2015年ショパン国際コンクール本選レポート

「黄金の秋」と呼ばれるワルシャワのもっとも美しい季節、10月1日から23日まで3週間にわたって第17回ショパン国際ピアノコンクールが開催された。88年のコンクールの歴史に新たなページを刻んだ若き才能の競演をレポートしよう。

鮮烈な個性の競演となったファイナル

 10月3日に始まった1次予選(43名選出)、9日からの2次予選(20名選出)を経て、14日からの3次予選を通過したファイナリストは、チョ・ソンジン(韓国)、アリョーシャ・ユリニッチ(クロアチア)、小林愛実(日本)、ケイト・リウ(アメリカ)、エリック・ルー(アメリカ)、シモン・ネーリング(ポーランド)、ゲオルギス・オソキンス(ラトヴィア)、シャルル・リシャール=アムラン(カナダ)、ドミトリー・シシキン(ロシア)、イーケ・(トニー)・ヤン(カナダ)の10名。「今回のファイナリストは、それぞれ独自の世界を持っているピアニストで、新鮮な解釈やまったく違うピアニズムを興味深く聴きました」と審査員のディーナ・ヨッフェさんが語っていらしたが、個性際立つファイナリストたちの才気あふれる演奏を、連日フィルハーモニー・ホールを埋め尽くした聴衆は楽しんだ。
 優勝の栄冠に輝いたのは、優れた技巧と繊細な感性で、すべてのラウンドを通して圧倒的に完成度の高い演奏を繰り広げたチョ・ソンジン。第2位は、色彩豊かな美しい音色を響かせ、温かく洗練された音楽を紡いだシャルル・リシャール=アムラン。第3位は、深く瞑想的な演奏で聴衆を魅了したケイト・リウ。第4位は、透明感のある音色で静謐な世界を描き出した17歳のエリック・ルー。第5位は、のびやかな感性を発揮して生き生きとした演奏を聴かせた16歳のイーケ・(トニー)・ヤン。第6位は、ブリリアントな音色と緻密な構成力で作品の魅力を鮮やかに引き出したドミトリー・シシキン。ポロネーズ賞はチョ・ソンジン、マズルカ賞はケイト・リウ、ソナタ賞はシャルル・リシャール=アムラン、聴衆賞はシモン・ネーリング、コンチェルト賞は該当者なしという結果となった。

カナダ勢によるツーショット。
第5位に入賞したイーケ・(トニー)・ヤンとシャルル・リシャール=アムラン(右)

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ライター Profile

森岡 葉

森岡 葉(もりおか よう)
慶応義塾大学法学部政治学科卒業。音楽ジャーナリスト。著書に『望郷のマズルカ―激動の中国現代史を生きたピアニスト フー・ツォン』(ショパン)、『知っているようで知らないエレクトーンおもしろ雑学事典』(共著、ヤマハミュージックメディア)、訳書に『ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストとの対話』(焦元溥著、アルファベータブックス)、『音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第2集』(焦元溥著、アルファベータブックス)

書籍

望郷のマズルカ―激動の中国現代史を生きたピアニストフー・ツォン
望郷のマズルカ―激動の中国現代史を生きたピアニストフー・ツォン
ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話
ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話
ピアニストが語る! 音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第二巻
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