コンサートレポート

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詩と音楽が溶け合うシューマン夫妻の愛にあふれた歌曲の世界 ~梅村知世 シューマン チクルス Vol.2

2019年8月3日(ヤマハ銀座コンサートサロン)

 ロベルト・シューマンの妻で、女流ピアニストとして活躍し、作曲家でもあったクララ・シューマン。8人の子どもを育て、ヨーロッパ各地で演奏活動を繰り広げ、夫のロベルトを献身的に支えた彼女への敬愛の念を込めて、梅村知世さんが企画した『シューマン夫妻室内楽コンサート ~クララ・シューマン生誕200周年に寄せて~』の第2回目が、2019年8月3日、ヤマハ銀座コンサートサロンで開催されました。今回のテーマは「歌曲」。梅村さんの東京藝術大学時代の同級生で、現在共にベルリン芸術大学で学んでいるバリトン歌手の深瀬廉さんを迎え、シューマン夫妻の歌曲の魅力を堪能させてくれました。

「歌曲の年」と呼ばれるロベルト・シューマンが歌曲に没頭した1840年、最初に手がけた作品《リーダークライス op.24》で幕を開けたこの日のステージ。シューマン夫妻と関係が深かったハインリッヒ・ハイネの詩集『歌の本』の中の「若き苦悩」からの9篇の詩の世界が、深瀬さんの深みのあるのびやかな歌声と梅村さんが奏でるヤマハCFXの多彩な音色でニュアンス豊かに表現され、主人公の青年の揺れ動く心情を映し出しました。
 続いてクララ・シューマン《6つの歌曲 op.13》。クリスマスやロベルトの誕生日にクララがロベルトに贈った曲も含まれるこの歌曲集には、清楚なロマンティシズムと愛が満ちあふれています。名ピアニストだったクララのヴィルトゥオーゾぶりを感じさせる技巧的なパッセージを、梅村さんは繊細なタッチで軽やかに奏で、ひとつひとつの言葉を慈しむような深瀬さんの歌声にみずみずしく寄り添いました

 後半は、ロベルト・シューマンの歌曲の最高傑作、《詩人の恋 op.48》。ハイネの詩集『歌の本』の中の「叙情的間奏曲」からの16篇の詩が、ピアノと歌によってドラマティックに描き出されていきます。第1曲「美しい5月に」の幻想的なピアノの序奏が流れた瞬間から、会場は異次元の世界に誘われ、恋の喜び、憧れ、悲しみ、失意、そして希望……、若き詩人の心の遍歴を旅するような時間が流れ、最終曲「古き忌わしい歌」のピアノの後奏が消えると、感動に包まれた客席から大きな拍手が湧き起こりました。
 アンコールは、クララ・シューマン《ワルツ》。跳躍するピアノと歌声が渾然一体となって、メイン・ディッシュの後のデザートのように甘く爽やかな作品を楽しませてくれました。そして、ロベルト・シューマン《ミルテの花 op.25より「献呈」》。1840年、結婚式の前夜に、ロベルトが花嫁クララに捧げた曲で、温かな余韻を残してコンサートを締めくくりました。

 終演後のインタビューで、深瀬廉さんは「これまで伴奏ピアノの音色を意識することはあまりなかったのですが、ヤマハCFXの音色には驚きました。柔らかく繊細な音色が、歌に合わせて絶妙に変化し、ロマンティックで夢見心地なシューマンの音楽にぴったりだと思いました」と語り、梅村知世さんは「クララの女性としての生き方に憧れを感じているので、彼女の生誕200周年の年に、こんなに素敵なプログラムを演奏できて幸せです。今回もヤマハCFXは、シューマン夫妻の歌曲のピアニスティックな伴奏の魅力を、色彩豊かな音色で引き出してくれました」と、ヤマハCFXへの賛辞を惜しみませんでした。

 このシリーズの最終回となる「シューマン チクルス Vol.3」は、2020年4月12日、ヤマハ銀座コンサートサロンで開催される予定です。

Text by 森岡葉

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