STEP4 物理接続とリダンダンシー

では、いよいよDante機器同士をケーブル接続します。Danteシステムの接続形態には「スター型トポロジー」「デイジーチェーン型トポロジー」があります。「トポロジー」とは、ネットワークの接続形態をモデル化したものです。

3-1-13 物理接続 : スター型トポロジー

Danteシステムの基本的な物理接続は「スター型トポロジー」と呼ばれる形態です。ネットワークスイッチを中心に放射状に接続していく形が星型に見えることからスター型と呼ばれます。
スター型トポロジーでは、ネットワークスイッチを中心にLANケーブルや光ケーブルを用いて、各デバイス同士を接続していきます。非常に高い拡張性のため、インターネットやオフィスのLANもこのトポロジーが一般的に用いられます。
Danteシステムにおける一般的なスター型配線の形としては、F.O.H側とSTAGE側それぞれに配置したネットワークスイッチに各Dante機器を接続していく方法です。これによりF.O.H ⇔ STAGE間のケーブル配線数を減らし、効率的な配線ルートにすることができます。ネットワークスイッチのLANポートの空きが足りなくなった場合、ネットワークスイッチを追加しネットワークスイッチ同士を接続することで新たにLANポートを増設できます。そのため、大量のDante機器が導入されるような大規模システムにも容易に対応しやすい特長があります。

3-1-14 物理接続 : デイジーチェーン型トポロジー

Danteシステムの物理接続にはスター型のほかに「デイジーチェーン型トポロジー」があります。2つのDante端子(Primary/Secondary含む)を持つ機器では、数珠つなぎで構築できる「デイジーチェーン接続」に対応しています。スター型接続と組み合わせることができますが、デイジーチェーン接続している機器はリダンダント接続ができません。スイッチを使わずにシステム構築できるメリットがありますが、中~大規模なシステムではデイジーチェーン型ではなくスター型の接続(かつリダンダント接続)を推奨します。お使いの機器がデイジーチェーン接続に対応しているかどうかは各メーカーのマニュアル等でご確認ください。

3-1-15 Dante専用ネットワークを用意する

Danteシステムは汎用的なイーサネット対応スイッチを用いるため、同じDanteネットワークにDante以外のネットワーク機器も簡単にLAN接続できてしまいます。そういったDante以外の機器のネットワーク通信がDanteのリアルタイム性の高いシビアな通信に対して影響を与える可能性があります。必ずDanteネットワークは完全に独立したネットワークを構築してください。
1台のネットワークスイッチで異なるネットワークを混在させる場合は、VLAN機能を用いて論理的にネットワークを分けるなど、Danteネットワークを完全に独立させることを推奨します。
どうしても混在しなければならない場合は、十分な帯域幅とQoSによるDante最適化機能をネットワークスイッチ上で機能させる必要があります。

3-1-16 リダンダント接続(2重化)

Danteが基本接続形態とするスター型トポロジーは拡張性が高い反面、ネットワークスイッチにトラブルが発生すると、そのネットワークスイッチを中心としたシステムが一切機能しなくなるというリスクがあります。また、デバイス間の配線も1本のケーブル接続のみなので、ケーブル断線やコネクター不良によるネットワーク経路破綻の危険性も孕んでいます。そのような物理的な機器故障における早急な復旧は難しいため、全く同じ予備の物理ネットワークを並走させて2重化しておくことが、システムの安定性を高めるのに最もシンプルで効果的な方法であり、重要なことです。
予備ネットワークを並走させることを「リダンダンシー(冗長性)」と呼び、メイン機能に障害が発生した際に自動的に予備機能に切り替わることを「フェイルオーバー」と呼びます。
Danteでは、メイン用のPrimaryネットワークと予備用のSecondaryネットワークを用いたリダンダンシーに対応しています。Primary端子とSecondary端子それぞれにネットワークスイッチとケーブルを分けて並走させることで、簡単に2重化システムを構築できます。しかし、全てのDante機器がDanteリダンダンシーに対応しているわけではありません。ヤマハCL/QLシリーズなどDante Brooklyn IIモジュールを実装するDante機器の多くではリダンダンシーに対応しています。お使いのDante機器がリダンダンシー対応かどうかは各メーカーのマニュアル等でご確認ください。
リダンダンシー対応機器をお持ちで、システムの安全性を高める必要がある場合は、リダンダント接続の構築を推奨します。

3-1-17 リダンダントモードとデイジーチェーンモードの注意点

リダンダンシー対応機器の多くがデイジーチェーン接続に対応しており、Secondary端子側のモードを「リダンダンシーモード」か「デイジーチェーン(Switchedモード)」かを設定できるようになっています。そのため、お使いのDante機器がどちらのモードで動作しているのかを把握することが重要です。注意点としては、リダンダント接続のネットワークにデイジーチェーンモードの機器が混ざり込んだ場合です。この場合、デイジーチェーンモード機器のSecondary端子はPrimaryネットワークとして機能しているため、この端子を通じてPrimaryとSecondaryが同一ネットワークに接続されたことになり、正常な通信が行えなくなります。
また、ヤマハCL/QLシリーズ、TFシリーズ等のDante機器の初期設定はデイジーチェーンモードとなっているため、必ずリダンダンシーモードに変更してから接続してください。Dante機器本体を初期化した後のモード確認も必ず行うようにしてください。

3-1-18 PCの接続

Dante ControllerやDante Virtual SoundcardをDante機器と通信させるために、それらのソフトウェアをインストールしたPCをDanteネットワークに有線LAN接続します。スター型トポロジーの場合はネットワークスイッチのどの空きポートでも構いません。デイジーチェーン型トポロジーの場合は、Dante機器に2つあるDante端子のうち空きポートに接続してください。Dante ControllerはWiFiでも接続可能ですが、安定性を重視される場合は推奨できません。

接続できるPCの台数にはとくに制限はありません。複数のDante Controllerから同時にコントロールすることも可能です。SecondaryネットワークへのDante Controllerの接続も可能です。1台のPCでPrimary/Secondaryに接続したい場合は、市販の外付けLANアダプターでLANインターフェースを増設し、それぞれのインターフェースをPrimary/Secondaryに割り当てます。また、Dante Virtual SoundcardはSecondaryネットワークに対応していません。

PCを接続しDante Controllerを起動し適切なネットワークインターフェースを選択すれば、Danteネットワーク上の機器の自動検出が始まり、各種ステータスが表示され、設定項目にアクセスできるようになります。しかし、場合によってはDante機器情報を正常に検出できない場合があります。その原因のひとつにIPアドレスが適切に設定されていない可能性があります。次項からIPアドレスの設定方法を解説します。