今月の音遊人
今月の音遊人:中川晃教さん「『音遊人』のイメージは、雲を突き抜けて、限りなくキレイな空の中、音で遊んでいる人」
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コロナ禍での新しいオーケストラ様式と音楽会の在り方を提示する/落合陽一×日本フィル プロジェクトVOL.4 《__する音楽会》
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2020.10.8
tagged: 日本フィルハーモニー交響楽団, 落合陽一, __する音楽会
「テクノロジーによってオーケストラを再構築する」というテーマのもと、2018年から音楽会を開催してきた「落合陽一×日本フィル」プロジェクト。メディアアーティストの落合陽一と映像集団WOWによる最新のメディアアート、そして伝統的なクラシック音楽の日本フィルハーモニー交響楽団のコラボレーションによって、聴覚に障がいのある人も音楽を感じ、楽しめる「耳で聴かない音楽会」などオーケストラの新たな魅力と価値を広げてきた。
2020年10月13日に開催される今年の公演名は「__する音楽会」。何と読んでいいのか悩んでしまうが、そこには当初計画していた音楽会がコロナ禍で白紙になったこと、そしてそこから新たな形の音楽会を模索する「試行錯誤」への覚悟が込められている。空白にどんな言葉が入るのか。それは当日までわからないという。
「__する音楽会」はコロナ禍の音楽会のあり方を提示するもので、コンサートホールでの音楽会とオンライン配信が同時に行われる。といっても、ただソーシャルディスタンスを保ったオーケストラ公演でも、一般的なライブ配信でもない。ホールとオンラインとで、同じコンサートをまったく別の体験として楽しむことができるのだ。
コンサートホールは単なる空間ではなく、オーケストラ同様に楽器の一部。その形状を活かした多彩な生の響きで、新しい公演が生まれる現場を目撃できるのがホール鑑賞だ。これまでのプロジェクト同様、映像も一奏者として演奏会に参加するが、今回は8Kプロジェクターなどによるプレミアムなビジュアル演出が行われる。
一方のオンライン鑑賞はホール鑑賞の代替手段ではなく、オンライン上だけに生み出された音楽会を楽しむことができる。業界最高水準音質のハイレゾ音質と2K画質でコンサートの臨場感をできる限り伝えるとともに、ビジュアル演出もホールとはまったく異なるものに。“生で聴かない”音楽会にテレビ中継以上の価値をもたらし、オンラインにしかできない体験を提供する。
まったくの別ものであるこのふたつを聴き比べることも可能だ。巻き戻せない音が過ぎ去っていく一回性を大切にし、アーカイブ配信は行わないが、2020年10月24日のみ再配信される。
プログラムの全貌は当日まで明かされないが、オーケストラにとっての定番であり、指揮者も演奏者も自信をもってのぞむことができるという『ベートーヴェンの交響曲』第7番が一曲として選ばれている。ほかに明かされている曲は、スペイン風邪が流行っていた1918年にストラヴィンスキーが作曲した『兵士の物語』。劇をともなわない組曲版で、演奏そのものに焦点をあてたものとなるそう。
さらに、現代音楽の作曲家として注目される藤倉大作曲の『Longing from afar』では、前人未到の演奏にチャレンジする。コロナ禍のステイホーム期間中に作曲されたこの作品は、リモート演奏のためにつくられたもので、通信による遅延までもを想定してデザインされている。オンライン上では数々の遠隔演奏が行われ話題を呼んできたが、2020年9月28日には藤倉がアーティスティック・ディレクターを務める「ボンクリ・フェス2020」でライブ版として初演された。
そして「__する音楽会」では、「舞台上演+オンライン」というまったく新しいハイブリットの形で初めて演奏される。この生とオンラインの合奏には、世界のオーケストラ・プレイヤーの参加を呼びかけているというから期待大だ。自由度が高く、チャンスミュージック要素もたっぷりある楽曲なので、一期一会の演奏をお楽しみに!
「生身の人が物理的に集まって音を合わせるオーケストラは、人間の意地だと思っています。僕はコンピューターの研究をしていますが、コンピューターができないことを人間がやっている。人間と人間が接するというオーケストラの本質と向き合い、生の演奏を磨き上げてきた歴史に対して今、我々に何ができるかを模索するのが今回の挑戦です」
落合はそんな意気込みを語っている。
「日本フィルとしては、メディアアーティストやビジュアル演出の方など違ったジャンルの方と一緒になり、ただ聴くだけではなく体験する音楽を広げていくプロジェクトを継続してきたことはとても貴重なことだと思っています。今回は、コロナ禍だからこその新しい音楽と新しいコミュニケーションを伝えていきたい。一方で、我々オーケストラの立場としては、生のコンサートでお迎えしたお客様と一緒に音楽をつくることをとても大事にしています。オーケストラを楽しんでいただく新しい挑戦だと思ってご覧いただけたら嬉しいです」
日本フィルハーモニー交響楽団員はそう話す。
試行錯誤は、現在進行形で続いているという。本番に向けたその工程は、ダイジェストムービーとして公開中だ。
まだ誰も体験したことがない新しい音楽会。「__する音楽会」にどんなタイトルをつけるのか。自分に合った鑑賞法で、自分なりの答えをぜひ見つけてみては?
『__する音楽会』
日時:2020年10月13日(火)19:00開演(18:00開場)
会場:東京芸術劇場 大ホール
料金:S席6,000円(税込)、A席5,000円(税込)
出演:日本フィルハーモニー交響楽団
曲目:ベートーヴェン『交響曲第7番 第4楽章』、ストラヴィンスキー『兵士の物語』、藤倉大『Longing from afar』 ほか
オンライン配信:各6,000円(税込)
・2020年10月13日(火)ライブ配信公演(イープラス)
・2020年10月24日(土)再配信公演(イープラス)
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