することを推奨します。メディアコンバーターは、Store-and-Forward方式ではなく、Cut-Through方式のものを推奨します。