2005年、第15回ショパン国際ピアノコンクールで第4位に輝いた山本貴志さんに、改めて当時を振り返っていただいた。
ショパン国際ピアノコンクールに出場しようと思ったきっかけは?
コンクールに対してのイメージは?
やはりこのコンクールの特徴はショパンの作品のみを演奏する、というところにあると思うのですが、「どうしてもこの曲を弾きたい」「最後の曲の前に入れるノクターンはこれが良いかな」などとプログラムを組み立てる過程だけで楽しかったことを思い出します。他のコンクールの場合、どうしても練習曲は?古典派は?などと「コンクール」を意識しなければならないことが多いのですが、大好きなショパンばかり演奏できるという喜びの方が大きかったように思います。出場しようと思ったきっかけも「ショパン」だから、という単純明快なものでした。
コンクール期間中の心境は?また思い出に残るエピソードは?
今振り返ってみますと、実はどのような心境で過ごしていたのかほとんど記憶にないのです・・・。ワルシャワで勉強していたので自宅から会場まで徒歩で通いましたが、その時間5分ほど。この近さもあってあまり特別に感じなかったのかもしれません。酷い時は自宅を控室代わりにして衣装に着替え、コートで隠して向かったことも(笑)会場の程よい大きさ、温かい聴衆の方々のお蔭もあり、アットホームなコンクールだなという感想を持ちました。
山本さんが選ばれたヤマハCFIIISの印象は?
まず触った瞬間にとても弾きやすい、と思いました。弾きやすいと言いますと簡単なのですが、かけた重さ通りに音が出るという楽器は本当に少なくて・・・そういった意味で弾いているうちにいろいろ楽器から教えていただいているような、そんな素敵な楽器でした。ピアノを弾く人にとってピアノはパートナーどころか必要不可欠な大切な存在ですから、そんな出会いができて本当に嬉しく思いました。
コンクールでの入賞が決まった瞬間の気持ちは?また、入賞後の変化は?
実は本選の後少し体調を崩して自宅に居りまして、友人がメールで結果を知らせてくれました。私はポーランドに住んでいた所為か、世界的な大きな舞台という意識があまりなく、温かい友人や知人に囲まれていることが嬉しかったのですが、輪をかけて幸せだったのがワルシャワ音楽院のクラスメートがみんなでお祝いしてくれたことです。同学年には外国人は私一人で授業の度に皆声をかけて気遣ってくれたのですが、この時もまるで地元のポーランド人が入賞したときのように喜んでくれて・・・それまでもポーランド人の分け隔てない気質が大好きでしたが、更に繋がりが深くなりました。
最後に、今年10月にコンクール本番に臨まれる出場者の皆さんへエールを!
ワルシャワはヨーロッパの首都の中でも規模が程よく、本当に落ち着ける街です。そしてフィルハーモニーホールの舞台、立ってみて分かったのですが客席とそれほど高低差がなく、一体感を感じられる素敵なところです。加えてポーランドは親日国家とあって、ショパンを大切にしてくれる日本人が大好きなようです。私も今住んでおりますが、ぜひこの素晴らしい場所でショパンの音楽とともに素敵な時間をお過ごしください!
