STEP5 IPアドレス設定

物理接続の次に行うのは「IPアドレス」によるネットワーク接続設定です。ネットワーク通信を行うには、各機器に適切なIPアドレスが割り振られている必要があります。

3-1-19 IPアドレスとは?

「IPアドレス」とはネットワーク上で機器を識別するための番号です。世界中のコンピュータやデバイスが接続されるインターネットの世界では、IPアドレスによって機器を識別しパケットの通信を行っています。IPアドレスは必要に応じて任意の番号を割り振ることができます。それに対して、機器毎に一意に割り振られる識別番号に「MACアドレス」があり、物理アドレスとも呼ばれます。

各Dante機器に割り振られたIPアドレスと、パケットに格納された宛先IPアドレス・送り元IPアドレスの情報に基づいて通信(同期・音声・制御)が行われます。IPアドレスやMACアドレスの専門的な詳細についてはここでは触れませんが、DanteシステムではMACアドレスについて意識する必要はなく、IPアドレスのみ設定します。では、IPアドレスの設定方法について説明します。

3-1-20 IPアドレス設定方法

“IPアドレス設定”と聞くと、いよいよネットワークの専門的な領域に足を踏み入れるのかと不安に感じるかもしれませんが、Danteシステム構築でその心配は無用です。自動的にIPアドレスを割り振ってくれる便利な機能があり、Danteシステム構築ではそれの使用を推奨しています。そのため、専門的な知識は不要です。
Danteシステムでは、Dante機器、PC、また必要に応じてネットワークスイッチにもIPアドレスを割り振ります。Dante機器のIPアドレス設定手法は大きく分けると次項のように、自動で割り振りを行う「リンクローカルアドレス」と「DHCP」、手動の3種類があります。

3-1-21 リンクローカルアドレス

DanteのIPアドレス割り振りはこの「リンクローカルアドレス」の使用を推奨します。通常、IPアドレスの割り振りはネットワーク専門家以外には難易度が高いため、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバーから自動的にアドレス割り振りできる環境が望ましく、例えば家庭のインターネット環境もブロードバンドルーターが持つDHCPサーバー機能によって各PCやデバイスにIPアドレスが割り振られてインターネットにつながるのが一般的です。しかし、Dante環境には通常DHCPサーバーがありません。そのため、自動取得設定されたDante機器やPCにはDHCPとは別の手段でアドレスが割り振られます。そのIPアドレスのことを「リンクローカルアドレス」と呼びます。この名称を覚える必要はありませんが、IPアドレスが[169.254.~.~]で始まっていればこのアドレスが割り振られていることを示します。
実際に初期設定のDante機器をネットワーク接続し、Dante ControllerでDante機器のIPアドレスを見ると、重複しないリンクローカルアドレス[169.254.~.~]が割り振られます。基本的にIPアドレス設定は“これだけ”です。極端なことを言えば、初期設定のまま接続すれば、IPアドレスのことを忘れていたとしてもIPアドレス設定は勝手に完了するわけです。もちろんDHCPや手動での割り振りも可能ですが、特殊な事情や意図が無い限りリンクローカルアドレスの使用でなんら問題ありません。

3-1-22 PCの IPアドレス設定

Dante ControllerやDante Virtual Soundcardを接続する場合は、PCのIPアドレス設定も必要です。WindowsとMacで多少の設定方法に違いはありますが考え方は共通です。基本的にはローカルエリア接続の「TCP/IP v4」のIPアドレス項目を設定します。DanteシステムをリンクローカルアドレスまたはDHCPで構築する場合は自動取得にしてください。リンクローカルアドレスの場合は、[169.254.~.~]、DHCPの場合はDHCPサーバーで設定された範囲の重複しないIPアドレスが自動的に割り振られます。リンクローカルアドレスの場合、環境によってはIPアドレスの割り振り完了に時間がかかることがあります。外付けLANアダプターなどで複数のネットワークインターフェースを装備している場合、インターフェース毎にIPアドレスを割り振ってください。