音量を変化させる装置=アンプ

音量を変化させる装置=アンプ

前回はオシレーター(=発振器)と音の関係や、周波数と音の高さについて説明しました。

オシレーターとその周波数の変化を鍵盤に割り当てることで音階を作ることができるようになったのですが、このままではブザーと同様でスイッチを押すと音が出て、離すと止まるだけで音楽的な抑揚をつけることが全くできません。生楽器は弱く弾けば小さな音が、強く弾けば大きな音がでますので、そういった機能を持たせる必要が出てくるのです。

VOLUMEのスライダーでわかる音の変化

そこで、重要となってくるのが音を大きくしたり小さくしたりすることができる装置=アンプの存在です。ざっくりとボリュームといえばなんとなく馴染みがあるかもしれません。
シンセサイザーreface CSの左側にあるスライダーにも「VOLUME」と書いてあるスライダーがあります。鍵盤を弾きながらこのスライダーを動かしてみましょう。

下に下げると音量が小さくなり、上に上げると音量が大きくなります。

たとえばピアノの音を想像してみて下さい。ピアノは鍵盤を押しっぱなしにしてもだんだんと音が小さくなっていき、最後には消えてしまいます。

前回登場した「reface CSの基本形」セッティングのままreface CSの鍵盤を押しても音の大きさは変わらず、鍵盤を離さない限り永遠と音が鳴り響きます。そこで、鍵盤を弾いた後VOLUMEのスライダーを徐々に下げてみると、だんだんと音が小さくなり、一番下まで下げると音が消えます。

このように鍵盤を弾く度に音量を変化させれば、ピアノのような音量変化をまねることができます。

他にもバイオリンのような擦弦楽器では、音の始まりが緩やかで、擦り続けている間はある程度音量が保たれています。このような場合はVOLUMEを一番下にした状態で鍵盤を弾き(このときは音が出ません)、徐々にVOLUMEを上げていくと似たような雰囲気を出せます。

オルガンの演奏者はペダルなどを使って音量をコントロールし、こういった音量変化を作り出すことで抑揚をつけていたのですが、シンセサイザーではこれを自動的に行う便利な機能が搭載されています。

EG=エンベロープ・ジェネレーター

reface CSの真ん中より右側にある EGという部分に注目して下さい。ここのグループには5つのスライダーがあり、左からFEGとAEGのバランス、A、D、S、Rと表示されています。

EGというのはEnvelope Generator(エンベロープ・ジェネレーター)の頭文字を取ったもので、電気的なカーブ(包絡線)を生み出す装置と覚えておいて下さい。簡単に言うと先程まで手で動かしていたVOLUMEの操作と同じ動きを電気で再現するための信号を作り出す装置・・・といったニュアンスです。

EG自体はVOLUMEの操作だけで無く、いろいろなシンセサイザーのパラメーターに活用することができるのですが、ここではアンプ(音の大きさ)に使うことだけを考えてみましょう。一番左のスライダーを一番下(AEGと書いてある方)にすると、EGの信号はアンプにしか行かなくなります。(AEGのAはAMP=アンプのAです)

では残りのA、D、S、Rはどのような機能なのでしょうか?

名称から説明すると

AはAttack Time=アタックタイムのA
DはDecay Time=ディケイタイムのD
SはSustain Level=サステインレベルのS
RはRelease Time=リリースタイムのR

となります。

Sだけはレベル=音量のことを指しており、それ以外はタイム=時間を表しています。これらが鍵盤を押さえてから離すまでの間に生み出される電気的なカーブ(包絡線)のパラメーターを表しており、図にするとこのようになります。

A(アタックタイム)

まずA(アタック)ですが、このスライダーを上げていくと、図のアタック区間の時間が長くなり、鍵盤を押してから音が大きくなるまでの時間が緩やかになります。ピアノのように鍵盤を押した瞬間が一番大きな音の場合は、アタックを速く(短い時間に・・・)することで再現でき、バイオリンのように緩やかな立ち上がりの音を作る場合にはアタックを遅めに設定します。一番上にするとかなり遅くなりますので、効果音で波の音や風の音を作るときに使うと効果的です。

アタックを上げたままにしておくと他の効果を感じるまでに時間がかかってしまうので、一度一番下に戻しておきましょう。

D(ディケイタイム)とS(サステインレベル)

次にD(ディケイ)なのですが、このスライダーはS(サステイン)と深い関係があり、サステインが一番上に設定されている状態では鍵盤を弾きながらディケイのスライダーを上下しても音に変化が現れません。ディケイはサステインの音量に達するまでの時間を示していますので、サステインが最大だと、音量が変わらないので音に変化が現れないのです。
ここで一度サステインを一番下にしてみましょう。ディケイを一番上にしたまま鍵盤を弾くと音が出るはずですが、30秒ぐらい鍵盤を押し続けていると最初の音量より少し小さくなっているのを感じられると思います。この状態ではディケイが最大の時間に設定されているので緩やかにサステインレベル(0に設定したので音が消えるまで)に向かっていきます。

では、ディケイを真ん中ぐらいに設定してもう一度鍵盤を押してみます。すると今度は比較的速くに減衰する音になっているのがわかると思います。上の動画で確かめてみましょう

このように減衰する速度をディケイで決められるので、木琴やカリンバのように音の短い楽器を再現するときは短めに、ピアノやビブラフォンのように減衰がゆっくりな楽器を再現するときは少し長めに設定します。

もちろんオルガンのように鍵盤を押している間は永遠と音が出続けるものや、金管楽器や木管楽器のように吹き続けている間は音が持続する楽器を再現する場合は、サステインのスライダーを上げて音が消えないように設定します。

R(リリースタイム)

さて、木琴やカリンバのように音が減衰していく楽器はサステインを一番下にしておくと再現できると説明しましたが、実際に鍵盤で演奏してみるとちょっと違和感があります。というのも鍵盤を押し込んでいるときは自然でも、次の音を弾くために離してしまうと急に音が切れてしまうので、実際の楽器のような余韻が残せません。そこで活躍するのが最後のR、すなわちリリースというスライダーです。リリースは英語の「離す」の意味同様、鍵盤を離してから音が消えて無くなるまでの時間を設定するパラメーターです。

効果を試すためにアタックを一番下に、ディケイとサステインを一番上にして、リリースを一番下にしてみて下さい。この状態では鍵盤を押すと音が出て離すと止まるというスイッチと同じ状態になります。今度はリリースのスライダーを半分ぐらいまで上げてから、鍵盤を弾いてみます。鍵盤を押し込んでいる状態ではさっきと何も変わらないのですが、鍵盤を離すと音が残ってだんだんと消えていくのがわかると思います。

鍵盤をドミソという具合に複数弾くと、余韻が和音で響いてとても幻想的な雰囲気になります。ビブラフォンの音に少し似ていますね。

このように鍵盤を離したときの音の消え方を調整すると、より様々な楽器のニュアンスを再現することができるようになるのです。たとえばピアノの音も鍵盤を離したときにほんの少しだけ余韻があるので、リリースのスライダーを一番下では無く、少しだけ上げるとニュアンスが近くなります。音の切れ際はリズムを刻む楽器の場合にとても重要な要素ですので、いろいろな楽器の音の切れ方に注目してみるとシンセサイザーの音作りに役立つと思います。