Web音遊人(みゅーじん)

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

音楽とはなんだろうか?などと大上段に構えると大変なことになる。僕にとって大問題だった。いまでも皆目わからない。
だから、いつかしっかりと教えてもらおうと思って、この「ヤマハ大人の音楽レッスン」にたどり着いたのでした。

かつてドイツ文学者の高橋義孝先生は、ご自身の芸術論の中で、芸術作品とはしっかりと、確かに目で見て、ここからここまでが作品だと分かるもの。手に触れてみて、確かにこれは作品であると分かるもののことだ、と書かれた。つまり絵画や彫刻のことである。それに引き換えて文学作品は、ここからここまでが作品であるという境界線がないとおっしゃる。フォルムといってもいいか。

つまり、小説なり文芸作品の形は手に取れるものではなく、読者それぞれの頭の中にあり、その形は読者ひとりひとりで違うだろうということです。すなわち文学は芸術足り得ないのではないか、と。なんだか難しい話になりました。

では、音楽はどうだろうか。
音楽の形は文学作品よりも、はかなく時間と共に雲散霧消してしまう、とりとめのないものではないのか。しかし、音楽はあきらかに芸術作品と呼ばれるものである。ポピュラー音楽は、これほどの楽しみを与えてくれるものは、他にあり得ないとまでいえる。

音というのは不思議なものだ。我が人生、最大の謎である、というのはそういうことから来ている。サクソフォンを勉強していてますます、そう感じる。そもそも、ドの音とレの音のどちらが高いか低いか、僕には分からなかった。こういうことって、みなさんは最初からわかっているだろうか。ドとレの音を聴いて、こちらが高い、こちらが低い、と決まっています、と誰かから、教えてもらわなくてはならないのではないかと、頭の固い僕は思うのだが。話題も固くなりました。

リズムにしても同じことを感じていた。
その昔、ギターでメトロノームを使って、コード・カッティングの稽古をした。ぴったりとタイミングが合うとメトロノームの音が聴こえなくなる。停まってしまったかと、ギターを弾くのをやめると、音が聴こえる。

声楽の合唱の練習したとき、自分の声が聴こえないように歌いなさい、と先生からいわれた。音がピタリと合うと、一つにまとまり、個々の歌声は聴こえなくなる。

ジャズの演奏家に聞いたところ、リズムがジャストで合うと、それは音楽ではなくパルスにしか聴こえないのだと。
謎は深まるばかりです。まだまだこれからもサクソフォンを勉強しなければなりませんね。

パイドパイパー・ダイアリー
アルトサクソフォンのレッスンで、最近演奏しているのは『ルパン三世のテーマ』。実はこの曲、1年前の練習曲でもあります。久しぶりに同じ曲にチャレンジしているわけですが、思いもよらぬことがありました。なんと同じ曲を演奏しても、1年前とは明らかに“音”が違っていて、まことにいい感じなのです。「これって、もしかしたら実力がついたってこと?」。それに間違いなし。好調はまだ持続中です。ここまできたら、もうマグレではありませんよね!?

■山口正介〔やまぐち・しょうすけ〕

作家。映画評論家。1950年生まれ。桐朋学園芸術科演劇コース卒業。劇団の舞台演出を経て、小説、エッセイなどの文筆の分野へ。主な著書に『正太郎の粋 瞳の洒脱』『ぼくの父はこうして死んだ』『江分利満家の崩壊』などがある。

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