Web音遊人(みゅーじん)

加古隆 50thアニヴァーサリーコンサート

作曲家・ピアニストとしての音楽活動を一望する、加古隆デビュー50周年記念全国ツアー

クラシック音楽を原点に、現代音楽とジャズの要素が融合した独自の音楽スタイルをもつ作曲家・ピアニスト、加古隆。アカデミックな作曲家を目指して留学したパリで1973年にフリージャズ・ピアニストとしてデビュー。パリでのデビューから50年となる2023年、全国6か所をめぐるコンサートツアーが4月に福岡からスタートする。そんな加古が、これまでの音楽活動を振り返りながら、コンサートに向けての心境を語る。

50年の音楽をたどるコンサート

「50周年はひとつの通過点。僕は生涯、音楽活動を続けていこうと思っています」と加古。今回のコンサートでは、パリ時代のピアノ・ソロ、クァルテット、それから映像のための音楽へと、加古隆の50年の音楽が一望できる、2部構成4パートのプログラムが組まれる。
第1部はピアノ・ソロで、音楽人生が始まったフリージャズ時代を振り返るパート1、ターニングポイントとなった曲を中心としたパート2から成る。
「ピアノ・ソロは僕の音楽の中心となってきた活動であり、ライフワークでもあります。パート1では、フリージャズ時代の曲を久しぶりに演奏します。またパート2で演奏する『ポエジー』は、今の僕の音楽スタイルを生み出すきっかけにもなった曲。“加古隆の音楽”へとつながっていった曲です」

加古は、パリ時代にピアノトリオグループ「TOK(トーク)」としても活動していたが、「人生の中で、もう一度、グループ活動をやろう」と2010年にピアノ四重奏団「加古隆クァルテット」を結成した。第2部では、結成以来、不動のメンバーで活動してきたクァルテットの演奏を楽しめる。
「クァルテットでの活動も僕にとって重要なものです。自分とは別の音楽家の個性が加わるアンサンブルは、予想もしていなかったところで熱くなったりする面白さもあって、そこに一人で完結するソロとは違う醍醐味を感じています。パート3では、そんなクァルテットならではの曲ができればと思います」

加古隆 50thアニヴァーサリーコンサート

視覚的にも楽しめる“映像のための音楽”

そしてコンサートは、『映像の世紀〜パリは燃えているか』へと続く。映像のための音楽である、『パリは燃えているか』や『黄昏のワルツ』など、テレビ放送を通じても愛され続けている名曲の数々が、生き生きとよみがえる。
「やはり僕を語るうえで、映像のために書いた音楽を外すことはできません。パート4として『映像の世紀』をお聴きいただこうと思っています」
第2部の「加古隆クァルテット」のステージでは、その独特な配置にも注目したい。中央にピアノとチェロ、その左右にバイオリンとビオラが立って演奏するというスタイルだ。この配置は、奏者同士の間隔を空ける分、音を聴き合うのが至難の技となるものの、「ライブでは見て楽しんでいただく要素も大切にしたい」と加古は語る。そして狙いはもうひとつ。
「この配置にすると、普段ほとんど聴く機会のないビオラの音をはっきりと聴くことができるのです。なんとも言えない味わいのある音色も楽しんでいただければと思います」

すべてを捧げるからこそ音楽は瑞々しい

50年を経てなお、いつも瑞々しい音楽を生み出す加古。その魅力の源はどこにあるのだろうか。
「僕は植物を育てるのが好きで、時間があれば状態をみて必要な量の水をやったりして世話をしています。秋に葉を落とす植物も、春にはまた新芽を出し、毎年それを繰り返しますね。その新芽に触れるとき、赤ちゃんのほっぺみたいな瑞々しさに涙が出ます。これは毎年繰り返してもまったく飽きることはありません。音楽も同じで、毎日演奏していても、音楽に自分を捧げることができれば、そのたびに新しい葉っぱが生まれてきます。それを瑞々しいと感じてくださる方もいるかもしれませし、何よりも演奏者として、そういう演奏をすることが一番楽しいと感じています」
こうして紡いできた加古隆の50年の音楽が一望できるアニバーサリーコンサート。ここからまた、どんな新しい芽が生まれるのだろうか。その息吹を、ぜひとも多くの人に聴いてほしい。

※加古隆さんの「隆」は正しくは旧字体で、生の上に一が入ります

■加古隆 50thアニヴァーサリーコンサート ソロ&クァルテット~ベスト・セレクション~

2023年
4月15日(土)FFGホール(福岡県)
4月16日(日)三田市総合文化センター(兵庫県)
5月13日(土)札幌コンサートホール Kitara(北海道)
5月20日(土)住友生命いずみホール(大阪府)
5月21日(日)三井住友海上しらかわホール(愛知県)
5月28日(日)サントリーホール(東京都)
公演の詳細はこちら
オフィシャルサイトはこちら

photo/ GEKKO

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:木嶋真優さん「私は“人”よりも“音楽”を信用しているかもしれません」

7049views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#002 カリブの風を21世紀にも届けてくれる普遍的コンセプト~『サキソフォン・コロッサス』編

1445views

楽器探訪 - ステージア「ELC-02」

楽器探訪 Anothertake

持ち運び可能なエレクトーン「ELC-02」、自由な発想でカジュアルに遊ぶ

30973views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バイオリンの購入ポイントと練習のコツ

20406views

ホルンの精鋭、福川伸陽が アコースティックギターの 体験レッスンに挑戦! Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ホルンの精鋭、福川伸陽がアコースティックギターの体験レッスンに挑戦!

10942views

宮崎秀生

オトノ仕事人

ホールや劇場をそれぞれの目的にあった、よりよい音響空間にする専門家/音響コンサルタントの仕事

1919views

メニコン シアターAoi

ホール自慢を聞きましょう

五感で“みる”ことの素晴らしさを多くの方と共感したい/メニコン シアターAoi

2917views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10882views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

31021views

武豊吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人: 地域の人たちの喜ぶ顔を見るために苦しいときも前に進み続ける

1798views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

5301views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25430views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

13476views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

14020views

フリートウッド・マック

音楽ライターの眼

1969年、英米ブルースの邂逅。フリートウッド・マック、伝説の“チェス・セッション”を解き明かす書籍刊行

1256views

カッティング・エンジニア

オトノ仕事人

レコードの生命線である音溝を刻む専門家/カッティング・エンジニアの仕事

2849views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

1894views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカで音楽好きの子どもを育てる

14261views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

6894views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

8208views

楽器のメンテナンス

楽器のあれこれQ&A

大切に長く使うために、屋外で楽器を使うときに気をつけることは?

54258views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10882views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10159views