音色を変化させる装置=フィルター
音色を変化させる装置=フィルター
前回までの説明で音の高さと音量変化という2つの要素をコントロールすることができるようになったのですが、音にはもう一つ重要な要素があります。それは音色(おんしょく)というもので、同じ漢字を書いて「ねいろ」とも読みます。一般的には「ピアノの音」とか「ギターの音」ということになるのですが、もう少しざっくり言うと「明るい音」「きらびやかな音」「暗い音」「あたたかい音」といった表現で表される部分を指しています。
Filter(フィルター)とは
大きく口を開けて「あー」と声を出した状態で、口を手で塞ぐと「う~わぁ~」といった具合に音がこもって変化します。ちょうどトランペットのラッパの部分を手で塞いだ時と同じような効果です。このように手で塞ぐことで出てくる音を変化させることができるのですが、これがフィルター効果の一つです。フィルターとは音色を変化させる装置のことで、口を手で塞いだ時のように高音域成分をおさえるフィルターをはじめ、逆に低音域成分をおさえて音をカリカリにするフィルターや、中域だけを出してそれ以外を出さなくするフィルターなど様々です。ちなみにカーステレオや音楽プレイヤーについているイコライザーもフィルターの一種です。
シンセサイザーreface CSには高域成分(周波数の高い部分)をおさえるフィルターが搭載されており、FILTERと書いてある部分のCUTOFFとRESONANCEの二つのスライダーがコントロールする部分です。ちょっと専門用語になりますが、高域成分を抑える=低域成分はそのまま通過するけど、高域は通さない・・・ということになるので、低域=ローを通過=パスするフィルターということでローパスフィルター(LPF)と呼ばれています。
CUTOFF(カットオフ)
実際に音を出して確認してみましょう。まずは上の図のように「reface CSの基本形」にします。
ドの鍵盤を押さえながらCUTOFFのツマミを少しずつ下に下げてみましょう。
最初は「パーっ」といった感じの明るい音が出ていると思いますが、スライダーを下げるに従って「ポーっ」という柔らかい音に変わっていくのがわかります。
一番下まで下げてしまうとほとんど音が出なくなります。CUTOFFはカットオフと読むのですが、このスライダーを使うとカットオフで設定した周波数より上の周波数を抑えることができます。一番上では全く抑えていない状態=カットオフ周波数が最大の状態なので、オシレーターの音が全部出るようになるのですが、カットオフを下げていくとオシレーターの音の高域成分がだんだん削られていくことになり、音が丸くなっていきます。さらに下げていくと、オシレーターの中心周波数も出なくなってしまうので、結果的に音量が下がったようになり、しまいには音が出なくなってしまいます(全周波数をカットするため)。 上の動画のように音を出しながらCUTOFFのスライダーを連続的に動かしてみると、口を手で押さえたり離したりしているときのように「ウー、ワー」という音の変化を聴き取ることができます。
RESONANCE(レゾナンス)
次にその隣にあるRESONANCEのスライダーですが、これはCUTOFFの周波数付近を強調する度合いを設定するスライダーで、レゾナンスと読みます。
この図のようにカットオフ周波数近辺にコブを作るようなイメージです。
このスライダーを真ん中より少し上ぐらいまで上げて鍵盤を弾きながらカットオフのスライダーを動かしてみましょう。先程は「パーっ」と「ポーっ」という変化だったのですが、今度は「ミュァー」と「ミョォー」といったイメージでちょっとサイバーな音になるのがわかります。
さらにレゾナンスを最大まであげて同じ操作をすると、押している鍵盤の音とは違うピッチの音まで聞こえるようになると思います。これはカットオフ周波数が極端に強調されているため、オシレーターの中心周波数と同じようにピッチとして認識されるからです。 現在ではあまり聞くことが無いのですが、ラジオの選局の際にツマミを回すと「ピー」という音のピッチが上下しながらぴったり合うと放送が聞こえてくる・・・といったシーンを映画などで見たこと(聞いたこと)があるのではないでしょうか? あの音もまさにフィルターとレゾナンスで作られた音と言えます。