Web音遊人(みゅーじん)

コンサートでは初披露の曲など挑戦的なプログラムで臨むステージ/村治佳織インタビュー

「10代の頃にイタリア国立放送交響楽団と共演して『アランフェス協奏曲』を弾かせていただくなど、サントリーホールのステージにはこれまで何度も立たせていただきました。最近では客席で演奏を楽しむことも多くなりましたが、やはり自分の中では特別な空間だという印象が強いのです。ですから今回、リサイタルのお話しをいただいたときから、自分でも聴きに行きたくなるようなわくわくするプログラムを作りたいと考えましたし、これなら今の自分を皆さんにご覧いただけるはず!と自信をもって演奏できる内容になりました」

1993年に鮮烈なデビューを飾ってから25年以上がたち、ここ数年は「ギタリスト・音楽家たるもの」といった肩の力が抜け、解放されたように、包容力のある音楽を聴かせてくれる村治佳織。とはいえ彼女の演奏が、クラシックの確かな技術や音楽性に裏付けられているのは間違いない。だからこそ、クラシック音楽の殿堂といえるサントリーホールでのリサイタルは彼女の真骨頂が聴ける最高の機会となり、特別感のあるひとときになる。

「クラシックのギタリストにとって大切なレパートリーであるC.ドメニコーニ作曲の『コユンババ』やM.カステルヌオーヴォ=テデスコ作曲のソナタ『ボッケリーニ讃』、B.ブリテン作曲の『ダウランドによるノクターナル』などがあり、その一方で今の自分には大切なレパートリーである映画音楽も加えています。ジャンルは関係なく、ギターの音楽としてひとつの流れになるようなプログラムを組みました。ギターの音色でひとつの物語や旅を描くようなコンサートになれば理想的ですし、サントリーホールという独特のオーラがある場にふさわしい雰囲気をお楽しみいただけると信じています」

不思議な語感をもつ『コユンババ』は、トルコの音楽に影響を受けたエキゾティックな作品。そしてイギリスの作曲家であるブリテンの『ダウランドによるノクターナル』は、村治が子どもの頃から敬愛するギタリスト、ジュリアン・ブリームのために書かれた、演奏時間約20分を要する大曲だ。演奏の難易度も高く、それだけに今回は意欲的な姿勢も感じられる。 「以前から練習はしてきましたが、コンサートで弾くのは今回が初めてです。とてもドラマティックで最後に美しい瞬間があり、実は弾きながら涙してしまったことがあるほど。ほかにもカステルヌオーヴォ=テデスコのソナタ全曲をコンサートで弾くのも初めてですし、自分にとってはかなり挑戦的な選曲になりました」

プログラム全体は音楽で旅をするよう、バラエティに富んだ曲や作曲家が並ぶ(トルコ、スペイン、イタリア、イギリス、ブラジル)。それらの音楽を橋渡しし、次の場所へと導いてくれる役割を果たしているのが美しい映画音楽だ。2018年の9月にリリースされ、2019年「第33回日本ゴールドディスク大賞」の「インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞したCD『シネマ』からの曲はもちろん、坂本龍一作曲の『戦場のメリー・クリスマス』などがクラシック作品と自然に共存する。聴き手は約2時間のコンサートをサウンド・クルーズのような気分で楽しめるだろう。

「特にこの数年間は、音楽活動のほかにラジオ番組のパーソナリティとしてさまざまな方と出会うにつれ、面と向かう自らを“音楽家として”というだけではなく“人として”の自分と意識するようになりました。そうした中で音楽を、そして毎日を楽しむことが大きな喜びですし、ステージに立てることに感謝しています。こうした気持ちや音楽に対する感動などを、お客様と共有できるコンサートにしたいと思っています」
多くの人が慌ただしさを感じているであろう年末の時期だけに、ひとときの幸せな時間を味わえるコンサートになるはずだ。

■公演インフォメーション

~デビュー25周年を越えて~ 村治佳織ギター・リサイタル2019「旅と映画に恋して!」

日時:2019年12月21日(土)14:00開演 ※未就学児入場不可
会場:サントリーホール 大ホール(東京都港区赤坂1-13-1)
料金:S席5,800円、A席4,800円、B席4,000円、P席3,000円(税込・全席指定)
予定プログラム:
【旅:トルコ】コユンババ(C.ドメニコーニ)
【映画】『禁じられた遊び』から<愛のロマンス>(村治佳織編)
【旅:スペイン】カスティーリャ組曲(F.M.トロバ)
【映画】『ミッション』から<ガブリエルのオーボエ>(E.モリコーネ)
【旅:イタリア】ソナタ“ボッケリーニ讃”Op.77(M.C=テデスコ)
【旅:イギリス】ダウランドによるノクターナルOp.70(B.ブリテン)
【映画】『ロミオとジュリエット』から<愛のテーマ>(N.ロータ)
【旅:ブラジル】“没後60年記念”カデンツァ:ギター協奏曲より(H.ヴィラ=ロボス)、ショーロス第一番(H.ヴィラ=ロボス)
【映画】『戦場のメリークリスマス』(坂本龍一/佐藤弘和編)

チケットの詳細はこちら

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:寺井尚子さん「ジャズ人生の扉を開いてくれたのはモダン・ジャズの名盤、ビル・エバンスの『ワルツ・フォー・デビイ』」

5802views

音楽ライターの眼

連載32[ジャズ事始め]渡辺貞夫ら先輩たちから受けた“愛のムチ”と佐藤允彦の決意まで

1140views

楽器探訪 Anothertake

改めて考える エレクトーンってどんな楽器?

108704views

フルート

楽器のあれこれQ&A

初心者にもよくわかる!フルートの種類と選び方

17500views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

7581views

オペラ劇場の音楽スタッフの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

舞台上の小さなボックスから指揮者や歌手に大きな安心を届ける/オペラ劇場の音楽スタッフの仕事(後編)

9932views

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

ホール自慢を聞きましょう

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

5717views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

9143views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

15222views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:仕事もバンドも、常に真剣勝負!

7802views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

6505views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

24377views

おとなの楽器練習記 レ・フレール

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ピアノデュオ『レ・フレール』がトロンボーンに挑戦!

8309views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

22629views

安倍圭子傘寿記念演奏会

音楽ライターの眼

マリンバから生まれる多彩な音と可能性を堪能、多くの奏者が集った記念コンサート/安倍圭子 傘寿記念演奏会

4057views

オトノ仕事人

コンサートの音の責任者/サウンドデザイナーの仕事

8205views

われら音遊人:1年がかりでビッグバンドを結成、河内からラテンの楽しさを発信!

われら音遊人

われら音遊人:1年がかりでビッグバンドを結成、河内からラテンの楽しさを発信!

8180views

変えるべきもの、変えざるべきものを見極める

楽器探訪 Anothertake

変えるべきもの、変えざるべきものを見極める

12440views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

17521views

山口正介 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

この感覚を体験すると「音楽がやみつきになる」

6312views

日ごろからできるピアノのお手入れ

楽器のあれこれQ&A

日ごろからできるピアノのお手入れ

54422views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

4986views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

24377views