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深見まどかの「C’est la vie~ 関西人のパリ音楽漂流記」

2015年ロンティボー国際音楽コンクール5位(1位なし)、2017年ブゾーニ国際ピアノコンクールファイナリストなど輝かしい成績を収め、世界的なピアニスト、マリア・ジョアン・ピリスからも賞賛を受ける深見まどかが、現在拠点を置くパリから日々の出来事や、演奏活動の様子などお届けいたします。

(毎月1日、15日頃更新。※更新日は、都合により前後する場合がございます。)
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pianist 深見まどか

pianist 深見まどか
« 卓越した技術と音色を併せ持つヴィルトゥオーゾ» « 壮絶なパワーと集中力 » « 傑出したドビュッシー弾き。不可能を感じさせない技巧と個性 » - 仏ウエストフランス紙、クラシカジャンダ紙などのコンサート評より

« まどかさんは常に真摯に音楽に取り組み、音楽に対して献身的な愛を傾けるピアニスト。膨大なレパートリー、完全な音楽性と安定した高度なテクニック。 » - マリア・ジョアン・ピリス

京都市生まれ。東京藝術大学音楽学部付属音楽高等学校、同大学音楽学部を経て渡仏。パリ国立高等音楽院修士課程において3つの科(ピアノ、古楽フォルテピアノ、室内楽)全てを審査員満場一致の首席で卒業。同音楽院学長の推薦を受け、最優秀学生として仏国立学術団体アカデミー・フランセーズ奨学金を受けた。パリ・エコールノルマル音楽院コンサーティストディプロマ取得。また、アブデル・ラーマン・エル=バシャの勧めによりベルギー・エリザベート王妃音楽大学のアーティスト・イン・レジデンスを3年間務めた。 フィガロジャポン紙のパリ特集では若手演奏家を代表して、ジョルジオ・アルマーニ氏やギャスパー・ノエ氏らと共に紹介された。モーストリークラシック、月刊ピアノでインタビューや特集記事が掲載されている。
フランスのCDレーベルPassavantMusicからドビュッシー12の練習曲/ラヴェル鏡のアルバム、リスト、ブゾーニなどの作品集アルバムをリリースし、iTunesやSpotifyで配信中。
シャンゼリゼ劇場、サルコルトー、サルガヴォー、カーザダムジカ、Flagey、Bozar大ホール、モハメド5世国立劇場などヨーロッパの主要ホールにソリストとして定期的に登場している他、インターラーケン・クラシックス、パリ・ショパンフェスティバルをはじめとする著名な音楽祭にてソロリサイタルを行い、オルセー美術館でのソロリサイタルの模様はラジオフランスにて放送され、Flageyホールでのソロリサイタルの模様はベルギー国営RTBFラジオにてヨーロッパ全土に放送された。
海外国際コンクールにおいて2010年ポルト市国際など数々の入賞を重ね、2015年ロンティボー国際音楽コンクール5位(1位なし)並びに最優秀ラヴェル作品演奏賞、2017年ブゾーニ国際ピアノコンクールファイナリスト、並びに最優秀現代曲演奏賞を受賞。第15回アメリカ・ヴァンクライバーン国際ピアノコンクールに選抜。
第16回ワルシャワ・ショパン国際ピアノコンクールディプロマ授与。国内では全日本学生音楽コンクールなどに入賞。2012年度青山音楽賞新人賞受賞。

ソリストとしてはこれまでに、ベルギー国立ワロニー管、パリ室内管、芸大フィル、フランス・パドルー管、ポルト国立管、モロッコフィル、イタリアバーリ市立管、西本智実指揮イルミナートフィルなどのオーケストラと共演。シャンゼリゼ劇場、カーザダムジカ、Bozarなどヨーロッパ各地で演奏。
昨年はポルトガルでマリア・ジョアン・ピリスらと共にソウザ大統領の前で演奏。東京ではヤマハミュージックジャパン主催「ドビュッシーピアノ作品全曲演奏チクルス」を成功させた。

これまでにピアノを椿久美子、戎洋子、林佳勲、田村安佐子、角野裕、東誠三、上田晴子、ジョルジュ・プルデルマシェ、マリアン・リビツキー、菅野潤、ミシェル・ベロフ、アブデル・ラーマン・エル=バシャ、マリア・ジョアン・ピリス 各氏に、フォルテピアノをパトリック・コーエン、室内楽をイタマール・ゴラン、ケネス・ワイス 各氏に師事。


※上記は2020年9月17日に掲載した情報です。

No.15猛暑ニモマケズ。コンサートたち

2019.08.09更新

 Bonjour !

 熱波が収まったものの、まだまだ夏真っ盛りのパリです。
 北アフリカ諸国から上がってきている熱波の影響で、6月末から記録的な酷暑となっていたフランスやヨーロッパ諸国。

 フランス気象庁が発表しているVigilance Météo France という警戒情報では、フランスの国の地図全体を地域ごとに分け、猛暑警戒レベル1から4まで色分けされて情報が発令されます。
 警戒レベル3のオレンジでもかなりヤバイのですが、今回は、ついに警戒レベル4の赤色を発令してしまう地域がありました。

気象庁のサイトより拝借。

 レベル4というと、山火事や停電レベルの、日本でいう避難勧告が出るような警報レベルの危なさです。
 レベル4が発令された地域は市のイベントの延期や、学校の閉鎖などが余儀なくされます。

 そしてちょうど、フランスの南の地方で45度を記録した日。
 政府からは外にむやみに出歩かないようにと警告がされる中、パリから3時間ほどTGV(新幹線)に揺られ、弾きに行ってきました。

ロワールの古城が並ぶ地方、アンジェからほど近い街のお城の中でのコンサート。
この地域も39度が記録された日。

この日はソロ。。。終始、スポーツ中かのような滝汗で写真NGな顔に。笑

 適応力はあるフランスの国ですが、とっさの出来事が起こると必ずと言って良いほどトラブル続出の国、フランス。
 そんな予期せぬトラブルも含めて笑い飛ばしてしまえるのがフランスの国もつ明るさだと思いますが、今回も早速、電車のトラブルに遭遇しました。

 線路の温度が上がりすぎて線路が歪み、電気系統がおかしいので列車キャンセルされます、と最初のアナウンス。
 やっと乗れた列車は、また途中で止まり、暑さで野うさぎが線路上で息絶えていて、その撤去作業に時間を要するために30分ほど遅れます、と途中で足止め。
 そういえばアスファルトが熱で溶けてバスが動かないとかいうニュースもあったような。

 しかしトラブルが起こった時に前向きな転換力で本領発揮するフランス人たち。
 私の乗ったtgvでは、まず、車内アナウンスで車掌さん達からの激励の言葉のアナウンス。笑。
 そのあと、水のペットボトルが配られ始め、洗面台の手洗い場にホースを付け、ミントのオイルを垂らしたミントシャワーを出してくれました。

 私も日本のギャツビーやシーブリーズなどの冷感グッズ、冷凍した水などをクーラーバックに入れて持ち歩き、荷物の半分以上は熱中症対策グッズというような重装備で出陣しましたのでなんとかフラフラにならずに済みました。

青空に映えるロワール川支流。こう暑いと飛び込みたい衝動が・・・・!

 さて、大分日付が戻るのですが、5月のコラム、おにぎりスケジュール編の続きとして、現代曲プロジェクトの話を書きたいと思います。

 パリ郊外、ヴェルサイユよりももう少し南に下がった街で、アレクサンドロス・マルケアスさんという作曲家にフォーカスしたイベントを1日やっていて、彼の作品を弾くコンサートに参加させていただきました。
 

会場となった音楽院。休憩時には森林浴できるほどの広さの森の中。

 マルケアスさんという作曲家、パリ国立高等音楽院の即興科の教授でもあり、編曲家、即興ピアニストとしても有名な方。

 この日は、マルケアスさん自身のコンテンポラリーの即興セッションのコーナーもあり、コンサートでは彼の作品だけを演奏するという構成。
 まさに現代音楽三昧の1日です。

終演後、マルケアスさんと一緒に。

 この曲、サキソフォニストの方と今年の年明けから、かれこれ数ヶ月取り組んできた作品なのですが、ピアノパートもサクソフォンパートも規格外の難しい曲でした。

 以前、マルケアスさんに聞いていただいてアドバイスを頂いたのですが、シューベルトの流麗な音の連なりをイメージして作ったモチーフがあると言われた時は頭の中が一瞬止まりました。
 どの辺りがシューベルトなのか、皆さんにこのコラムでお聞かせできないのが本当に残念です!日本でもし演奏する機会があれば、是非ここでお知らせさせてもらいます。笑

 いつも思うのですが、作曲家から直接コメントをいただけると、曲を弾いていてわからないところなど、音楽作りが一気に加速される感覚があり本当にありがたいです。
 他にも波を強弱で感じさせてほしいことなど貴重なコメントを貰えたお陰で、ただただ「難しくとっつきにくい曲」というイメージから解き放たれ、合わせや練習もますます充実したものになりました。

 楽譜も現代曲あるある、規格外の大きさです。1ページがA3っていう、クラムとかベリオの楽譜のようなアレです。
 コピーガードの関係か、A3よりちょっとだけ大きくしてある。
 持ち歩く時に画材持ち歩くみたいになって、気分だけ美大生になれるやつです。笑

 この作品はクセナキスさんへのオマージュ作品としても作られている作品なので、始めはひたすら連符計算との戦いでした。
即興的に作られた作品にもかかわらず、15連、13連、11連といった奇数の連なりのパートと偶数連符の連なりのパートが最終的に6連や2連となりハーモニーとして混じり合う瞬間など、計算し尽くされた楽譜に、解剖していくと本当に発見が多くて度肝を抜かれました。

 これを弾きこなしてしまうサキソフォニスト、本当に凄いと思います。 合わせ中、あまりにいろんな特殊奏法を楽々やってるので、口の中どうなってるんだろうと思う時がありました。笑

 マルケアスさんは演劇作品、エレクトロニクス(電子音楽)系の作品も沢山作曲されている方なので、前もって録画しておいた映像に合わせて演奏するという曲や、スピーカーとの音に合わせて演奏するソロ曲なんかもあり。 

 この日の斬新なコンサートは、聴いて、見て楽しい演奏会となりました。

その次の日には打楽器とのアンサンブル作品で、ラフマニノフとプロコフィエフの管弦楽曲をテーマに書かれたラフマノフィエフという突っ込みたくなるようなタイトルの作品を弾いておりました。(笑)

リハーサル中。

 ティンパニとピアノの部分などはピアノの音はほぼ隠れてしまいますが、ビブラフォンやシロフォンの音色とピアノとは意外に心地よくピアノの音色が絡み合い、小太鼓の部分はメロディーパートを全部ピアノで補うのでほぼコンチェルトのような結果に。笑

 他にもクセナキス、ブーレーズといった現代音楽の巨匠たちのアンサンブル作品にも挑戦さされたりして、必死に指が追いつかないスピードの跳躍進行や6:7のような連符とと格闘しながら頑張りました。

 弾き終わった後は若干目がまわって気分が悪くなってました。笑

 ゴミ箱風の缶を何個か叩きながら弾く作品や、掃除のブラシを使ってピアノの弦を撫でる部分の出てくる作品もあり、全てが衝撃でした。

 現代曲、聴いてみたくなりませんか?笑

 きっと新しい発見があるはずです。

 私にはまだまだ現代曲祭りが続きます。いよいよレコーディングが・・・!

 それでは皆さん、à bientôt !

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« 卓越した技術と音色を併せ持つヴィルトゥオーゾ» « 壮絶なパワーと集中力 » « 傑出したドビュッシー弾き。不可能を感じさせない技巧と個性 » - 仏ウエストフランス紙、クラシカジャンダ紙などのコンサート評より

« まどかさんは常に真摯に音楽に取り組み、音楽に対して献身的な愛を傾けるピアニスト。膨大なレパートリー、完全な音楽性と安定した高度なテクニック。 » - マリア・ジョアン・ピリス

京都市生まれ。東京藝術大学音楽学部付属音楽高等学校、同大学音楽学部を経て渡仏。パリ国立高等音楽院修士課程において3つの科(ピアノ、古楽フォルテピアノ、室内楽)全てを審査員満場一致の首席で卒業。同音楽院学長の推薦を受け、最優秀学生として仏国立学術団体アカデミー・フランセーズ奨学金を受けた。パリ・エコールノルマル音楽院コンサーティストディプロマ取得。また、アブデル・ラーマン・エル=バシャの勧めによりベルギー・エリザベート王妃音楽大学のアーティスト・イン・レジデンスを3年間務めた。 フィガロジャポン紙のパリ特集では若手演奏家を代表して、ジョルジオ・アルマーニ氏やギャスパー・ノエ氏らと共に紹介された。モーストリークラシック、月刊ピアノでインタビューや特集記事が掲載されている。
フランスのCDレーベルPassavantMusicからドビュッシー12の練習曲/ラヴェル鏡のアルバム、リスト、ブゾーニなどの作品集アルバムをリリースし、iTunesやSpotifyで配信中。
シャンゼリゼ劇場、サルコルトー、サルガヴォー、カーザダムジカ、Flagey、Bozar大ホール、モハメド5世国立劇場などヨーロッパの主要ホールにソリストとして定期的に登場している他、インターラーケン・クラシックス、パリ・ショパンフェスティバルをはじめとする著名な音楽祭にてソロリサイタルを行い、オルセー美術館でのソロリサイタルの模様はラジオフランスにて放送され、Flageyホールでのソロリサイタルの模様はベルギー国営RTBFラジオにてヨーロッパ全土に放送された。
海外国際コンクールにおいて2010年ポルト市国際など数々の入賞を重ね、2015年ロンティボー国際音楽コンクール5位(1位なし)並びに最優秀ラヴェル作品演奏賞、2017年ブゾーニ国際ピアノコンクールファイナリスト、並びに最優秀現代曲演奏賞を受賞。第15回アメリカ・ヴァンクライバーン国際ピアノコンクールに選抜。
第16回ワルシャワ・ショパン国際ピアノコンクールディプロマ授与。国内では全日本学生音楽コンクールなどに入賞。2012年度青山音楽賞新人賞受賞。

ソリストとしてはこれまでに、ベルギー国立ワロニー管、パリ室内管、芸大フィル、フランス・パドルー管、ポルト国立管、モロッコフィル、イタリアバーリ市立管、西本智実指揮イルミナートフィルなどのオーケストラと共演。シャンゼリゼ劇場、カーザダムジカ、Bozarなどヨーロッパ各地で演奏。
昨年はポルトガルでマリア・ジョアン・ピリスらと共にソウザ大統領の前で演奏。東京ではヤマハミュージックジャパン主催「ドビュッシーピアノ作品全曲演奏チクルス」を成功させた。

これまでにピアノを椿久美子、戎洋子、林佳勲、田村安佐子、角野裕、東誠三、上田晴子、ジョルジュ・プルデルマシェ、マリアン・リビツキー、菅野潤、ミシェル・ベロフ、アブデル・ラーマン・エル=バシャ、マリア・ジョアン・ピリス 各氏に、フォルテピアノをパトリック・コーエン、室内楽をイタマール・ゴラン、ケネス・ワイス 各氏に師事。
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※上記は2020年9月17日に掲載した情報です。