1-1-1 Audinate社について

オーストラリアを本社拠点としてグローバル展開しているAudinate社は、通信ネットワーク分野(ネットワーク管理や規格)の仕組みと、オーディオパフォーマンスの最大化について造詣の深いネットワークエンジニアによって設立され、またそういったエンジニアを多く採用している会社です。いわば、ネットワーク技術に長けた“ネットワークエンジニア集団”といえる企業です。

同社が開発したDanteテクノロジーとDanteソフトウェア・ハードウェアモジュールは、プロオーディオ機器メーカー各社のDante機器開発のためにライセンス供給されています。

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1-1-2 ヤマハとDanteの歩み

ヤマハは2009年、ヤマハMini-YGDAIスロット規格に対応したAudinate社製Danteカード「Dante-MY16-AUD」発売を皮切りに、プロオーディオ業界でいち早くDante対応製品の取扱を開始しました。これを機にヤマハとAudinate社の10年以上にも渡る協業が始まります。そして2012年、ヤマハ初のDante標準搭載デジタルミキシングコンソール「CLシリーズ」を、続けて2014年に「QLシリーズ」を発売し、本格的なDante対応製品の市場投入に踏み切りました。「CL/QLシリーズ」がライブサウンドやホール・劇場設備のスタンダードなコンソールとして使用されることで、音響システムにおける音声伝送方式は次第にDanteに置き換わっていきました。現在ヤマハは50種類を超えるDante対応製品をリリースしています。さらに、ネットワークスイッチ等のデバイスも自社製造するなど、Danteシステムを構築するためのソリューションをトータルに提供しています。

また、ヤマハではDante対応製品の製造・販売だけでなく、技術セミナーや本ガイドをはじめとする技術資料の提供、アフターサポートなどを通してプロオーディオ業界におけるDante普及に深く貢献しています。

このように、新たなソリューションとして生まれたオーディオネットワークDanteは、ヤマハと共に歩み、多くのお客様に使用されることで主流と言われるほどに成長してきました。

Dante-MY16-AUD

1-1-3 Dante機器の仕組み

Dante機器はAudinate社とライセンス契約を結んだプロオーディオ機器メーカーが製造しています。ヤマハをはじめとするメーカー各社はAudinate社から供給される”Danteモジュール”を自社製品に組み込むことで、Danteに対応した機器として世の中に送り出しています。

1-1-4 Danteモジュール

Audinate社が提供するDanteモジュールは、使用規模に応じた様々な音声入出力数のモデルがラインナップされています。それにより、メーカー各社は用途やコストに見合った幅広い製品開発が可能となり、ユーザーにとっても用途に応じた機器選択肢が広がります。ヤマハCL/QLシリーズなどに組み込まれている代表的なモジュールは「Dante Brooklyn IIモジュール」と呼ばれ、最大64ch(48kHz時)の入出力が可能です。また、PoE給電によって動作する小型Dante機器の多くでは「Dante Ultimoモジュール」が使用されています。近年は映像信号もDante化する「Dante AVモジュール」が発表され、音声と映像を統合した新たなAV over IPソリューションの展開が進んでいます。

主なDanteモジュールラインナップ

  • Dante HC
    512 x 512ch @48kHz
  • Dante Brooklyn II
    64 x 64ch @48kHz
  • Dante Broadway
    16 x 16ch @48kHz~96kHz
  • Dante Ultimo
    4 x 4ch @48kHz
  • Dante PCIe-R Soundcard
    128 x 128ch @48~96kHz
  • Dante Adapter Module
    Analog/AES3 2 x 2ch @48~96kHz
    USB 2 x 2ch @48kHz
  • Dante IP Core™
    512 x 512ch @48kHz
  • Dante AV
    8ch Audio & Video

1-1-5 Danteライセンシー

2019年時点、Audinate社とライセンス契約を結んでいるプロオーディオ機器メーカーは450社を超え、毎年200種類以上のDante対応機器が各社からリリースされており、2,000種類を超えるDante対応機器が市場に流通しています。このように多くのメーカーがDante機器を世に生み出すことで、ユーザーはヤマハに限らず好みのメーカー・モデルを選択し、組み合わせることができます。この“メーカーの垣根を超えて”多くの機器選択肢がある自由度の高さは、Danteの特長のひとつです。

Danteライセンシー一覧(Audinateウェブサイト)

1-1-6 高い相互運用性と標準規格への対応

Danteは非常に優れた相互運用性を備えています。Dante機器同士であれば、異なるメーカー間の接続であっても特別な手順は必要とせず、なんのストレスもなく100%の接続性で組み合わせることができます。

また、近年普及が進んでいる標準規格「AES67*1」や「SMPTE ST 2110*2」にも対応し、ライブサウンド用途だけでなく、放送業界で広がるIPネットワーク移行の流れのなかにおいても、その相互運用性や利便性の高さと、今後の展開が注目されています。

このように、Danteはこれから初めてオーディオネットワークの導入をされる方にとっても、安心できる汎用性と将来性を備えています。

*1 AES67: 異なるAoIP規格間での相互運用を可能にするAoIP標準規格

*2 SMPTE ST 2110: 放送メディア(映像・音声)のIPネットワーク標準規格

1-1-7 Danteの各種ソフトウェア

Danteをはじめとするオーディオネットワークシステムの設計では、PC(Windows/Mac)からのソフトウェアコントロール環境が重要です。Audinate社は、ネットワークの専門技術に詳しくないユーザーであっても簡単にDanteシステムを構築できるよう、直感的でわかりやすくデザインされた各種ソフトウェアを提供しています。
「Dante Controller(フリーソフト)」を使えばDanteネットワークにおけるあらゆる設定を包括的に行えるため、多くのユーザーにとって必須のソフトウェアと言えるでしょう。
そのほか、PCとDanteネットワーク間で音声の入出力ができる「Dante Virtual Soundcard」「Dante Via」や、高度なネットワーク監視とセキュリティを実現する管理ソフト「Dante Domain Manager」を有償にて提供しています。これらのソフトウェアを用途に応じて活用することで、Danteネットワークをより扱いやすい環境に整えることができます。

  • Dante Controller
  • Dante Virtual Soundcard
  • Dante Via
  • Dante Domain Manager

1-1-8 Audinate自社製品

Audinate社はDanteに対応した自社のハードウェア製品の製造・販売も行っています。下図のDante対応アダプター「Dante AVIO Adaptor」*を使えば、Dante非対応のオーディオデバイスを簡単にDanteに接続できます。扱えるオーディオフォーマットはアナログ、AES/EBU、USBオーディオに限定されますが、例えば、お手持ちのアナログミキサーやパワードスピーカーをDante化することも可能です。

*「Dante AVIO Adaptor」を使用するには、PoE対応ネットワークスイッチによる電源供給が必要です。

1-1-9 Dante Certification Program

Danteはネットワーク技術の専門知識を備えていなくても十分に使いこなすことができますが、より高度なDanteネットワーク設計を行いたいというニーズに応えるAudinate社公認のトレーニングプログラム「Dante Certification Program」が用意されています。Audinate社はこのプログラムをグローバル展開することで、日本のみならず、世界中のDanteユーザーを手厚くサポートしています。今現在、Dante Certification ProgramはLevel 1からLevel 3までがユーザーに一般公開されており、Audinate社ウェブサイトでオンライン受講することができます。テストに合格することで、Dante Certification認定の証として、各レベルに応じた「Dante Certifiedロゴ」および修了証書がAudinate社より提供されます。
また、日本ではヤマハミュージックジャパンが多くのDanteセミナーを行い、またDante Certification Programに相当するトレーニングも実施しています。

1-1-10 Audinate Website

Audinate社の公式ウェブサイトです。Danteに関するソフトウェアのダウンロードや、さまざまな情報を入手することができます。また、Dante Certification Programのオンライン受講およびテスト、FAQの参照など、さまざまな情報リソースにアクセスすることができます。2021年時点で8カ国語に対応しており、一部のページでは日本語に対応しています。

https://www.audinate.com/