STEP7 音声パッチ

さて、ようやくDanteネットワーク上での音声パッチです。オーディオネットワークのパケット方式では、アドレス情報を基に音声データのやり取りが行われるため、ケーブルを接続しただけでは勝手に音声信号が流れることはありません。ここまでの基本ステップを踏み、音声パッチを行うことではじめて音声信号のやりとりが始まります。Danteの音声パッチは、Dante Controllerもしくは、各メーカー機器本体固有の機能を用いて行うことができます。

3-1-25 Dante Controllerによる音声パッチ

Dante Controllerのルーティング画面に表示されるDante機器間を自由にパッチ可能です。同じメーカーのDante機器同士であれば自動パッチ機能などが使えますが、そういった機能に非対応な場合や、異なるメーカーの機器同士の場合はDante Controllerによるパッチが必須です。そのため、Dante Controllerが使える環境を整えておくことをおすすめします。

Dante Controllerの入手方法

Dante Controllerは Audinateウェブサイトから入手できます。Dante ControllerのダウンロードにはAudinateサイトへのアカウント登録が必要です。

3-1-26 機器本体による音声パッチ(CL+Rシリーズの場合)

Rシリーズに付与したUNIT IDに応じて、I/Oデバイスマウント先のCLシリーズに対し若い番号から自動的にパッチされます(例:Rio3224-D ID:1は1~32ch、ID:2は33~64ch)。

また、CLシリーズ本体からは、マウントしたI/OデバイスとのDanteパッチを1ch単位で手動にて行うことができます。この際、各Dante機器には適切なID番号、分かりやすいデバイスネームとチャンネルラベルを設定しておくことで視認性が高まり、より円滑な手動パッチが可能になります。
CL/QLシリーズ本体からDanteパッチを行う場合、[DANTE SETUP]にて「DANTE PATCHBY」を「THIS CONSOLE(初期値)」にしてください。もし、コンソールからDanteパッチを行わない場合はこの設定を「DANTE CONTROLLER」にすることをおすすめします。

3-1-27 サンプリング周波数を一致させてから音声パッチする

Dante機器間で音声パッチを行うにはサンプリング周波数を一致させる必要があります。サンプリング周波数の異なるDante機器同士は同一ネットワークに接続することはできますが、音声パッチを行うことはできません。サンプリング周波数の変更はDante機器本体もしくはDante Controllerで行うことができます。(ヤマハRシリーズは本体での設定変更はできません)

サンプリング周波数の異なるDante機器同士で音声をやりとりしたい場合は、サンプリングレートコンバーター搭載の機器を経由する必要があります。詳細は応用編の「サンプリング周波数の異なる機器の接続」をご参照ください。

3-1-28 複数の機器に対してパッチする

Danteネットワーク上では、単一の送信チャンネルを複数の機器に分岐してパッチできます。しかし、分岐できる数には制限があります。ここでいう分岐とは、1対1接続(ユニキャスト)を複数回行っている状態のことで、制限とはその1対1接続を同時にいくつまでできるのかを示しています。Dante ControllerのDevice View > Transmitタブの「Transmit flows」欄でその数を確かめることができます。詳細は応用編の「ユニキャストとマルチキャスト」をご参照ください。

3-1-29 Dante機器本体の入出力パッチ

CL/QLシリーズ等のミキシングコンソールや各種プロセッサーでは、Danteパッチだけではなく、本体の入出力パッチが必要です。Dante INポートからインプットチャンネルにパッチする「インプットパッチ」、アウトプットチャンネルからDante OUTポートにパッチする「アウトプットパッチ」などがあります。
CLシリーズとRシリーズのシステムで、アナログ入出力をRシリーズで行う場合は、Danteパッチと本体入出力パッチの計4箇所のパッチがあるということになります。
DanteパッチはDante Controllerや機器本体でも行うことができますが、機器本体内部の入出力パッチはDante Controllerでは行えません。

ここまでがDanteシステム基本セッティングの流れです。お使いのDanteシステムで所望の音声信号のやりとりが行われていれば、基本ステップについては完了です。しかし、環境条件によっては基本セッティングだけでは上手くいかない場合もあるでしょう。以降はそういった場合に必要となる、Danteシステム設計における下記の各種設定や基礎知識について詳細に触れていきます。

  • クロック同期
  • レイテンシー
  • ネットワークスイッチ
  • Dante Virtual Soundcard