このテーマでは、外部クロックソースを使用してDanteネットワークを“外部クロック同期”させる方法について解説します。外部クロック同期に至る流れは、下記の通りです。

  1. 何らかの理由で「外部クロックソース」をリーダーにしなければならない
  2. Danteネットワークを“フォロワー”にする(Enable Sync to External機能を使う)
  3. PTPリーダー移動が起きないようにする(Preferred Leader機能を使う)

外部クロック同期を行う場合、Dante機器に対して「Enable Sync to External」および「Preferred Leader」のふたつの機能を適切に設定しなければなりません。

4-4-1 外部クロック同期の方法

外部クロックジェネレーターのワードクロックを、Dante機器のWORD CLOCK INに入力し、その機器の「Enable Sync to External」だけを有効にします。「Enable Sync toExternal」が有効な機器が、そのDanteネットワーク内において優先的にPTPクロックリーダーに選出されます。それ以外のDante機器は、PTP同期によりフォロワー動作します。

* ヤマハCL/QLシリーズの場合、ワードクロックソースをDante以外にすると自動的にEnable Sync to Externalが有効になります。

ひとつでもEnable Sync to Externalが入っていれば、Danteネットワークはフォロワー動作していることになる。

デジタルミキサーやプロセッサーの本体内蔵クロックソースを選択する場合も、同様に「Enable Sync to External」を有効にします。しかし、Danteシステムにおいて本体内蔵クロックソースをリーダーにする理由はほとんどありません。それは非常にレアなケースとして考え、別のクロックソースを供給する、もしくは推奨設定のDanteクロックの使用を再検討することを強くおすすめします。

4-4-2 Enable Sync to External

「Enable Sync to External」は、Danteモジュールを外部クロックソースに同期させるために、Dante機器毎に設定する機能です。主にDante Controllerで設定します。ミキサーやプロセッサーのように、Danteにとっての外部クロックソースであるWORD CLOCK INや内蔵クロックを持つDante機器のみで選択できます。ヤマハRioシリーズのようにクロックソースがDanteのみで動作する機器には搭載されていません。

4-4-3 Enable Sync to Externalの正しい使い方

「Enable Sync to External」は複数のDante機器で選択できますが、その場合は注意が必要です。Danteネットワークの外にあるリーダークロックソースは、『リーダー・フォロワーの関係』に基づき”常にひとつ”でなくてはなりません。つまり、単一の外部リーダークロックソースから、完全に同期したワードクロック信号をそれぞれのDante機器に分配している条件下に限り、それぞれ複数のDante機器の「Enable Sync to External」を有効にできます。同期していない複数の外部ワードクロックを入力しても、正常な外部クロック同期を行うことはできません。

4-4-4 PTPクロックリーダーの移動で音が止まる

「Enable Sync to External」設定を適切に施せば、外部クロック同期下でもDanteシステムを安全に運用できます。しかし、外部クロック同期されたDanteシステムの運用には重大な注意点があります。それは、『PTPクロックリーダーが移動した場合に音が止まる』ことです。
Danteモジュール側をリーダークロックソースにしていれば、PTPクロックリーダーが移動しても音が止まらないというメリットがありましたが、外部クロック同期時はこの恩恵が得られません。外部クロック同期したDanteシステムは、クロック同期に対する耐性が従来のデジタル伝送システムと同レベルになってしまいます。外部クロック同期はそれらを理解した上で行う必要があります。
そのため、PTPクロックリーダーが移動しないような対策や運用方法を考える必要があります。その手段として、「Preferred Leader」が有効です。

4-4-5 Preferred Leaderを使う

「Preferred Leader」は、PTPクロックリーダーの自動選出において、その優先順位を高めるためにDante機器毎に設定する機能です。主にDante Controllerで設定します。PTPクロックリーダー選出は常に優先順位に従って自動で行われます。優先順位に影響を与える機能は「Enable Sync to External」と「Preferred Leader」ですが、「Preferred Leader」の方が高い権限を持っています。もし「Preferred Leader」が複数の機器に入っていた場合、「Enable Sync to External」も併せて有効な機器が優先されます。

Enable Sync to ExternalよりPreferred Leaderの方が選定基準が高いことが重要

4-4-6 Preferred Leaderを用いたPTPクロックリーダー固定

意図せずPTPクロックリーダー移動が発生するのは、PTPリーダー権限の強い機器を後から接続したり、設備などでホールAとホールBの電源入れ切りを行う運用などがきっかけとしてあります。PTPクロックリーダーが移動しないようにするには、ひとつの例としては、電源の入れ切りが発生しないシステムの中枢になるプロセッサーなどの機器のみ「Preferred Leader」を有効にしておくと良いでしょう。

マトリクスやプロセッサーなど、運用中に電源入れ切りが発生しない中枢に近い機器のPreferred Leaderを有効にしPTPクロックリーダーとして固定運用することが望ましい。 PTPクロックリーダー専用機を使う方法もある。

TIPS

RIVAGE PMシリーズのTWINLANeとの混在時はどうする?

ヤマハRIVAGE PMシリーズのTWINLANe対応機器とDante機器を同じシステムで使用する場合は、ひとつのTWINLANeを完全に同期したクロックリーダーソースとしてみなすことができます。そのため、TWINLANeネットワーク上のDante機器(HY144-D)のEnable Sync to Externalを有効にしてフォロワー動作させることができます。