4-7-1 帯域幅とチャンネル数の関係
ネットワークの世界で扱うデータ量の単位は「bps」なので、チャンネル数という概念はネットワークに直接は通用しません。必ずbpsの単位に置き換える必要があります。下図に音声データをbpsに置き換えた計算式の一例を示します。
このようにシンプルな計算式で音声データ量を求めることができます。さて、Danteでは1Gbps帯域幅に対し512ch@48kHzの信号を通せると謳っていますが、音声データ量は上記計算によると約0.787Gbpsとなっており、まだ200Mbps以上の余裕があります。しかし、ここで求めたデータ量は“音声データ”のみであり、音声パケットのオーバーヘッド(アドレス情報などが格納されたヘッダー部など)は考慮されていません。オーバーヘッドによる帯域幅消費量はDanteレイテンシー設定値にも依存しますが、もし最短レイテンシーに設定した場合、帯域幅オーバーのギリギリのラインにあると考えた方がよいでしょう。
4-7-2 帯域幅を考慮するのはスイッチ間リンク
512chに上るような多くのチャンネル数が通るのは、基幹配線部を担うスイッチ間リンクです。もし512chを超えるような場合は、必要に応じてスイッチ間リンクの速度を1Gbpsから10Gbpsに拡張する必要があります。
Dante機器とスイッチ間の接続は、スイッチ側がギガビットのポートであれば問題ありません。
4-7-3 ユニキャストフローは帯域幅を多く消費することがある
Danteパッチの初期値であるユニキャストフローは、Danteシステムの規模が大きくなるにつれて効率が悪くなります。下図のような96kHzシステムにおいて、96マイクインを3台のミキサーに立ち上げるような場合、スイッチ間リンクには288ch@96kHzもの音声が通ることになり、1Gbpsの帯域幅をオーバーします。
1対1接続であるユニキャストは、1対1の数だけ別々にチャンネル数をカウントする必要があるため、このようにスイッチ間リンクに大量のチャンネルが通ることになります。この場合の対処としては、スイッチ間リンクを10Gbpsに拡張するか、ユニキャストをマルチキャストに変更しスイッチのIGMPで効率化を行います。
4-7-4 帯域幅とDanteレイテンシーの関係
Danteレイテンシー設定値が帯域幅にどのような影響を与えるのかについて、ひとつのユニキャストフロー送信時の帯域幅消費量をレイテンシー設定別に下表にまとめました。Danteレイテンシーを短縮するほど、ネットワークオーバーヘッドによる影響が大きくなり、帯域幅の消費量が増加していることがわかります。