今月の音遊人
今月の音遊人:清水ミチコさん「ピアノをちょっと絶ってみると、どれだけ自分に必要かわかります」
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音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール
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2017.6.14
tagged: ホール自慢を聞きましょう, 東京芸術劇場, コンサートホール
東京都心にクラシック音楽専用のコンサートホールが次々に誕生していた1980~90年代。1990年10月、東京・池袋駅西口前に開館した東京芸術劇場は、クラシック音楽ファンの注目を集めつつ、演劇・舞台芸術ファンからも期待が寄せられた複合文化施設だ。
館内には複数の劇場があり、音楽ファンであれば、シンボリックな長いエスカレーターなどを使ってコンサートホールへ。演劇やダンスなどのファンは客席数約800のプレイハウスや、可変式の小ホールであるシアターウエストやシアターイーストへ。劇作家・演出家・俳優の野田秀樹氏が、2009年7月以来芸術監督を務めている影響も大きく、話題性のある演劇作品の上演も多いが、コンサートホールでも注目度の高いコンサートが常に行われている。
25年以上の歴史をもつ東京芸術劇場だが、館内をリニューアルし、2012年9月に再オープンしてから、これまで以上に創造精神や発信力を高めたといえるだろう。
開館当初よりヴィンヤード・タイプのホールとして親しまれてきたコンサートホールは、リニューアル時にステージの拡張や客席シートの全面入れ替え、木製リブ導入による壁面処理などで音響を大幅に改善。聴衆からも、演奏した著名音楽家からも「より豊かな音響になった」「音色の粒までもがクリアに聴こえるようになった」といった称賛が寄せられている。
そのため、大編成で多彩な楽器を要するオーケストラ作品が効果的に響くホールとして再認識され、事業提携している読売日本交響楽団ほか、国内外のオーケストラが意欲的なプログラムを組んで演奏している。
さらには2012年に「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」(通称「劇場法」)が施行されたことにより、公共ホールには創造的な自主事業の推進が急務となった。そのため東京芸術劇場も創造発信の場として、豊島区や都内周辺エリア、そして埼玉県なども含む地域の人たちに愛される劇場として生まれ変わったのである。
たとえば、前記のように演劇ファンも集まる場であることを活かし、開館25周年を迎えた2015年には芸術監督の野田秀樹演出によるモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚~庭師は見た!~』を企画・上演。和洋折衷の斬新なステージ・デザインによるこの舞台には、演劇公演に足を運んでいた多くの観客が来場し、初めてコンサートホールを訪れた人も多かったという。
これを機に、注目すべきクリエイターを演出に起用したオペラ公演を毎年1本、金沢や新潟等、他の劇場との共同制作という形で実現。2016年の『蝶々夫人』では国内外で高い評価を受けている俳優・演出家の笈田(おいだ)ヨシを、2017年の『トスカ』ではカンヌ映画祭などの常連となっている映画作家の河瀨直美を起用し、コンサートホールにおけるシアターオペラという新しい形を提示している。
また世界で唯一、演奏する音楽によって2つの面の楽器を使い分けられる回転式のパイプオルガンがあり、年間を通してさまざまなオルガン・コンサートや講座が行われていることも、東京芸術劇場ならでは。最近ではランチタイムおよびナイトタイムという2つの「パイプオルガンコンサート・シリーズ」において、楽器の回転を見せるのも話題を呼んでおり(なんと写真撮影可!)、エンタテインメント性も高めた内容でオルガンのファンを増やしている。
その他、シンフォニック・ジャズの魅力が詰まった「N響JAZZ at 芸劇」、ピリオド楽器(古楽器)の演奏会、多くの吹奏楽ファンが集まる「ブラスウィーク」など、多彩な公演を開催。さまざまな文化・芸術のファンが集まり、新しい発見ができる劇場として、ますます注目度は上がるだろう。
2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックや池袋駅西口エリアの大規模な再開発など新しい街作りにおいても、この劇場が大切な役割を果たすことになるに違いない。
所在地:東京都豊島区西池袋1-8-1
TEL:03-5391-2111
ホール形式:ヴィンヤード形式
席数:1,999席
文/ オヤマダアツシ
photo/ 東京芸術劇場
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