近年のDanteシステムでは、より高分解能なサウンドが期待できる96kHz伝送の需要が高まっています。そのため、96kHzと48kHzのDante機器が混在し、それらを接続するケースが増えてきています。しかし、サンプリング周波数の異なる機器同士の接続は簡単なことではありません。このテーマでは、サンプリング周波数の異なるDante機器を接続するための方法について解説します。

4-10-1 サンプリング周波数の異なる機器間でできないことは音声パッチ

サンプリング周波数が異なるDante機器同士でできないこととは「音声パッチ」です。

Danteネットワークには、サンプリング周波数の異なるDante機器を接続することができるため、Danteパッチ画面上にはサンプリング周波数の異なるDante機器が全て表示されます。しかし、パッチを行おうとクリックしてもそのパッチは有効になりません。

音声パッチできていた機器同士でも途中でサンプリング周波数を変更すると、そのパッチは無効となります。

4-10-2 サンプリング周波数の異なる機器のネットワーク接続

Danteネットワークにはサンプリング周波数の異なる機器を接続できます。これは通常のデジタルオーディオ伝送の概念では考えられないことですが、ネットワーク上でやりとりされるPTPパケットや音声パケットにはサンプリング周波数の概念が無いため、何の問題もなく接続できてしまいます。サンプリング周波数の異なる機器同士のクロック同期も、単一のPTPクロックリーダーによって行われます。そのため、ネットワークスイッチをサンプリング周波数毎にわける必要はありません。

4-10-3 サンプリングレートコンバーターを用いた接続

サンプリング周波数の異なるDante機器同士を接続するには、サンプリング周波数を変換できる「サンプリングレートコンバーター(以下SRC)」が必要です。しかし、SRCは音声パケットの状態の音声データに対してかけることはできません。一度Danteネットワークの外、つまりDante機器本体側のPCM音声データに戻してからSRCをかける必要があります。

4-10-4 96kHzと48kHzのDante機器の音声のやりとり

例として、96kHz駆動するヤマハRIVAGE PM7と、48kHz駆動するCL5の音声をDanteでやりとりする方法をご紹介します。

RIVAGE PM7(HY144-Dカード)とCL5のDante音声信号は直接やりとりできないため、別のDanteインターフェース「RSio64-D」を経由させることで可能になります。

RSio64-Dの標準搭載Danteインターフェースを96kHz駆動でRIVAGE PM7とパッチします。次にRSio64-Dに装着したDante-MY16-AUDカードを48kHz駆動でCL5とパッチします。あとは、RSio64-D内蔵のSRCを使用して音声を通過させるだけです。つまりRSio64-DはDante(96kHz) to Dante(48kHz)変換器として機能します。

TIPS

Rシリーズのサンプリング周波数はDante Controllerで変更する

CL/QLシリーズは48kHz上限なのでRシリーズのサンプリング周波数を意識することはありませんでしたが、Rシリーズは96kHzに対応しています。そのため、RIVAGEPMシリーズとの96kHz伝送が可能です。RIVAGE PMコンソールからI/Oマウントして使用する場合は問題ありませんが、Rシリーズのサンプリング周波数を手動にて変更したい場合は、本体での変更は不可のため、Dante Controllerで設定してください。