Web音遊人(みゅーじん)

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

1997年9月に開館し、2017年で20周年を迎えた「東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル」。東京オペラシティは、東京都庁ほか高層ビルが建ち並ぶ西新宿エリアのより西側、初台駅と直結する複合文化施設だ。コンサートホールはその中にあり、オーケストラコンサートからピアノリサイタルまで多彩な公演が連日のように行われている。

ホールに入るとまず驚かされるのは、大聖堂のように上へと広がる変形ピラミッド型の天井。ヨーロピアンオークという木材(ステージのみ樺桜)と、陰影を活かした照明による奥行きある色調の内装は、“木のぬくもりにあふれた特別な空間”へ足を踏み入れたような錯覚さえおぼえる。壁面や床からステージ背後に備え付けられたパイプオルガンの枠、ステージ上部の反響板、そして客席の椅子に至るまですべてがまぶしいほど明るい。

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

(写真左)壁などと同じ天然木を使った座席の背もたれもまた音響を左右する。やや落ち着いたグリーン調のシートはホール内の雰囲気と調和している。(写真右)音響的に熟慮されたステージ上の反響板が、天井に向かって立ち上った音を、豊かな音楽として客席へ届ける。

3階層になっている客席の数は1,632席。その数だけで比較すると、1980~90年代に相次いで東京都心に生まれた他のクラシック音楽専用ホールよりやや小規模ではあるが、シューボックス型の内部は雄大な天井空間が広がっているため、音楽が豊かに膨らんでいくという印象が強い。

ホールの個性を創造する自主企画などの基本的なコンセプト作りに関わったのは、開館前の1995年に芸術監督として就任していた作曲家の武満徹。しかし武満は、開館を待たず惜しくも1996年2月に亡くなってしまったが、ホールの設計段階からも深く関わり、施設の役割や存在意義なども監修していた。そのためホールには「タケミツ メモリアル」の名称が付けられており、現在もなお主催公演のプログラミングにおいては、氏の音楽観や精神などが反映されているといってよい。

「武満さんがおっしゃっていた言葉のひとつに『未来への窓』というキーワードがあり、これが主催公演を企画する際の軸になっています。王道路線のクラシック音楽というよりは、現代の作品でも古楽であっても常に新しい視点をお客様に提示し、音楽を通じて未知の体験をしたいと願う方に楽しんでいただけるものが、このホールならではの特徴だといえるでしょう」(音楽事業部プロデューサー 鈴木学さん)

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

(写真左)パイプオルガンの演奏の様子が見られる無料のヴィジュアル・オルガンコンサートは、聴くだけではなく見ても楽しめると大人気。(写真右)1階から3階まで吹き抜けのホワイエは解放感あふれる空間だ。

その既定路線に乗って多彩なコンサートがシリーズ化されており、熱心な聴衆を集めてきた。世界的な古楽団体「バッハ・コレギウム・ジャパン」や著名作曲家を招いてコンサートや作曲コンクール(武満徹作曲賞)を行う同時代音楽企画「コンポージアム」。ジャズ・ピアニストの山下洋輔が自作のピアノ協奏曲などを次々に発表してきたコンサート(いま注目のジャズ・コンポーザー、挾間美帆の才能もここで見出された)。これらは主催公演の一部だが、どれもが聴き手に新鮮な音楽体験を提示し、次の時代への足がかりとなるような「未来への扉」だ。

一方では、子供たちにも大人気の動物アンサンブル、ズーラシアンブラスなどが主役となった「音楽の絵本」シリーズ。吹奏楽ファン憧れのプレイヤーたちが集合した侍BRASSなど、エンタテインメントでありながらも次世代の聴衆や音楽家を見据えたコンサートも大好評だ。
「『音楽の絵本』のように、主催公演で取り上げ始めた頃はまだ公演機会が少なかったものの、このホールでの公演の反響を知り、各地での公演が増えていったケースもありました。もちろん、ズーラシアンブラスも侍BRASSも、長く人気を保ち続けているのは、音楽的なクオリティが高いということが大前提にあります。さまざまな主催公演で繰り広げられる素晴らしい演奏と、お客様の感性とが呼応しあう体験がきっかけとなり、新たなお客様との出会いへ結びつく好循環もまた、ホールの評価につながると思っています」(音楽事業部 広報 興梠徳子さん)

企画内容とホール内部の神々しいイメージなどが集約され、独特の個性を作り上げている「東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル」。その雰囲気を味わいに足を踏み入れるもよし、先鋭的な演奏やプログラムを体験するもよし。西新宿には「未来への扉」が、冒険的な聴衆を待っているのだ。

■東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

所在地:東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL:03-5353-0788
ホール形式:シューボックスタイプ
席数:1,632席(車椅子席 4席を含む)
オフィシャルサイトはこちら

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:石川さゆりさん「誰もが“音遊人”であってほしいですし、音楽を自由に遊べる日々や生活環境であればいいなと思います」

8054views

音楽ライターの眼

レスリー・ウェストの追悼CDボックス2作が発売。暑苦しい夏は暑苦しいロック・ギターで

2991views

楽器探訪 Anothertake

存在感がありながら他の楽器となじむシンフォニックなサウンドが光る、Xeno(ゼノ)トロンボーンの最上位モデル

6156views

暖房

楽器のあれこれQ&A

ピアノを最適な状態に保つには?暖房を入れた室内での注意点や対策

60247views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

10319views

オトノ仕事人 ボイストレーナー

オトノ仕事人

思い描く声が出せたときの感動を分かち合いたい/ボイストレーナーの仕事(後編)

9674views

人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス

ホール自慢を聞きましょう

おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

9080views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7993views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

25486views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:人を楽しませたい!それが4人の共通の思い

7086views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は、いつ買うのが正解なのだろうか?

8870views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26737views

大人の楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

20269views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

24541views

音楽ライターの眼

偉大な音楽家たちによる、ベートーヴェン生誕250年記念アルバム

3167views

松石陽介さん

オトノ仕事人

「音楽の輪・人の和」を大切にして、子どもたちを健やかに育てる/地域バンドをまとめる仕事

719views

われら音遊人

われら音遊人:大学時代の仲間と再結成大人が楽しむカントリー・ポップ

4857views

【楽器探訪 Another Take】演奏に集中できるストレスフリーのキイメカニズム

楽器探訪 Anothertake

演奏に集中できるストレスフリーのキイメカニズム

6625views

東広島芸術文化ホール くらら - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

繊細なピアニシモも隅々まで響く至福の音響空間/東広島芸術文化ホール くらら

14270views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

8370views

楽器のあれこれQ&A

ピアノ講師がアドバイス!練習の悩みを解決して、上達しよう

5046views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11396views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26737views