今月の音遊人
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コンサートマスターとして、室内楽奏者として、音楽を意欲的に追求しているバイオリニスト/伊藤亮太郎インタビュー
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2017.8.8
定期演奏会などがテレビ放映される機会の多いNHK交響楽団だが、指揮者のすぐ近くで楽団をリードするコンサートマスターは認知度・知名度の高い存在だろう。2015年からその地位にある伊藤亮太郎は、同時期に首席指揮者となったパーヴォ・ヤルヴィと並び、NHK交響楽団の新しい歴史を担う音楽家だ。
「2015年までは札幌交響楽団で10年間コンサートマスターを務めていましたが、N響に着任して、同じ立場でもレパートリーや雰囲気がまったく違うことを実感し、気分を新たにしました。パーヴォ氏も北欧の作品などを含めた幅広いレパートリーをおもちですから、こちらも日々が勉強ですし、定期演奏会はテレビやラジオで中継されますので緊張感も高まります」
札幌交響楽団からNHK交響楽団へ移籍した際、楽団の伝統ともいうべき音の違いに驚き、慣れるまでにはやや時間を要したという。
「N響のサウンドはチェロやコントラバスの低音弦がすごく鳴るという印象が強く、最初はとても新鮮であり、驚きました。コンサートマスターの席にいても、音が迫ってくるように感じるのです。さまざまなタイプの指揮者をゲストにお迎えするのですが、基本的には指揮者それぞれの音楽的な解釈やアイデアを受け入れつつ、N響ならではのサウンドも生かした音作りをしてほしいので、コンサートマスターは橋渡し役にならなくてはいけません。いろいろな経験をすることで引き出しが増えるでしょうし、コンサートマスター冥利に尽きるような満足度の高いコンサートも増えていくのだと思います」
オーケストラを離れると室内楽の活動が多い。結成20年を迎えた弦楽四重奏団「ストリング・クヮルテットARCO」もそのひとつであり、伊藤が活動拠点を札幌から東京へ移したことを機に、演奏するチャンスを増やしていきたいという。
「メンバーそれぞれがオーケストラの楽員として多忙ですが(第2バイオリンの双紙正哉とチェロの古川展生は東京都交響楽団、ヴィオラの柳瀬省太は読売日本交響楽団に所属)、同年代の仲間として長く演奏してきましたし、経験を積んできたからこそ生まれる音楽もあるはずです。室内楽、特に弦楽四重奏の重要性については、ロンドンへ留学した際に師事したジェルジ・パウク先生に教えていただきました。ですから帰国のタイミングとほぼ同時に、同世代の素晴らしい音楽家たちとARCOを結成できたのは、とてもラッキーだったと思います。余裕ができましたら自分のリサイタルもしたいですし、N響の仲間たちと室内楽をする機会も増やしていきたいですね」
そのN響メンバーとは、2017年9月30日(土)に銀座のヤマハホールでユニークなコンサートを行う。弦・管・打楽器7人によるアンサンブルに、熱狂的なクラシック・ファンとして知られる上方の落語家、桂米團治を語り手に迎え、ストラヴィンスキーの舞台作品『兵士の物語』などを演奏するのだ。
「一緒にオーケストラをやっている音楽家たちと、こういった形で共演できるのは楽しく、コンサートが待ち遠しいくらいです。桂米團治さんとは初共演ですが、この曲は物語の面白さや語り手の話しぶり、演技なども大きな魅力ですから、初めて聴く方も必ず楽しんでいただけるでしょう」
伊藤にとっても新鮮な経験だというこのコンサート。コンサートマスターとしての活躍ぶりと並行し、室内楽奏者としての活動にも注目したい。
日時:2017年9月30日(土)19:00開演(18:30開演)
場所:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14 ヤマハ銀座ビル7F)
料金:7,000円(税込)
曲目:R.グリエール(F.プロト編)/『バイオリンとコントラバスのための組曲』、M.ラヴェル(竹島悟史編)/バレエ音楽『マ・メール・ロワ』、I.ストラヴィンスキー/『兵士の物語』