Danteシステムで扱われる“制御ネットワーク”とは、Danteと同じネットワーク上を通っている、Dante機器のさまざまな機能をコントロールする信号通信のことです。
HAリモートがその代表的な制御通信です。制御ネットワークの概念を理解することで、Danteにおける同期・音声・制御の概念をより簡単に区別して考えることができ、ネットワーク上で起きるさまざまな挙動についての理解も進むでしょう。このテーマでは、Danteシステムにおける制御ネットワークについて解説します。

4-9-1 Danteネットワーク上で行われる制御とは

Danteシステムにおける制御ネットワークとは、同一のDante端子を経由して同期・音声と同じネットワーク上でやりとりされている制御通信のことです。つまり、ここで扱うのは他の制御ネットワーク通信の相乗りではありません。

そして、その同じDante端子を通じて行われる制御には“Danteモジュール間のDanteコントロール”と、“Dante機器メーカー固有のコントロール”があります。下図のように、CL5とRシリーズのDanteシステムにおいて、各機器のDante端子の向こう側では内蔵スイッチを経由して「Danteポート」と「ヤマハのDevice Controlポート」が独立してつながっていることがわかります。機器間を接続するケーブルはDante端子間のケーブル1本ですが、このひとつの接続で2種類のネットワークインターフェースの通信が行われているわけです。そして、各ネットワークインターフェースには個別のIPアドレスがアサインされます。

TIPS

Yamaha LAN Monitorで検出したDante機器のIPアドレスが2つ見えるのはなぜ?

ヤマハSWPシリーズスイッチを用いてYamaha LAN MonitorでDante機器を検出すると、2つのIPアドレスが表示されますが、それは上図のようなDanteポートとDevice ControlポートそれぞれのIPアドレスのことを示しています。

4-9-2 Dante機器の複数のIPアドレスと役割を把握する

前述のようにDante機器の多くは、Danteモジュールだけでなく、Dante機器メーカー固有の制御用インターフェース毎にIPアドレスを持っています。下図はヤマハCLシリーズとRシリーズを例に、各ネットワークインターフェースの役割を示したものです。このように役割毎にどのネットワークインターフェースを使用するのかは決まっています。

これらを分けて考えることで、Danteの同期や音声伝送は正常なのに、本体のコントロールに異常が見られた場合の対処に役立ちます。例えば、HAリモートが上手く動作しない、という場合はDante側ではなく機器本体側の設定を疑うという考え方になります。また、Rシリーズファームウェアアップデートが正常にできない際も、DanteファームウェアはDanteポート経由、本体ファームウェアはDevice Controlポート経由となるため、それぞれのIPアドレス設定の確認も有効です。

TIPS

Device Controlポート(SCP)経由の制御通信はSecondary端子では機能しない

CL/QLシリーズ⇔RioシリーズのHAリモートはDanteポート(Dante API)を用いて制御しているためSecondaryネットワークでも動作しますが、Device Controlポート経由の制御(例:CLシリーズ⇔RSio64-D、TFシリーズ⇔Tio1608-D)はSecondary端子経由では動作しません。同じI/Oデバイスコントロールでも使用されるポートの違いでこのような差異があります。また、Device Controlポート経由で行われているヤマハ独自の制御信号のことをSCPと呼びます。

4-9-3 I/Oデバイスマウントは最小限に留める

ヤマハCL/QLシリーズ等における「I/Oデバイスマウント」の目的は、マウントした機器のリモート操作を行うことです。しかし、マウントするデバイス数が多くなると本体の制御系の動作が遅くなるなどパフォーマンスに影響が出る可能性があります。そのため、リモート操作が不要な機器をマウントしないようにすれば、制御系の負荷を軽減することができます。マウントしない機器のDanteパッチはDante Controllerを用いて行えます。