主なDante機器は標準でリダンダント接続をサポートしており、簡単に2重化システムを実現できます。さらに、Danteリダンダンシーの動作原理を知っておくことで、より安心度の高いシステム運用が可能です。また、Danteはネットワークスイッチが持つスパニングツリーなどの汎用的な機能を最大限活用できるため、Dante標準リダンダンシーと組み合わせることで、より強固なネットワークを構築可能です。

Danteリダンダンシー応用編では、Danteリダンダンシーの動作の仕組みや、ネットワークスイッチを用いた高度なリダンダントネットワークの構築方法について触れていきます。

4-2-1 Danteリダンダンシーはネットワーク品質に対しては機能しない

具体的なDanteリダンダンシーの内容に触れる前に、Danteシステムの安定性向上という観点で重要なことがあります。それは「Danteリダンダンシーはスイッチやケーブルなどの物理的な接続経路の障害に対してのみ機能する」という点です。つまり、Danteネットワークの品質悪化に対しては効果を期待できないということです。もし仮にPrimaryネットワークの音声パケットロス発生やクロック同期が不安定になったとしても、Primaryネットワークは物理的には生きているため正常とみなされ、Secondaryネットワークにフェイルオーバーすることはありません。
Danteリダンダンシーは物理的トラブルに対するグリッチフリーリダンダンシーとしての実用性は確かなものですが、ネットワーク品質悪化に対しては無力ととらえ、リダンダンシーとは別のアプローチが必要になるわけです。

4-2-2 Danteリダンダンシーはフロー単位でフェイルオーバーする

Danteリダンダンシーの特長のひとつが「フロー単位でフェイルオーバーする」というものです。通常のフェイルオーバーはメインシステムの全機能がサブシステムに切り替わるような動作ですが、Danteでは下図のように音声フロー毎にメイン(Primary)とサブ(Secondary)が並行して同時に動作しています。そのため、どちらかのネットワーク経路さえ生きてさえいれば、Danteネットワーク上にある音声フローは、Primary/Secondaryどちらかのルートを辿って到達する仕組みです。

例えば、下図のようにCL5は、PrimaryとSecondaryそれぞれで動作するRioシリーズから同時に音声を受け取ることができます。

4-2-3 Danteリダンダンシー動作はネットワーク全体に影響しない

Danteリダンダンシーの「フロー単位でフェイルオーバーする」という特長により、下図のようにPrimaryネットワークのスイッチが1台故障しても、残りのPrimaryスイッチが1台でも生きていれば、そのスイッチを中心としたネットワークはPrimaryとして機能し続けます。もちろん、どこかのPrimary経路がケーブル断線した場合も、残りのPrimary経路は何事もないように機能し続けます。

つまり、Danteリダンダンシーのフェイルオーバー動作は、スイッチおよびケーブルが接続された最小単位の範囲のみの影響に留まります。ネットワークの末端にあるスイッチやケーブルのトラブルが、ネットワーク全体に大きな影響を及ぼさないため、大規模システムでもリダンダンシーを構築しやすいというわけです。

4-2-4 リングトポロジーによるリダンダンシーについて

リダンダンシー手段のひとつに「リングトポロジー」があります。リング状に接続することで、ひとつの経路が切れてもデイジーチェイントポロジーとして機能し続けるという特徴を持ちます。しかし、デイジーチェーンモードのDante Primary/Secondary端子間の数珠つなぎによるリングトポロジー形成は不可です。Danteでリングトポロジーを構築するには、ネットワークスイッチのスパニングツリープロトコルを用いる必要があります。
スパニングツリーについての詳細は「ネットワークスイッチ応用編」を参照ください。