オシレーターのTYPE、TEXTURE、MODを深掘り
オシレーターのTYPE、TEXTURE、MODを深掘り
ここまででシンセサイザーで音が変化する仕組みが少し理解できたのではないでしょうか?
簡単にまとめると、オシレーターが出した音の音量と音色をそれぞれアンプとフィルターでコントロールし、さらにエンベロープとLFOで時間的な変化を加えるといった感じです。
今回は音を発生させるオシレーターについてもう少し深掘りしてみましょう。
シンセサイザーreface CSにはオシレーターのTYPEとして5種類のオシレーターが用意されています。さらにそれぞれのオシレーターTYPEに合わせて様々な変化を与えるTEXTUREとMODというスライダーがあり、これを動かすことで音を変化させることが可能です。
ノコギリ波のオシレーター
まず、「reface CSの基本形」の状態を作りましょう。
この状態で弾くとオシレーターはノコギリ波になっていて、動画の始めにあるような音が出ます。次にTEXTUREのスライダーを上げてみて下さい。一オクターブ下の音が少しずつ加わっていくのがわかると思います。
これはサブオシレーターといって、2個目のオシレーターがミックスされる機能で、その2個目のオシレーターが一つ目のオシレーターの1オクターブ下になるように設定されているのです。
シンセサイザーによっては、2個目のオシレーターをちょっとピッチの違う同じ音程に出来るものや5度下、5度上など自由に設定できるものもあるのですが、reface CSでは1オクターブ下に固定されています。
でも、この1オクターブ下の音が足されるだけで、とても太い音の印象に変わりますね。
では今度はMODのスライダーを動かしてみましょう。
スライダーを上げていくと、音が滲んだようになっていきます。これは同じノコギリ波をほんの少しピッチをずらした状態で何個も重ねていくことで得られる効果で、コードを弾くととても分厚いブラスセクションのような音が得られます。さらにTEXTUREのスライダーでオクターブ下を足すと、クラブ系の音楽で使われるようなシンセサウンドを作ることも可能です
このようにノコギリ波を何層にも重ねることができるため、TYPEの右側にあるアイコンはノコギリ波が重なったようなアイコンになっており、TYPEの名称としてもマルチソーという名前がつけられています。
矩形波のオシレーター
次に、TEXTUREとMODのスライダーを下に戻し、TYPEを矩形波(パルス)の位置にしてみましょう。
音を出してみると、昔のゲーム機で聞いたことあるようなサウンドが出ます。
このときの波形はこの図のように一周期が均等に上下に波打つ波形になっているのですが、ここでMODのスライダーを上げていくとそのバランスが変わっていきます。
スライダーを上げれば上げるほど、前半の四角の幅が細くなっていき、それに伴って音も細いイメージの音に変わっていきます。
図で見てわかるとおり、矩形波(パルス)の幅(ウィズス)が変わっていくので、シンセサイザーの用語ではこういったモジュレーションのことをパルスウィズスモジュレーションと呼んでいます。
この音の変化を繰り返して行うと、少し厚みのある独特のサウンドになるため、MODスライダーの動きをLFOにアサインして周期的に変化させて作成した音も良く使われています。
次にMODを一番下に戻した状態で、TEXTUREのスライダーを変化させてみましょう。ゆっくりと動かしていくと半音上、全音上、さらにその半音上・・・といった具合に音程の異なる音が聞こえてくるのが確認できます。一番上まで上げると一オクターブ上が鳴ります。これは2個目のオシレーターの音程を変化させるスライダーになっており、一つの鍵盤を押しただけで2音のハーモニー(2つ目のオシレーターの音は若干小さいですが・・・)を出すことができます。
あまり不協和音だと、効果音的なサウンドにしかならないのですが、5度上などに設定するとエスニッックな雰囲気のサウンドを作成したりすることができます。
オシレーターシンク
オシレーターのTYPEを真ん中のS字が横になったようなアイコンの所に合わせてみましょう。
これはオシレーターシンクというタイプなのですが、2つあるオシレーターのうち、二つ目のオシレーターの波形の周期を、一つ目のオシレーターの波形の周期で強制的にリセットしてしまうというものです。当然一つ目のオシレーターの周期というか周波数が繰り返し奏でられるので、音程としては一つ目のオシレーターの音になるのですが、二つ目のオシレーターの波形が振幅中でも強制的に0の位置に戻されてしまうため、結果として本来無かった波形が生み出されます。
さらにMODのスライダーを上げていくと2つ目のオシレーターの周波数を上げることができます。通常2つのオシレーターが違う周波数の場合、2つの音程が出てしまうので、1つ目のオシレーターの整数倍の周波数しかまともな音にはならないのですが、シンク機能を使って強制的に1つ目のオシレーターの周波数で折り返すので、どんな周波数の組み合わせでも1つの音程として感じられる音を作ることができます。さらに2つ目のオシレーターの周波数を高くすればするほど高域成分の含まれたキツい音が得られるという仕組みです。
オシレーターシンクの状態では、TEXTUREのスライダーもMODと同じように2つ目のオシレーターの周波数を上げるスライダーなのですが、こちらは全体の音色も変化するようになっており、MODスライダーを上げた時よりも若干マイルドな音が出せるようになっています。
二つの違いはこのサンプルで聞き比べてみて下さい。
リングモジュレーション
さらにオシレーターのTYPEをもう一段上に上げてみましょう。
この位置はリングモジュレーションというものなのですが、2つあるオシレーターの周波数をかけ合わせるというものです。
かけ合わせると言われても・・・・??となってしまいますが、あくまで数式上のことなので、あまり深く考えずなんとなく捉えてください。数学に興味のある人は和積の公式を参照してください。
実は、異なる二つの周波数をかけ算すると、二つの周波数を足し算した周波数と引き算した周波数が得られます。
例えば1,000Hzと100Hzをかけ算すると1,100Hzと900Hzになるということですね。
結果として元々のピッチ(周波数)とは違う音程が出力されるということになるのですが、元々の波形に1000Hzだけじゃなくて倍音として2,000Hzだったり4,000Hzが含まれていたり、もう一つのオシレーター側も200Hzや400Hzが含まれていたりすると、それらの倍音成分も様々な周波数になって出力されていきます。また、掛け合わせる側の周波数をもっと高い周波数にすれば、元のピッチとはかけ離れた高域成分を出すことも可能になります。
このようにして音を変化させるのがリングモジュレーションで、reface CSの場合はTEXTUREで1つ目のオシレーターの周波数を、MODで掛け合わせる側のオシレーターの周波数を変更できます。実際の音の変化は動画で聞いてみてください。
かなり過激な音がしますね。ただし、TEXTUREとMODの位置によっては、弾いている鍵盤とは全く違う音程が出てしまうので、音楽の中でアンサンブルに使う場合には注意が必要です。SEなどエフェクト的に使用するに場合には効果的かもしれません。
フリケンシーモジュレーション(FM)
最後に5番目のオシレーターについて解説しましょう。
このオシレーターはフリケンシーモジュレーション(FM)というもので、一つ目のオシレーターの周波数を二つ目のオシレーターで変調させて音を作ります。リングモジュレーションと少し似ていますが、こちらは一つ目のオシレーターの周波数をベースにどのくらい変調をかけるかで音が変わるため、ある程度音程を保った音作りが可能です。
実際にどのような音になるかを試してみましょう。
「reface CSの基本形」にした状態からOSCのTYPEだけ一番上にしてみましょう。
この状態ではほとんどサイン波(倍音成分のないシンプルな波形)の音がでます。これはフリケンシーモジュレーション時のオシレーターの波形がサイン波であるためで、変調をほとんどしていないので、一つ目のオシレーターのサイン波の素の音が出ている状態です。以前紹介したこの動画で実際の音を確認できます。
ここからTEXTUREのスライダーを1/4ぐらいまで上げてみましょう。
少し音が明るくなり、ノコギリ波と矩形波の中間のような音になると思います。
さらに1/2ぐらいまで上げると、クラビネットのような音に変わると思います。
TEXTUREは変調の深さをコントロールしているのですが、この状態では変調する側のオシレーターのピッチが変調される側(一つ目のオシレーター)とほぼ同じ周波数なので、倍音の出方がなだらかですが、そのままMODのスライダーを上げていくと、変調する側のオシレーターの周波数を上げることができるので、過激な倍音が出ます。
ノイズとフィルターで風の音
ここで既に気づかれた方もいると思いますが、MODのスライダーを上げていくと「ザー」というノイズのような音がだんだん大きくなっていくと思います。これはMODのスライダーが2つ目のオシレーターの周波数を上げると同時に、ホワイトノイズ成分を加える役割を兼ねているからで、TEXTUREのスライダーを一番下にしていれば、MODは単にノイズのボリュームスライダーとして機能させることができます。
実はノイズというのもシンセサイザーにおけるオシレーターの波形として音作りには欠かせないもので、MODを一番上にした状態で、OCTAVEのスライダーを一番下にし、一番低い鍵盤を弾くと、一つ目のオシレーターの音は低すぎてほとんど聞こえないため、ほぼノイズのみで使用することも可能です。
この状態でFILTERのカットオフを上下させると、風の音とか嵐の音のような効果音を作ることもできます。