今月の音遊人
今月の音遊人:May J.さん「言葉で伝わらないことも『音』だったら素直に伝えられる」
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今月の音遊人:中川晃教さん「『音遊人』のイメージは、雲を突き抜けて、限りなくキレイな空の中、音で遊んでいる人」
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2019.9.1
2001年にシンガーソングライターとしてデビューして以来、歌手としてはもちろん、ミュージカルや演劇、ドラマなど多彩なジャンルで活躍してきた中川晃教さん。マルチな才能で私たちを楽しませてくれる中川さんは、好きな音楽も洋楽から歌謡曲、クラシックまで、バラエティ豊か。音楽に対するひたむきな思いも語ってくださいました。
僕の聴いていた音楽は母の影響が大きかったと思います。母はソウルやディスコ系が好きだったので、ホイットニー・ヒューストンやレイ・チャールズ、アレサ・フランクリン、ロバータ・フラックなどの曲を、教えてもらっていました。日本のポップス、歌謡曲も好きで、布施明さんや井上陽水さん、美空ひばりさん、玉置浩二さん、弘田三枝子さんなども聴いていました。どれも10代の僕が聴くには渋すぎるラインアップだったので、取材で話すと驚かれたりしたこともありましたね(笑)。
中でもよく聴いていたのがホイットニー・ヒューストン。彼女がヒロインを演じた映画のサントラでもある『ボディーガード』がきっかけだったこともあり、それに収録されていた大ヒット曲『オールウェイズ・ラヴ・ユー』をよく聴いていましたし、カバーもしたことがあります。
影響を受けたということで言えば、布施明さんの『愛は不死鳥』。ホイットニーほどたくさん聴いたわけではないのですが、あの感情を込めた布施さんの歌声は衝撃的でした。
最近はクラシックも聴くようになりました。幼稚園からピアノを習っていたので、一応クラシックの道は通っていますが、正直苦手意識もあったんです。でもレナード・バーンスタインが音楽を手がけたミュージカル『キャンディード』に出演させていただいた時、その音楽に触れて、クラシックには全ての音楽の元があるんだなと気づかされたんです。それ以来、クラシックにも耳を傾けるようになりましたね。
ライブのリハーサルの時に、サウンドチェックをするんですけれども、自分のコンサートであれば自分の求める音を作ることに集中します。ただ、ミュージカルのようにほかの出演者と共演する場では「それぞれどんな理想の音を持っているんだろう?」「その音を求めるのはどういう理由があるんだろう?」といったことを考えるのが好きなんですよ。
ミュージシャンのコンディションや、会場の作り、空気感によって、もちろん生まれる音は変わってきます。だから求める音の正解は、昨日と今日では違う「答え」になって当然なんですよね。それくらい音というものは繊細なものだと思っています。
自分が聴こえているものだけじゃなく、自分にも聴こえてない音もあると思うし、それは耳の問題というよりは、聴いた人が感じたものが、その人の音になっていくからなんですよね。
そういう意味では、音というのは自由で、正しい答えはないのでしょうね。だから僕は「音」で表現する「音楽」をやり続けていくのだと思います。
「音遊人」という文字をパッと見た時に「人」という字に意識がいき、そして「自分だな」と思いました。例えばフラストレーションがたまってイライラして「ワア~ッ!」って怒鳴りたくなったりしても、「ワアァァァァ~♪」って音楽のように表現できれば、なんか芸術家みたいじゃないですか。そんなことができたら楽しいだろうなって……そう思えるということは、きっと僕が「音遊人」だからなのではないでしょうか。
そういえば大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観たとき、あんなに自分の命をかけて音楽に生きようとするフレディ・マーキュリーの姿を見て刺激を受けたんです。同じ音楽に携わっている者として、自分自身にさまざまなことを問いかけ、今の日本の音楽シーンで自分の人生をかけて音楽をやっている人って何人いるだろうなって思ったりしました。やはり、せっかく音楽の仕事に就いたのだから、聴いてもらう人の心に何かを感じてもらうこと、それにひたむきになるべきじゃないかなって……。
あの映画を振り返ると、フレディの周りは金やドラック、いろんなものが渦巻いているじゃないですか(苦笑)。そういう渦巻いているものが雲だとしたら、その雲を突き抜けて、限りなくキレイな空の中にいて音で遊んでいる人……そんなイメージですね、僕の思う「音遊人」は。
中川晃教〔なかがわ・あきのり〕
シンガーソングライター、俳優。2001年、自身の作詞作曲による『I Will Get Your Kiss』でデビュー。同曲にて第34回日本有線大賞新人賞を受賞。2002年、ミュージカル『モーツァルト!』の主演に抜擢され、初舞台で第57回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞をはじめ、数々の賞を受賞。舞台、ドラマ、コンサートなど、さまざまなエンタテインメント分野で活躍を続けている。
中川晃教オフィシャルサイト http://www.akinori.info/