ネットワーク機器の選択

ネットワークスイッチの選択

デイジーチェーン接続に対応したDante機器を除いて、Danteネットワークを構成するには以下の要求を満たすネットワークスイッチが必要となります。

1. ノンブロッキング レイヤー2 ギガビットスイッチ

2. EEEなどの省電力機能は、確実に無効にできること

3. スイッチの設定やモニターが可能なマネージド(インテリジェント)スイッチを推奨

4. 4つの絶対優先のキューを持つDiffserv (DSCP) QoS対応を推奨

以下では、それぞれのポイントをより詳細に説明します。

1. 必ずノンブロッキング レイヤー2 ギガビットスイッチをお使いください。すべてのポートで同時にギガビット転送可能(ノンブロッキング)であることは、スイッチング容量が1Gbps×ポート数×2(双方向)を満たしていることで確認できます。チャンネル数が少なければ100Mbpsでも転送できることもありますが、より安定したシステムを構築するために必ずギガビットに対応したスイッチをお使いください。また、一部の安価なスイッチでは、ギガビット転送に対応していてもパケット転送能力(pps: packet per second)が十分でないものもありますのでご注意ください。1ポート(ギガビット)あたり1.4Mpps(スイッチ全体では1.4Mpps×ポート数)のパケット転送能力あれば十分であると言えます。

2. EEE機能(省電力Ethernet)は必ず無効にしてください。Green EthernetやIEEE802.3azとも呼ばれています。 EEEはネットワークのトラフィックが少ないときに機器の消費電力を抑える機能です。EEE機能に対応したスイッチ間では、省電力設定が相互に自動調整されますが、この相互調整が正しく機能しないスイッチもあります。したがってEEEは、オーディオやビデオのストリーミングのようなリアルタイム転送には対応していないとも言え、これによりクロック同期性能が悪化して音声が途切れる原因となる場合があります。

3. システムの要求に応じてスイッチの設定を変更したり、スイッチの状態をモニターしたりできるように、マネージド(インテリジェント)スイッチを強く推奨します。シンプルなシステムではそのような機能を持たないアンマネージドスイッチでも動作します(ただしEEE機能は確実にオフであること)が、より安定したDanteネットワークを構築するためには必要となります。

4. 4つの絶対優先(Strict Priority)キューを使ったDiffserv (DSCP) QoSに対応したスイッチを強く推奨します。QoS (Quality of Service)は、ある特定のデータを優先して転送するための技術です。QoS機能はほとんどのマネージドスイッチに搭載されています。Danteが推奨するQoS設定をスイッチに適用することにより、他のデータトラフィックに対して、Danteのクロック同期情報を最優先、オーディオデータをその次に転送することができます。したがって、同じネットワーク上にやむを得ずDante以外のデータも流れる場合や、大量(たとえば、1本のネットワークケーブルに300チャンネル以上)のオーディオデータが流れる場合でも、よりよいシステム性能を発揮することができます。

小規模かつシンプルなシステムの場合は、上記の4つを満たすスイッチをお使いいただければ問題ありませんが、システムの要求によっては以下のような項目も検討する必要があります。

 5. VLANやIGMPスヌーピングなどのパケット制御機能

 6. 光モジュール対応

5. マネージドスイッチは、QoS以外にも様々な管理機能を備えているので、ネットワーク性能を最大限に引き出すためにこれを利用しない手はありません。同じネットワーク上にやむを得ずDante以外のデータも流れる場合は、VLAN機能により物理的なネットワークを共有しながら論理的なネットワークを分けることにより、不要なパケットの送受信を抑えることができます。多数のDante機器に同じオーディオデータを送信する場合は、マルチキャスト通信が必要となることがあり、その場合でもネットワークを安定して動作させるためにはスイッチがIGMPスヌーピング機能に対応している必要があります。これらの機能の詳細および設定方法については、後述の「ヤマハSWP1シリーズの設定」で説明します。

6. スイッチ間で長距離伝送する必要がある場合は、スイッチがSFPやGBICなどの光モジュールに対応しているヤマハスイッチ SWP1シリーズやSWX2300シリーズがよいでしょう。メディアコンバートについては詳しくは、後述の 「メディアコンバーターの選択」をご参照ください。

その他、同一ネットワーク内に複数のマネージドスイッチを設置する場合は、同じメーカーの(できれば同じモデルの)スイッチを使う方が効率的であると言えます。1台のスイッチを設定すれば、その設定を他のスイッチにコピーすることができます。また、予備のスイッチを確保しておく場合でも、故障したスイッチと同じモデルのスイッチであれば入れ替えがスムーズです。

以下のようなスイッチを使って正しく設定することで安定したDanteネットワークを構築することができます。

ヤマハSWP1シリーズ

DipスイッチひとつでDanteに最適化でき、また電源二重化対応やetherCON/opticalCON対応など堅牢で豊富な接続手段を持つなど、ツアー用途でもDanteネットワークをかんたんに構築しモニタリングできるインテリジェントなマネージドスイッチです。

ヤマハSWX2300シリーズ

比較的安価だがホールや会館等の設備用途としてラックにマウントし、Danteネットワークをかんたんに構築しモニタリングできるインテリジェントなマネージドスイッチです。

【汎用マネージドスイッチ】

本ガイドでは、Cisco SG300シリーズを例に設定方法など説明します。