Better Sound for Commercial Installations
Part 3: Mixers and Processors
09. 外部機器との連携
デジタル音響システムを活用するのなら、外部機器との連携も視野に入れたいポイントです。音響システムの外部制御や、音響システムにあまり詳しくない方でも簡単に操作できるインターフェースのカスタマイズ、施設備品との連動など、その運用性を格段に向上させることができます。
外部制御の実現で運用性は格段に向上する
音響システムと外部機器の連携の目的として最も多いのが外部制御の実現です。外部制御の環境を整えておけば、ミキサーやデジタルプロセッサー本体はバックヤードに設置しておいて、現場では必要な機能だけを活用できるようになります。以下、音響システムと連携することが多い機器例をご紹介していきます。
GPI
GPIとはGeneral Purpose Interfaceの略です。音響や映像などの世界では、デジタル機器の外部制御をおこなうインターフェースとして活用されています。ヤマハのラインナップでもDMEシリーズ用のGPIコントロールパネル3品番を取り揃えています。
(図:ヤマハ コントロールパネル(GPI) 左からCP1SF、CP4SF、CP4SW)
外観はご覧のようなシンプルなパネルで、壁面に取り付けて使用します。CP1SFとCP4SFはミキサーと同様のフェーダーとスイッチが、CP4SWはスイッチのみが並んでいます。このように単機能に特化したシンプルなパネルですから、比較的安価に導入でき、また簡単に操作できるのがメリットです。
例えば飲食店やショッピングセンター、アミューズメント施設などでは、既存の設定を使って基本的な放送をおこなっていても、時には音量を微調整したり、音源を切り換えたりという作業が必要になる場合があります。そのような場合、現場のスタッフが業務をおこないながら対応しなくてはいけません。ところがミキサーなどの音響機器は、お客さんの目につかないバックヤードに設置されていることも多く、いちいちそこまで移動しているのでは業務の支障になってしまいます。そこで営業フロアにGPIコントロールパネルを設置しておけば、気が付いた時に簡単に操作ができるようになるわけです。調整内容も限定されていますから、誤って他の設定を変えてしまうようなトラブルも防げます。現場での音響システムの操作が限定的な商業施設では、非常に重宝する機器です。
ヤマハの設備用ラインナップでは、デジタルインストレーションミキサーIMX644やデジタルミキシングエンジンDMEシリーズがGPIで制御可能です。
特定機種専用のコントロールパネル
現場において音量の微調整や音源の切り換えにとどまらず、さまざまな操作が必要な場合はGPIでは対応しきれません。そのような場合、専用の外部制御用インターフェースが用意されている機種を選定するのも手です。例えばヤマハでは、デジタルミキシングエンジンDMEシリーズ専用のコントロールパネルICP1を用意しています。
ICP1はDMEシリーズのフロントパネルとほぼ同様の操作が可能で、大型のバックライト付きLCDにはメモリー機能のパターン名などを表示することができます。例えばパーテーションで部屋を分割して使用することがある大教室やバンケットルーム、会議室などでは、操作するパラメーターおよびそのパターンが多くなります。このようなGPIパネルでは対応しきれない作業も、ICP1であれば可能です。
図:ヤマハ インテリジェントコントロールパネルICP1
タッチパネルコントローラー/パソコン
タッチパネルコントローラーやパソコンを使えば、インターフェース自体を用途に応じて自由にカスタマイズできます。この場合、音響システムはもちろん、その他の施設備品も一緒に制御できるようになります。例えば映像ソースが多く用いられる会議室や講義室、バンケットルームなどでは、音響システムに加えて、映像システム、スクリーンの昇降、カーテンの開閉、照明効果など、複数の施設備品を同時に制御する必要があるかも知れません。
タッチパネルコントローラーやパソコンを使ったインターフェースを用いれば、これらの操作を、専任のオペレーターがいなくても現場のスタッフが簡単かつスムーズにおこなえるようになります。
タッチパネルコントローラーやパソコンによるインターフェースは、プログラミングが必要な分、先にご紹介した2つのコントロールパネルに比べて導入コストがかかりますが、その代わり適切に設計すれば、施設の使用形態に即した操作環境を得ることができるのです 。
タッチパネルコントローラーは、音響、映像、照明などを一括でコントロールできるなど、拡張性に優れた既にスタンダードとなっている製品もありますし、比較的安価に導入できるPLC (Programmable Logic Controller)と呼ばれる機器も使用できます。
タッチパネルコントローラーやパソコンは、「RS232C端子」や「RS422端子」および「Ethernet端子」を搭載している機器で使用できます。こちらもヤマハの設備用ラインナップでは、デジタルインストレーションミキサーIMX644やデジタルミキシングエンジンDMEシリーズが対応しています。
カメラ(旋回の制御)
デジタルミキシングエンジンDMEシリーズは、音声信号の入力を検知すると制御信号を出力するオーディオディテクター機能を搭載しています。
この機能を活用すると、例えば会議室において発言者がマイクロホンを使って話し始めると、その方向に自動的にカメラを旋回させるといった作業が自動化でき、テレビ会議システムを使った遠隔会議などに便利です。
もちろんカメラに限らず、照明など、さまざまな外部機器との連動が可能です。
外部プレーヤー(スケジュール制御)
デジタルミキシングエンジンDMEシリーズは、あらかじめ設定したスケジュールに従って任意の機能を実行できるイベントスケジューラー機能を搭載しています。
この機能を活用すると、例えばショッピングセンターや飲食店において、決められた時間に決められた外部プレーヤーの音源を自動的に放送できます。しかも曜日単位でスケジュールパターンを変えることも可能です。さらにDMEシリーズはWAVファイルプレーヤー機能も搭載しており、外部プレーヤーだけでなく、WAVファイルもスケジュールに従って放送できます。
このようにイベントスケジューラー機能を活用することで、定型アナウンスやチャイムの放送を現場スタッフの操作に頼ることなく、きめ細かにおこなうことができます。
図:イベントスケジューラー機能を活用すれば、定型アナウンスやチャイムの放送を自動化できます。
以上、音響システムと外部機器の連携についてご紹介してきました。一見、それぞれ独立した存在のように見える施設備品同士も、デジタル技術によって機能的に連動させることができます。ここでご紹介した例はもちろんですが、各施設の事情に合わせて検討すれば、他にもアイデアやニーズが生まれるかも知れませんね。
「商業空間のより良い音づくり」は、ここでいったん終了となります。このコンテンツが、少しでも皆様のお役に立てることを願っています。ご愛読、ありがとうございました。