役目・音響特性

金管楽器の発音原理とマウスピースの役目

金管楽器の音は唇の振動が駆動源となっていますが、実際に音波はどのようにして管体内を伝わり楽器音が作られるのでしょうか―。

金管楽器を吹くとき、奏者は、自分の肺の中の空気を口腔内に送り込み、圧力を高めます。その空気の圧力は逃げ場を求めて唇を外に押し広げようとし、唇は圧力に耐えかねて空気を洩らす-、この時の唇の小刻みな振動によってカップ内部以降の空気を振動させ音波を発生します。音波はマウスピースの最小径のスロートを通り、最終的に金管楽器のベル端面に達します。ここで初めて、楽器内部から密度の違う外界に伝わるため、音波の反射と放射が同時に起こります。この放射波が楽器の音として耳に聞こえるのです。一方、反射波は、楽器の中を先ほどとは逆方向に、マウスピースの方に伝わり、圧力として唇に返ってきます。この圧力により、開かれていた唇は閉ざされ、その結果、口腔内の圧力が再び高まって、同じことを繰り返します。そして、この繰り返し(音波の往復)によって、楽器の内部に定在波が発生するというバランスのとれた状態になった時、演奏者は無理なくその楽器の自然倍音を演奏することができるのです。この倍音は、楽器の基音に対する整数倍の振動数をもち、奏者の唇の張力変化などにより、各倍音を選択的に吹奏することができます。

また、金管楽器のマウスピース側は閉端となり、全音城で、常に音圧(定在波の中での、空気の膨張収縮による圧力差)が最大になります。したがって、マウスピースは、板厚分布からくる重量の変化や、材質、加工法による物性の変更等により、楽器から発生する音を、最も効率良く変化させることができる重要な部分なのです。この重要な役目を持つマウスピースは、リム、カップ、スロート、バックボアの内径バランスと、重量、材質、その他の物性との協調で成り立っています。さらに、このマウスピースの総合バランスがうまく奏者の状態と同調した場合に初めて、マウスピースはその能力を最大限に発揮することができるのです。

マウスピースの音響特性

次に、実際のマウスピースを使って音響的な違いについて、ふれてみましょう。グラフは、トランペットのマウスピース、14A4aと15E4の振動特性簡略図です。各点は自然倍音のピークを表し、縦方向が楽器の鳴りやすさ、横方向が振動数(音の高さ)を示しています。

14A4aが高次倍音(グラフの右側)が高く、つまり、高域が鳴りやすく、15E4が中域が鳴りやすい特性を持っていることがわかるでしょう。実は、14A4aはジャズのビッグバンドでリード奏者がよく使っているマウスピース。スピードのある音で高音域を自由自在に吹きこなすのに適しています。一方、15E4はロータリートランペット用マウスピースで、シンフォニーオーケストラで落ち着いた響きを得るのに適しています。このように同じトランペットでも、要求される音の違いによってマウスピース自体の音響特性が異なっているのです。言いかえれば、適正なマウスピースを選ぶことこそ、自分のイメージの音を実際に実現するために、最も重要なことなのです。