Web音遊人(みゅーじん)

Pacifica

「自分の音」に向かって没入できる演奏性と表現力/エレキギター「Pacifica」

その登場から約30年、ヤマハのエレキギターの中核をなすシリーズ、Pacifica。「Pacifica Professional」と「Pacifica Standard Plus」は、プロユースにも対応する待望の上位モデルだ。

満を持して登場したフラッグシップモデル

エレキギターほどその評価が難しい楽器はないかもしれない。楽器そのものの作りの精度(木工の技術)、弦をはじいた音を拾うマイク(ピックアップ)の性能、そしてボリュームやトーンなどのコントロール部の性能(電装部品に関する技術)、はてはアンプやエフェクターなどギター本体ではない周辺機材の選び方や組み合わせ方など、楽器の音を左右する要素があまりにも多いのだ。逆にいえば、それだけプレイヤーにとっては音づくりの幅が広い楽器ともいえる。

ヤマハは1960年代からエレキギターの製造・販売を開始し、SGシリーズを筆頭に、常に時代のニーズを感じ取り、それを反映させたモデルを世に送り出し続けている。現在ではREVSTARPacifica、このふたつのシリーズが大きな柱だ。

2016年に登場したREVSTARは、強いて分類するならばロックに向いたギターで、エントリーモデルからプロユースに対応するハイエンドモデルまでがラインアップしている。対してPacificaは、演奏する音楽ジャンルを問わない汎用性の高いシリーズ。1990年に登場し、幾度かの変遷を経て、2011年にリニューアルされたものが現在のラインアップのベースになっている。

今回紹介する「Pacifica Professional」と「Pacifica Standard Plus」は、それまでエントリー~中級モデルで構成されていたPacificaシリーズの最後のピースともいえる、待望の最上級モデルなのである。

プレイヤーが演奏に没頭できるエレキギターを追求

今回、話を聞いたのは、アメリカのギター事業子会社で製品全体の企画を担った太田裕介さん、浜松の本社で製品の詳細な仕様を決めたり、工場に出向いて生産のサポートをしたりするなど開発全般に関わった田代健樹たつきさん、同じく本社でエレキギターの音色について研究を行った石坂健太さんの3人。まず、開発の背景について聞いた。

Pacifica

写真左から、太田裕介さん(商品企画担当)、田代健樹さん(開発担当)、石坂健太さん(研究開発担当)。今回の企画開発に関しては、時期がコロナ禍と重なったこともあり、コミュニケーションの面で苦労した反面、今後の開発の進め方へのノウハウを蓄積することができたという。

企画のスタートは2019年で、プロを含めたユーザーにインタビューを行い、彼らがエレキギターに求めるものを探るところから始めたという。
「その結果、みなさんそれぞれ使う言葉が違えども、“演奏に没入できる”ということを重要視していることがわかりました」(太田さん)

余計なことを考えずに、目の前の演奏に集中できる。つまり、意図した音が瞬時に出せたり、演奏にストレスを感じたりしないギター、ということだろう。このコンセプトを前提として開発された「Pacifica Professional」と「Pacifica Standard Plus」の特徴を紹介していこう。

Pacifica

写真左から、Pacifica Professional<PACP12>温かみのあるトーンが特徴のローズウッド指板。カラーフィニッシュは4色から選択可能、同<PACP12M>歯切れのよい明るいトーンが特徴のメイプル指板。カラーフィニッシュは3色から選択可能、Pacifica Standard Plus<PACS+12>ローズウッド指板。カラーフィニッシュは4色から選択可能、同<PACS+12M>メイプル指板。カラーフィニッシュは3色から選択可能。

まず音に関しては、新たに開発したピックアップ「Reflectone」(リフレクトーン)が採用された。ナチュラルなクリーントーンから、パワフルかつクリアなサウンドまで、とにかくレンジが広い。まさに演奏者の意図に忠実な音を出せるピックアップで、これはマイクプリアンプやミキサーなどをはじめとするオーディオ機器で知られるルパート・ニーヴ・デザインズ社との共同開発によるものである。
「オーディオ機器で使うトランス(変圧器)とピックアップの原理に共通部分があるんです。ルパート・ニーヴ・デザインズ社には趣味でギター用のピックアップを手づくりしている方もいて、試作を見せていただく機会があったのですが、それがPacificaに合いそうなものだったんです」(石坂さん)

また、弦をはじく音をピックアップが拾うとはいえ、いい音を出すにはギター本体の“鳴り”も重要な要素。今回のPacificaでは、REVSTARの開発に用いた設計プロセス「アコースティック・デザイン」により、3Dモデリングを駆使したシミュレーションを重ねることでボディの鳴りを最大限に高める形状と構造を模索していった。こうした部分はエレキギターの世界でも職人の勘に頼るメーカーが多いなか、ヤマハの科学的なアプローチは総合楽器メーカーならではの多岐にわたるデータの集積が可能にするもので、特筆に値する。

【進化のポイント1】弾き手の表現欲求に応える再現力
ボディ構造とピックアップは、エレキギターのサウンドにとって重要なポイント。「Pacifica Professional」と「Pacifica Standard Plus」は、音づくりからピッキングによる細かなニュアンスまで、自分の理想のサウンドを追求したいギタリストを念頭に置いて開発された。

●新開発のピックアップ「Reflectone」
プレイヤーが表現したいニュアンスを汲み取り、ゲインを高くしても高域まで的確に再現する。またエフェクターの乗りも良く、とにかく素直なのが特徴だ。フロントから順にシングル、シングル、ハムバッキング(SSH)という構成も幅の広いサウンドメイクを可能にしている。Pacifica

●「アコースティック・デザイン」によるボディ構造
さまざまなギターの構造を科学的に解析してデータを蓄積し、シミュレーションを駆使することで、最適な鳴りやサステインを生み出せるようにボディ構造を作り込んでいった。具体的にはボディ内部にスリット(溝)を入れたりしている。Pacifica

常に奏者のニュアンスをアウトプットできる“道具”として

ボディやネックの形状も、従来のPacificaから大幅に進化した。もともと弾きやすいと評判の高かったボディ形状からさらに改良を重ね、コンターの削り具合やネックとボディの接合部を滑らかにすることで、さらなる演奏性の高さを実現した。
「“演奏に没入できる”というコンセプトの実現に向けて、アコースティック・デザインによる鳴りの良さと、演奏性の高さを両立できるようにバランスを取りながら設計したことに加え、ネックに関してはプロのアーティストに試奏・評価をしていただきながらシェイプを絞り込んでいきました」(田代さん)

現在は音楽ジャンルの多様化により、ギタリストも多彩なプレイスタイルが求められたり、ライブやスタジオのみならず、DTMなどギターを使う場が多くなったりしている。
「どんなジャンルでも、どんな場所でも、プレイヤーの理想とする音、そしてピッキングの微妙なニュアンスまで再現できるギターが完成しました。プロのアーティストが“道具”として使えるこの2本がPacificaのラインアップに加わって、ようやくPacificaシリーズとしてのスタートラインに立てたと思います。そして、これらのギターを手にとった方々によって新しい音楽が生み出された瞬間が、私たちの目的が達成されたときだと考えています」(太田さん)
「ここ10年のPacificaシリーズでは、初めてプロユースの価格帯の製品を生み出すことができました。これまでギター製作で培ってきたノウハウを注入し、みなさんが演奏に没入できるクオリティのギターになりました」(田代さん)
「ご存じのとおり、ヤマハはピアノをはじめとするさまざまな楽器の開発を行っています。その過程で蓄積された多くの知見を、このギターにも注ぎ込んでいます。長く使い込んでいけるギターなので、愛され続ける楽器になったらいいな、と思います」(石坂さん)

ふたつの新モデルがこれから音楽シーンの中でどのように使われていくのか。その可能性に期待が高まる。

【進化のポイント2】パフォーマンスに没頭できる高い演奏性
ネックの形状やボディとのジョイント、そしてボディのコンター加工は、エレキギターの弾きやすさに大きく影響する。従来のPacificaも弾きやすさには定評があったが、さらなる改良の結果、いつまでも弾いていたくなるような快適な演奏性を獲得した。

●スリムCシェイプネック
ネックの形状は演奏性にダイレクトに影響する重要な部分。プロ奏者の意見を取り入れながら作られたスリムCシェイプネックは、まるで最初から自分のために作られたかと思ってしまうほど違和感なく握ることができる。Pacifica

●カーブドネックジョイントヒール
ハイポジションを使ったソロ演奏は、エレキギターの醍醐味のひとつ。ボディとネックのジョイント部分がスムーズに流れるカーブドネックジョイントヒールを採用し、ストレスなくハイポジションに移動できる。Pacifica

●新設計のボディコンターデザイン
ピッキングの際に腕が乗る部分や、胸に当たる部分を削って弾きやすくするコンター加工。新設計のボディコンターデザインにより、抱えると実際のボディサイズよりも小さく感じてしまうほどの快適さ。プロのみならず初心者にも向いていそうだ。Pacifica

●コンパウンドラディアス指板
ギターの指板は、よく見ると真ん中が高くなり、弧を描いている。コンパウンドラディアス指板とは、弧の形状が位置によって異なる形状のこと。簡単にいうと、ローフレットではコードを押さえやすく、ハイフレットではソロが弾きやすくなっている。
※「Pacifica Professional」のみの特徴。Pacifica

【進化のポイント3】シティポップにインスパイアされたカラーラインアップ
ブラックメタリックやデザートバーストといったエレキギターの定番色に加え、アッシュピンクやビーチブルーバーストといったポップで明るいカラーリングも目を引く。これは日本とアメリカで開発されたPacificaシリーズの歴史に、アメリカのポップミュージックを日本流に解釈してオリジナルなジャンルとして花開いたシティポップとの共通性を感じて編み出されたものだ。シティポップのレコードジャケットをイメージしながらカラーリングを絞り込んでいったという。Pacifica

■Pacifica Professional

プロフェッショナルなギタリストの自己表現を完璧にサポート。コンパウンドラディアス指板、そして個体ごとに最適の鳴りを実現するべくイニシャル・レスポンス・アクセラレーション(I.R.A.)処理を施したフラッグシップモデル。日本の工場で製造され、職人たちの技術もふんだんに取り入れられている。
Pacifica Professionalの詳細はこちら

■Pacifica Standard Plus

モダンなサウンドメイキングを求めるギタリストのベストパートナー。リーズナブルな価格ながら「Pacifica Professional」とほぼ同等のスペックを実現した。ステンレスフレットの採用により、チョーキングもスムーズなうえ、フレット交換の手間も省けるのがうれしい。
Pacifica Standard Plusの詳細はこちら

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