QYシリーズ

スタイルシーケンサーという新しいジャンルを開拓

「SYシリーズ」のようにMIDIシーケンサー機能がシンセサイザーの中に取り込まれるようになると、それまで単体で発売されていたハードウエアシーケンサー「QXシリーズ」の需要が次第に薄れていきます。そんな中、新たな発想を持って登場したハードウエアシーケンサーがこの「QYシリーズ」です。

「SYシリーズ」はシンセサイザーにハードウエアシーケンサーを内蔵したものですが、この「QYシリーズ」はハードウエアシーケンサーに音源(シンセサイザー)を内蔵したと言ってもいいでしょう。さまざまな演奏をプログラミングできるだけでなく、本体だけで音を出すことが可能なのです。さらに、スタイルシーケンサーといってドラム、ベース、ピアノなどのベーシックな楽器でさまざまなジャンルのバッキングパターンが用意されており、それを自分で指定した任意のコードで演奏させることができるものです。

もともとヤマハにはポータブルキーボードという商品群があり、そこにオートベースコードという機能が搭載されていました。このオートベースコードとは、ドラムパターンとそれに合ったベースフレーズをキーボードの低音部分の鍵盤を特定のルールに基づいて弾くことでコントロールできるというものです。例えば、ドの鍵盤を押せばCメジャーになり、同時にドの全音下にあたるシのフラットを押すとCmになるなど(他にもさまざまなモードがありますが…)、コードに合わせてベースフレーズを変更しながら自動伴奏ができます。この機能を発展させ、ベースだけでなくピアノやギターなどのフレーズを加え、さらにコードのバリエーションもテンションコードまで対応させたのが「QYシリーズ」です。また、初代「QY10」からAWM音源によるリアルな楽器音を奏でられたこと、さらにVHSビデオテープサイズのコンパクトなボディに納められていたことなどで話題となり、爆発的な人気となりました。

年表の画像

「QY」の最大の魅力は内蔵パターンの豊富さと、それをアレンジに簡単に組み上げることができる手軽さです。コード進行をコードネームで入力し、ロック、ポップ、ジャズ、ダンスミュージックなどのさまざまなジャンルの中から任意のパターンを選択するだけで簡単に伴奏が作成できます。また、各パターンのクオリティが非常に高く、単なる練習用のバッキングパターンではなく、本格的な音楽制作に十分耐えうるサウンドが得られたことも人気の秘密です。さらに「QXシリーズ」のようなシーケンサー機能も搭載しているので、メロディーパートやその他の演奏パートも自由に作成することができ、本体についている鍵盤と同様の並びをしたボタンでもキーボードのように演奏や入力が可能です。「QYシリーズ」には「QY20」、「QY70」、「QY100」などのポケットサイズのパームトップ型と、「QY300」や「QY700」のようなデスクトップ型がありますが、特にパームトップ型は持ち運びにも便利なため、移動の多いミュージシャンや、ギタリストなどに重宝されています。

年表の画像

実はこのスタイルシーケンサーという考え方は、現在の「MOTIFシリーズ」のアルペジエイター機能にも引き継がれており、さまざまなジャンルのバッキングパターンを瞬時に奏でる事ができる本格的なアルペジエイターとして、ヤマハシンセサイザーの魅力を引き立てる大きな要素になっています。