今月の音遊人
今月の音遊人:佐渡裕さん「音楽は、“不要不急”ではない。人と人とがつながり、ともに生きる喜びを感じるためにある」
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2019年7月にユネスコの世界文化遺産に登録されて話題となった「百舌鳥・古市古墳群」。このうち44基の古墳を有する、百舌鳥古墳群があるのが大阪府南部の堺市だ。室町時代から江戸時代初期にかけては日本有数の貿易・商業・文化都市として君臨したという街でもある。
その中でも、市役所ほかの官公庁舎や商業施設などが集まる南海電鉄高野線の堺東駅周辺は、かつて賑わった港湾部から離れているものの現在の中心地であり、堺市全体および泉州地区(大阪府西南部)ほか周辺のエリアから多くの人が集まる。
この堺東駅から徒歩で8分ほどの「フェニックス通り」と呼ばれる幹線道路沿いに建ち、2019年10月1日にグランドオープンしたのが「フェニーチェ堺」(堺市民芸術文化ホール)だ。
2,000席を有するプロセニアム型(劇場型)の大ホール、312席を有するシューボックス型の小ホールほか、完全防音であるため小規模のコンサートも開催可能な大スタジオ、講演会や展示会などができる空間など、幅広い用途に対応した多目的施設である。
「南大阪にあるホールの中でも2,000席という規模の大ホールは唯一ですし、国内外のオーケストラ公演ができる音響の素晴らしさも特筆すべきものとのお言葉もいただいております。大ホールではオーケストラやオペラ、バレエ、ミュージカルなど多彩な公演ができ、小ホールでは室内楽や小規模のコンサートほか、演劇、文楽(人形浄瑠璃)などの伝統芸能も公演をしますので、幅広いお客様に喜んでいただけるのではないでしょうか」(同館スタッフ 山田晃平さん)
大ホールは4階席・3層(2〜4階)のバルコニー構造であり、ステージと客席の距離が近く設計されている。また客席(シート)の配置もステージの間口に対して平行ではなく、中心部を軸として緩く湾曲しており、来場者の視点を考慮した設計だといえるだろう。 ちなみに館名にある「フェニーチェ(Fenice)」とは、フェニックス(不死鳥)を表すイタリア語。豊臣家が滅亡した大坂夏の陣や太平洋戦争時の空襲で街の多くが焼かれながらも“不死鳥のように”蘇ったという歴史をもつ堺の、誇りと心意気を象徴するような言葉だ。2014年に約半世紀の歴史を閉じた「堺市民会館」の跡地に建てられたという意味においても、新しい時代を築き上げていくランドマーク的な施設だといえる。
「大阪市内にも有名なコンサートホールは多数ありますが、その多くは北部や中心部にあり、南部からは、やや遠いという印象でした。堺を含む泉州地区は大阪の中心部に通勤・通学する住民のベッドタウンとして賑わっており、堺市だけでも約83万人が生活をしています。住民の皆様にさまざまな芸術文化を体験いただき、豊かな生活を送っていただくことがフェニーチェ堺の役目であり、これまでは大阪市内に足を延ばさないと聴けなかったコンサートなども、ここで楽しんでいただけるでしょう」(山田さん)
グランドオープン以降は、ホールの音響を堪能できる多種多様なクラシックのコンサートはもちろん、ジャズやポップスの人気ミュージシャンのコンサート、落語・歌舞伎・文楽といった日本の伝統芸能、バレエ・ダンス公演など、開館にふさわしい豪華なラインナップが予定されている。チケットの先行予約などができる無料登録制の「sacayメイト」の登録者数も開館前にもかかわらず28,000人を突破しており、期待が高いことの証明だろう。
「どれだけ堺市民の皆様や周辺地域の方々に愛していただけるかを考え、早い段階から広報誌などでさまざまな情報を公開してきました。通常であれば非公開の音響測定会にも市民の方に参加していただくようイベント化したり、小ホールでは試演会も兼ねたコンサートもしました。堺は吹奏楽も盛んですから、地元の素晴らしい学校や団体にもコンサートをしていただきたいですし、大阪が発祥の地である文楽も続けていくつもりです。小ホールには文楽の太夫と三味線が座る文楽廻しを仮設できるようになりましたので(ステージ上手の壁に開口部がある)、地元の団体などにどんどん活用していただき伝統芸能の発信地になればいいですね。堺は中世の頃から武士の戦いの中で独立性を保ち、その豊かな経済力で文化を育んできました。その精神はフェニーチェ堺にも生きています」(エグゼクティブ・プロデューサー 佐野光德さん)
また堺には、芸能・芸術ばかりでなく歴史的建築物・工芸品など世界に誇れるものがたくさんある。建物に足を踏み入れたところに広がるガレリア(通路)や屋上庭園、隣接する公園などを活用してこうした建築物紹介のイベントや各種ワークショップを開催するなど、みんなが共有できる場にしていきたいという。
所在地:大阪府堺市堺区翁橋町2-1-1
TEL:072-228-0440(代表)
ホール形式:プロセニアム形式
席数:2,000席(車椅子12席含む)
詳細はこちら
文/ オヤマダアツシ
photo/ 石川拓也
tagged: 大阪, ホール自慢を聞きましょう, フェニーチェ堺
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