スペシャルコンテンツ 2015年ショパン国際ピアノコンクール 予備予選レポート

第17回ショパン国際ピアノコンクールのコンテスタントを選抜する予備予選が、4月13日から24日までの12日間にわたってワルシャワで開催された。5年に1度のステージを目指して熱演を繰り広げた若者たちの姿をレポートしよう。

個性豊かな挑戦者たちの競演~ヤマハCFXもコンテスタントたちの夢を力強くサポート

 予備予選に参加した152名のリストを見ると、主要な国際コンクールに入賞歴のある実力者がずらりと顔を揃えている。2009年第7回浜松国際ピアノコンクール優勝、2011年チャイコフスキー国際コンクール第3位、2014年ルービンシュタイン国際ピアノコンクール第3位のチョ・ソンジン、2009年第7回浜松国際ピアノコンクール第6位のアン・スジョン、2014年第3回高松国際ピアノコンクール優勝のムン・ジヨンなど、日本でもおなじみの韓国の俊英たち。2012年スクリャービン国際ピアノコンクール優勝、2013年クリーブランド国際ピアノコンクール第2位、2014年グリーグ国際ピアノコンクール第2位のアルセニー・タラセヴィチ=ニコラーエフ(ロシア)は、バッハの名演奏で知られるタチアナ・ニコラーエワの孫息子という意味でも興味深い存在。そのほかロシアからは、2013年ブゾーニ国際ピアノコンクール第3位のドミトリー・シシキン、数々の国際コンクールで入賞を果たしているガリーナ・チスティアコヴァ、イリーナ・チスティアコヴァ姉妹など。2013年クララ・ハスキル国際ピアノコンクール優勝のチャン・チョン、2006年第1回高松国際ピアノコンクール第3位のワン・チャオなど、中国からの参加者も精鋭揃いだ。
 日本の25名も、いずれ劣らぬ実力と個性の持ち主ばかり。9歳でデビューし、14歳でCDをリリースして国際的な演奏活動を続けている小林愛実、2003年第5回浜松国際ピアノコンクール第4位、2006年第7回ダブリン国際ピアノコンクール第5位の須藤梨菜など、年少の頃から優れた才能を発揮しているピアニストたちが多く参加した。
 今回から年齢制限の枠が16歳(1999年生まれ)から30歳(1985年生まれ)に広がったため、誕生日を迎える前の15歳のフレッシュな参加者から経験豊かな30歳の参加者まで、バラエティ豊かな演奏を聴くことができた。パリで学んでいる丸山凪乃は1999年9月生まれの15歳だが、安定したテクニックで生き生きとした演奏を聴かせてくれた。参加者たちの演奏は、YouTubeのサイトから視聴できるので、ご興味のある方はご覧いただきたい。

 予備予選の結果は4月13日に発表され、10月の本大会に出場する84名が出揃った。
 前回は17名と国別最多だった日本は12名。今回の国別最多はポーランド15名、中国15名、次いで日本、そして韓国9名。
 優勝候補の呼び声が高い韓国のチョ・ソンジンは、繊細なタッチでヤマハCFXの色彩豊かな音色を操り、抒情あふれる演奏を聴かせてくれた。2012年第8回浜松国際ピアノコンクール奨励賞のアシュレイ・フリップ(イギリス)、セミファイナリストのロマン・マルティノフ(ロシア)も楽しみな存在だ。前回も出場した須藤梨菜、野上真梨子は、5年間の研鑽の成果を発揮し、自身のショパンへの想いを存分に聴かせてくれることだろう。民族の伝統を感じさせながら新鮮なショパンの世界を描き出したポーランド勢、ウーカシュ・ミコワイチク、ティモテウシュ・ビエス、ミハウ・シマノフスキなども、予備予選免除の3名とともに本大会での活躍が期待される。そのほか、独自のアプローチで魅力的な演奏を聴かせてくれた欧米の参加者たち、ジョージ・リー(アメリカ)、シャルル・リカルド=アムラン(カナダ)、ゲオルギス・オソキンス(ラトヴィア)、アレクシア・モーザ(ギリシャ)、オルフ・ハンセン(フランス)、マレク・コジャク(チェコ)、ルイジ・カロッツィア(イタリア)など、興味は尽きない。
 今回の公式ピアノはスタインウェイD-274とヤマハCFX。参加者はそれぞれ15分間の試弾でいずれかのピアノを選んで演奏した。多くの参加者が出演の2、3日前に到着して、割り当てられた練習場所で調整し、慌ただしくピアノを選ぶことになったが、ヤマハCFXを選んだ参加者は65名(43%)。10月の本大会への切符を手にしたのは36名(47%)で、「タッチが繊細で弾きやすく、思い通りの表現ができた」「弱音でも豊かに響き、パワーもあるので安心して弾くことができた」などの声が聞かれた。
 第17回ショパン国際ピアノコンクールは10月2日から始まる。これまでの日本人最高位は第2位(内田光子)だが、日本人コンテスタントの中から優勝、入賞者が出ることを期待したい。

 10月出場者一覧

ライター Profile

森岡 葉

森岡 葉(もりおか よう)
慶応義塾大学法学部政治学科卒業。音楽ジャーナリスト。著書に『望郷のマズルカ―激動の中国現代史を生きたピアニスト フー・ツォン』(ショパン)、『知っているようで知らないエレクトーンおもしろ雑学事典』(共著、ヤマハミュージックメディア)、訳書に『ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストとの対話』(焦元溥著、アルファベータブックス)、『音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第2集』(焦元溥著、アルファベータブックス)

書籍

望郷のマズルカ―激動の中国現代史を生きたピアニストフー・ツォン
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ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話
ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話
ピアニストが語る! 音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第二巻
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