Better Sound for Commercial Installations
Part 1: Sound Basics
01. 音の仕組み
音響システムについて見ていく前に、そもそも「音」とは何かということを、音響の世界にあまり詳しくない方のために簡単にご紹介します。「音の仕組み」を押さえておけば、このコンテンツを読み進めていく中で皆さんの理解が深まると思います。
音は空気の振動で発生する
太鼓を例にとって音が伝わる様子をご紹介しましょう。演奏者が太鼓を叩くと、太鼓に張られた皮が振動し、周囲の空気を押したり引いたりして、その密度に疎密を作り出します。
その疎密が空気中を波のように伝わるのですが、これを「音波」と呼びます。この音波が耳の鼓膜を振動させ、それを耳の神経が音の信号として脳に伝えます。これが、私たちが音を認識するまでのプロセスです。
以上を単純な概念図に表してみました。
続いて、この概念図からグラフ部分を取り出してみます。波形が上下に一回往復する間隔を「周期」、空気の振動の大きさを「振幅」と呼びます。
私たちは常に音に囲まれて暮らしていますが、音とひと口に言っても、「高い音/低い音」、「大きな音/小さな音」などの特徴があります。これらの音の特徴は、周期と振幅の組み合わせで決まります。
音程は振動の回数で決まる
まずは音の「高い/低い」、音程の話です。音程は一定時間に振動が何回あるかで決まります。一定時間に振動が多ければ音は高くなり、振動が少なければ音は低くなります。
例えばドラムセットの場合、高い音を受け持つスネアドラムよりも低い音を受け持つバスドラムの方がサイズは大きいですね。この理由は振動の回数で説明できます。言うまでもありませんが、大きな物ほど動かすためには大きな力が必要です。したがって一定の力で叩いた場合、スネアドラムよりもバスドラムの皮の方が振動しにくく、その周期はゆっくりになるため、低い音が出るわけです。
1秒間に周期が何回あるかを「周波数」と呼び、Hz(ヘルツ)という単位で表します。1秒間に1周期ならば1Hz、100周期ならば100Hz、1,000周期ならば1,000Hz(=1kHz)、10,000周期ならば10kHzとなります。個人差はありますが、人間の耳で音として聞くことができる周波数の範囲は、20Hz~20,000Hz(20kHz)とされています。
便宜的な区分ですが、一般的に20Hz~600Hzの低い帯域を「低音域」と呼びます。楽器で言えば、ベースやバスドラムなどが受け持つパートです。その中でも20Hz~100Hz付近の低い帯域を「重低音」と呼びます。800Hz~2kHzの帯域は「中音域」と呼びます。日常生活において人間が最も認識しやすい帯域です。そして4kHz~20kHzを「高音域」と呼びます。小鳥の鳴き声や、トライアングルのような金属音などをイメージしてください。
間の耳は、高音域になるほど音が鳴っている方向を感じ取りやすく、低音域になるほど音が鳴っている方向を感じ取りにくくなります。クラクションのような注意を喚起するためのサイン音が高い音なのも、そういった理由からなのですね。
音の大きさは振幅の大きさで決まる
次は音の「大きい/小さい」、音量の話です。音量は振幅の大きさで決まります。振幅が大きいほど、音が大きくなります。例えば太鼓でも、強く叩けば叩くほど皮の振動も大きくなり、結果大きな音が出ます。こちらは比較的イメージがしやすいと思います。
ところで人間の感覚では、小さい音の時は少しの音量差でも敏感に認識できますが、音が大きくなるに従って音量差を感じにくくなります。つまり、物理的な振幅の大きさと人間が感じる音の大きさは正比例の関係ではないのです。そこで、人間の聴感特性に合わせた音量の単位として「音圧レベル」という指標が用いられます。単位はdB SPL(ディービー・エスピーエル)ですが、音圧レベルを指していることが明らかな時はSPLを省略して単にdB(デシベル)と表記されることもありますので、このコンテンツでもdBを使ってご説明を進めます。
人間が聞き取れる最小の音の大きさは0dB、人間が聞くに耐えられる最大の音の大きさは約120dBくらいと言われています(もちろん個人差があります)
ご参考に、身近なものの音圧レベルを示しておきましょう。
ちなみにここまでご紹介してきた「音程」と「音量」に、波形の違いによる「音色」を加えたものを「音の三大要素」と呼びます。色の3原色が「赤」、「青」、「黄」であるのと同様に、音もこれらの3つの要素が合わさって特徴づけられています。
いきなり理論的な話でしたが、「周波数(Hz)」と「音圧レベル(dB)」は、この後にもしばしば出てきます。しっかり理解した上で、次は音響システムを構成する各機器の役割について見ていきましょう。いよいよ、本題に入っていきます!