発振回路(発振器)=オシレーター

発振回路(発振器)=オシレーター

前回は音の伝わり方と電子楽器の原理を説明し、音の元を電気的に作り出す発振回路という装置を紹介しました。発振回路を使うと一定の振動を繰り返す電気信号が得られるのですが、それと音の関係はどのようになっているのでしょうか?

ちょっと電子楽器のパネルを見てみましょう。

このreface CSというシンセサイザーの発振回路は「OSC」と書いてある部分にあるのですが、OSCとはオシレーター(英語で発振回路の意味)の略称です。音を出す前に上の図のようにVOLUME、CUTOFF、D、Sのスライダーを一番上に、OCTAVEのスライダーを0の位置にして、それ以外を全部一番下にした状態にしておきましょう。鍵盤を弾くと、この動画の始めにあるような音ができます。
※この設定は何度も出てきますので、以後「reface CSの基本形」と呼ぶことにします。

TYPEのスライダーでわかる音の変化

先程のOSC部分にあるTYPEのスライダーに注目してみてください。現在は赤いLEDが点灯していると思いますが、鍵盤を弾きながらTYPEスライダーを動かしてみます。すると切り替える度に音の雰囲気が変わっていきます。
これはオシレーターが繰り返し発信している振動の波形が異なるからで、波形の形が変わると音も変化します。ではもう一度TYPEを一番下に戻しましょう。

シンセサイザーの波形

このときのオシレーターの波形は丁度ノコギリの歯のようにギザギザとした形をしているため、refaceCSではマルチソーとノコギリ波やSAW(ソー)WAVE等とも呼ばれています。

※reface CSの取扱説明書にはマルチソーと書いてありますが、TEXTUREとMODのスライダーを一番下にしているときは、単純なノコギリ波が出力されるので、ここではノコギリ波=saw wave(ソーウエイブ)と呼ぶことにします。

こういった波形の形は、他にもあり、例えば数学の時間に出てきたサイン波(正弦波=sine wave)や、上下に箱形の波形を持つ矩形波(方形波=square wave)などがあります。

シンセサイザーの周波数

オシレーターは一定の振動を繰り返す・・・と説明したのですが、実はこの「一定の振動」というのがとても大切で、これが繰り返されると人は音の高さを感じるようになります。「パン」と手を叩いただけではその音がドなのかソなのかがわかりにくいのですが、ピアノで鍵盤を「ポーン」と弾くとドやソといった音高を感じることができます。これは「一定の振動」が繰り返し響いているからで、振動の速度によって感じる音の高さが変わります。

この「一定の振動」を線で表したものが、先程も登場したオシレーターの波形です。波が上に振れてから真ん中に戻り、さらに下に振れてから元の位置に戻るまでを「1回」としたときに、1秒の間に振動する回数を「周波数」と呼んでいます。

440Hzの音は?

この数が440回の場合、周波数の単位で440Hz(ヘルツ)と表します。音楽の時間に音叉(おんさ)というU字型の道具を見たことがある方も多いと思うのですが、音叉はこの440Hzの音を出す(空気を振動させる)道具で、この音がドレミでいうところのラの音になります。

周波数と音の高さ

音の高さはこの周波数の高さで変わり、周波数が高くなればなるほど(振動が早くなればなるほど)音は高くなります。

音の高さを変える

ここで鍵盤を一つだけ押さえながら、reface CSの一番左にある「PITCH BEND」というレバーをいじってみましょう。

レバーを上にすると音の高さが高くなり、レバーを下にすると低くなります。これはオシレーターの周波数を変えているからなのですが、これでメロディーを演奏しようと思うとちょっと大変ですよね。ある意味テルミンのような音になるのでこれはこれで面白いのですが・・・

ちなみにテルミンでは、オシレーターの周波数をアンテナと人間の距離で変化させていました。この変化を鍵盤に割り当てると、ピアノのように瞬時に正確な音程を出すことができて演奏が容易になるため、現在の多くのシンセサイザーでは鍵盤が搭載されています。もちろん鍵盤には音を出す、止めるといったスイッチ的な要素も含まれているのですが、鍵盤があることでより楽器に近づくことができたと言えるでしょう。