各部の機能とチェックポイント

マウスピース選びの基本は、唇の厚さ、歯並びにぴったりあったものを選ぶこと。唇に当てたときに違和感がなく、吹いていて疲れないことが大切なポイントです。そして、特に自分の求める音で全音域がムラなく楽に出せるかをチェックしてください。奏者に合わないマウスピースを使っていると、上達を妨げるばかりでなく、誤った奏法を身につけてしまう恐れもあります。あなたに最適なマウスピースを見つけるには、あなた自身の基準を持つこと。以下のチェックポイントを参考に、種々のモデルを試奏して、自分にぴったりのマウスピースを選んでください。

リム内径

リム内径は小さいほど、高音域の演奏が容易で耐久性に優れていますが、音量は小さくなります。逆に大きいほど、低音域が容易で音量も増えますが、耐久性は劣るようになります。一般にシンフォニーオーケストラのプレイヤーは大きいサイズを好み、吹奏楽は中庸、ジャズのビッグバンド奏者は小さいサイズを使用する傾向があります。

しかし、最初から高音域を出したいために極端に小さいサイズを使用すると、マウスピースを無理に押しつけて高音を出す誤った奏法を身につけてしまう恐れがありますので注意を要します。

※“リム内径の大きなマウスピースを使っている奏者ほど上手なプレイヤーである”

といった誤った認識が少なからずあるようです。確かに大きいサイズのマウスピースを使用するには、"強い"唇が必要ですが、音楽ジャンルによって求められるよい音は変化し、プレイヤーはその理想の音を出すためにマウスピースや楽器を必死になって選ぶのです。

一般にジャズプレーヤーに好まれる小さいマウスピースとシンフォニーオーケストラのプレイヤーに好まれる大きなマウスピースとを比較するのは無意味です。さらに言えばリム内径の基準は音楽ジャンルのみにあるのではなく、奏者自身のなかにこそ存在するのであり、各個人が自分の求める音のイメージを持つことが大切です。

リムカンター

直接、奏者の唇が触れるため、いちばん敏感に反応を示す部分です。一般に比較的フラットでリム幅の中心よりやや内側に頂点を持つタイプが好まれています。これはマウスピースを口に当てた時に自然にリムバイトを意識することができ、安定感が生まれるためです。リムカンターに傷や凹みがあると、唇のスムーズな振動を妨げるため注意しましょう。

リム厚さ

厚いリムは、唇の支持面積が広くなるため高音域が容易となり長時間の演奏が可能になりますが、唇の自由度が制限される分、柔軟性が失われます。反対に薄いリムは、音のコントロールは容易になり幅広い音域をカバーできますが、リムが唇に食い込んでしまうと疲れやすくなる傾向があります。一般的に初心者は中庸な厚さのリムを選択することが無難ですが、個人差もありますので、違和感がなく、自然に演奏できる疲れにくいタイプを選んでください。

リムバイト

アタックの明確さや音程のコントロールに大きな影響を持つ部分です。バイトのシャープなマウスピースは、正確な発音が可能となり充実した音が得られ、音程も安定しますが、シャープすぎると唇の柔軟性が妨げられ、滑らかな音の移行が難しくなります。また、強くマウスピースを押しつけると唇を傷つけてしまう恐れもあります。逆にバイトが丸く不明確なものは、音の立ち上がりが悪く、安定した音を持続させられなくなります―。このことは弦楽器を思い浮かべれば容易に理解できるでしょう。バイオリンの弦を指でしっかりと押さえておかないと、音がぼんやりとし音程が不安定で、充実した音をつくれないことと同様です―。つまり、リムバイトは唇の振動をしっかりと支える役目を果たしているのです。

カップ

浅いカップは明るい音色で高音域の演奏が容易になりますが音量は小さく、逆に深いカップは暗めの音色で低音域が出しやすく大音量が得られます。また、カップはその形状によってUカップとVカップの2つに分けられます。Uカップになるほど、明るい音色で高音域が楽になり、Vカップに近づくほど暗めの音色で低音域が楽になります。

フレンチホルンなどでは、UカップとVカップを組み合わせた形状や角度の異なるVカップどうしを組み合わせたような形状のマウスピースもあり、ダブルカップと呼ばれています。ダブルカップでは、高音域を手前の浅いカップが受持ち、低音域を奥の深いカップが対応するため全音城で吹きやすく、しかも、やや深めの音色になります。

カップの内部に傷や深い切れ目の入ったものは、スムーズな息の流れを妨げる恐れがあります。これは、リムからショルダーまでの形状をしたカップカッターなどでマウスピースを製作する場合によく発生します。

ショルダー

一般にUカップは鋭いショルダーを持ち、適度な抵抗感があり、輪郭のはっきりした明るい音色になります。また、Vカップは丸く滑らかなショルダーで、抵抗が少なく柔らかで暗い響きになります。

スロート径

スロートは、マウスピース内径でいちばん細い部分であるため、音圧が最大点となります。したがってこの部分の内径の長さが抵抗の量に大きな抵抗を与えています。一般に細く長いスロートは、抵抗が強くスピード感がある明るい音色になり、高音域の演奏が容易です。太く短いスロートは、暗めの音色で大音量が得られますが、抵抗が少なく疲れやすくなる傾向があります。

初心者の場合、自分が吹きやすいことを抵抗がない、吹きにくいことを抵抗があると判断しがちですが、これはその人にとっての違和感であり、本来の抵抗とは違うので注意を要します。

バックボア

バックボアは吹込管の内径に対応して複雑な広がりを持ち、特に、高音域の音程に影響します。また、バックボアの太さによって音色と抵抗感が変化します。一般にバックボアの細いマウスピースは、明るめの音色になり抵抗が増し、高音域の演奏が容易になります。逆に太いものは、暗めの音色で抵抗が減少し、低音域の演奏が容易になります。

シャンク

シャンクのテーパーが楽器のレシーバーのテーパー(※)とぴったり合っていることが前提です。シャンクの太さは、楽器に対してどのくらいマウスピースが入るかを決定するため、全体のピッチや個々の音程、さらには吹奏感にも関与します。このため、適正な入り深さでグラツキのないマウスピースを選ぶことが重要です。

※テーパー:円錐状に直径が次第に減少しているその度合い

カップカッターによる製品のバラツキ

マウスピースは原材料である真鍮の棒を削り出して作られていますが、現在でもほとんどのマウスピースメーカーで、カップカッターと呼ばれるリムからショルダーまでの形状をした刃物(総形バイト)で重要な内径形状を削る古典的な加工法が取られています。当然のことながら、製作本数が増えるほどカッターの刃は切れなくなり、切削抵抗の大きな部分ほど激しい磨耗を起こしてしまいます。そこで、不均一に磨耗したカップカッターを研ぎ直して再利用するのですが、再研磨されたカッターは、本来の形状とは異なっているわけなので、これが同品番の中でバラツキを生む大きな原因となっているのです。概して、リムバイトやリムカンターの形状が本来より丸くなり、カップの深さが深くなります。しかも、大量生産される初心者向けの品番に、このような粗悪なマウスピースが多く存在します。このような粗悪なマウスピースで練習すると、上達できないばかりでなく、誤った奏法を身に付けてしまう恐れもあるのです。このためヤマハでは、製品のバラツキの発生を出来るかぎり抑さえるために、古い加工法とは根本的に異なった最新の加工技術と加工設備を導入しています。

目で確かめるチェックポイント

トランペットのスロート内径(Ф3.65mm)を直径で0.1mm変更しても、吹奏感に大きな影響を及ぼします。このためヤマハでは、製品のスロート内径の誤差が設計基準寸法に対して±0.025mmの範囲におさまるように専用ゲージで品質管理を行っています。この精度を維持するには、当然、最新の加工技術と高精度の設備が可能になります。しかし、これからマウスピースを選ぼうという一般のプレーヤーが測定することは困難なため、これから説明するような目視による判断も有効です。

マウスピースをリム側からまっすぐのぞいてみてください。スロートの穴がカップの中心にあいていないものは、加工のセンターがずれてしまったものです。また、内径に段差があると三日月状の線(削りムラ)が見えるのでチェック。これらは、マウスピース本来の性能が発揮できないため選んではいけません。シャンク側からもバックポアが中心にあいているかをチェック。さらに、その端面にギザギザした傷があるものは内側にバリ(※)を伴っており、スムーズな息の流れを妨げてしまいます。また、使用中にシャンク端面を誤って変形させてしまったものも、息漏れの原因となりますのでそのまま使い続けないでください。

※バリ:金属などの加工で縁などにはみ出た余分な部分