Web音遊人(みゅーじん)

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

東京都心にクラシック音楽専用のコンサートホールが次々に誕生していた1980~90年代。1990年10月、東京・池袋駅西口前に開館した東京芸術劇場は、クラシック音楽ファンの注目を集めつつ、演劇・舞台芸術ファンからも期待が寄せられた複合文化施設だ。

館内には複数の劇場があり、音楽ファンであれば、シンボリックな長いエスカレーターなどを使ってコンサートホールへ。演劇やダンスなどのファンは客席数約800のプレイハウスや、可変式の小ホールであるシアターウエストやシアターイーストへ。劇作家・演出家・俳優の野田秀樹氏が、2009年7月以来芸術監督を務めている影響も大きく、話題性のある演劇作品の上演も多いが、コンサートホールでも注目度の高いコンサートが常に行われている。

25年以上の歴史をもつ東京芸術劇場だが、館内をリニューアルし、2012年9月に再オープンしてから、これまで以上に創造精神や発信力を高めたといえるだろう。
開館当初よりヴィンヤード・タイプのホールとして親しまれてきたコンサートホールは、リニューアル時にステージの拡張や客席シートの全面入れ替え、木製リブ導入による壁面処理などで音響を大幅に改善。聴衆からも、演奏した著名音楽家からも「より豊かな音響になった」「音色の粒までもがクリアに聴こえるようになった」といった称賛が寄せられている。
そのため、大編成で多彩な楽器を要するオーケストラ作品が効果的に響くホールとして再認識され、事業提携している読売日本交響楽団ほか、国内外のオーケストラが意欲的なプログラムを組んで演奏している。

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

(写真上)広々として品のあるホールへのエントランスと、その奥に広がるロビーではコンサートが行われることも。(写真左下)リニューアルにともない座席もすべて新調。(写真右下)ホール内の反響板はパイプオルガンを隠した状態にもなる。

さらには2012年に「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」(通称「劇場法」)が施行されたことにより、公共ホールには創造的な自主事業の推進が急務となった。そのため東京芸術劇場も創造発信の場として、豊島区や都内周辺エリア、そして埼玉県なども含む地域の人たちに愛される劇場として生まれ変わったのである。
たとえば、前記のように演劇ファンも集まる場であることを活かし、開館25周年を迎えた2015年には芸術監督の野田秀樹演出によるモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚~庭師は見た!~』を企画・上演。和洋折衷の斬新なステージ・デザインによるこの舞台には、演劇公演に足を運んでいた多くの観客が来場し、初めてコンサートホールを訪れた人も多かったという。

これを機に、注目すべきクリエイターを演出に起用したオペラ公演を毎年1本、金沢や新潟等、他の劇場との共同制作という形で実現。2016年の『蝶々夫人』では国内外で高い評価を受けている俳優・演出家の笈田(おいだ)ヨシを、2017年の『トスカ』ではカンヌ映画祭などの常連となっている映画作家の河瀨直美を起用し、コンサートホールにおけるシアターオペラという新しい形を提示している。

また世界で唯一、演奏する音楽によって2つの面の楽器を使い分けられる回転式のパイプオルガンがあり、年間を通してさまざまなオルガン・コンサートや講座が行われていることも、東京芸術劇場ならでは。最近ではランチタイムおよびナイトタイムという2つの「パイプオルガンコンサート・シリーズ」において、楽器の回転を見せるのも話題を呼んでおり(なんと写真撮影可!)、エンタテインメント性も高めた内容でオルガンのファンを増やしている。

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

世界的にも珍しい回転式のパイプオルガン。(写真左)伝統的なルネッサンス/バロックタイプと(写真右)シャープな雰囲気のモダン・タイプ。3タイプの調律やピッチが設定されており、幅広い時代の作品が演奏できる。

その他、シンフォニック・ジャズの魅力が詰まった「N響JAZZ at 芸劇」、ピリオド楽器(古楽器)の演奏会、多くの吹奏楽ファンが集まる「ブラスウィーク」など、多彩な公演を開催。さまざまな文化・芸術のファンが集まり、新しい発見ができる劇場として、ますます注目度は上がるだろう。
2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックや池袋駅西口エリアの大規模な再開発など新しい街作りにおいても、この劇場が大切な役割を果たすことになるに違いない。

■東京芸術劇場 コンサートホール

所在地:東京都豊島区西池袋1-8-1
TEL:03-5391-2111
ホール形式:ヴィンヤード形式
席数:1,999席

オフィシャルサイトはこちら

 

特集

宮本笑里

今月の音遊人

今月の音遊人:宮本笑里さん「あの一音目を聴いただけで、救われた気持ちになりました」

11564views

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase4)ガーシュウィン「キューバ序曲」、N.Y.サルサへの道 エクトル・ラボー没後30年に聴くダイバーシティ

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase4)ガーシュウィン「キューバ序曲」、N.Y.サルサへの道/エクトル・ラボー没後30年に聴くダイバーシティ

3143views

楽器探訪 Anothertake

目指したのは大編成のなかで際立つ音と響き「チャイム YCHシリーズ」

13453views

引っ越しのシーズン、電子ピアノやエレクトーンの取り扱いについて

楽器のあれこれQ&A

引っ越しのシーズン、電子ピアノやエレクトーンを安心して運ぶには?

129621views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

10849views

佐藤順

オトノ仕事人

劇伴制作の進行管理や演奏シーンの撮影をサポートする/映画等の劇伴制作をプロデュースする仕事

5775views

久留米シティプラザ - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

世界的なマエストロが音響を絶賛!久留米の新たな文化発信施設/久留米シティプラザ ザ・グランドホール

21962views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

7481views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

26803views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

2956views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

あれから40年、おかげさまで「音」をはずさなくなりました

5521views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28506views

大人の楽器練習機

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:世界的ピアニスト上原彩子がチェロ1日体験レッスン

20289views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

21992views

音楽ライターの眼

名手ぞろいの楽団員が一夜限りの室内楽/ベルリン・フィル スペシャル・アンサンブル Vol.3

7390views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

弦楽器の“健康診断”から“治療”、健康アドバイスまで/弦楽器の調整や修理をする職人(前編)

15997views

われら音遊人:公園から広がる音楽の輪 多幸感×実験精神で拡張中!

われら音遊人

われら音遊人:公園から広がる音楽の輪 多幸感×実験精神で拡張中!

420views

楽器探訪 Anothertake

空間を包み込む豊かな響き「フリューゲルホルン」

8842views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

13732views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

6575views

楽器のあれこれQ&A

目的別に選ぼう電子ピアノ「クラビノーバ」3シリーズ

5190views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

4609views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

35396views