Web音遊人(みゅーじん)

ドラムとギターの斬新なデュオSusiがジャズの可能性を切り拓く/渡辺香津美インタビュー

世界的に活躍するジャズ・ギタリスト、渡辺香津美が、40年来の盟友であるドラマー、山木秀夫と組んだデュオ、Susi。ふたりが生みだす音楽は、ジャズの更なる可能性を感じさせるスリルに満ちたものとなった。

軽井沢の緑に囲まれて収録した新作『Stay Forest』

2021年でデビュー50周年を迎える渡辺が、ちょうど40年前の1981年に結成したのがKazumi Band。結成の年に『頭狂奸児唐眼(とうきょうがんじがらめ)』、そして翌82年には『ガネシア』とエネルギッシュな話題作を次々と発表したが、その屋台骨を支えたのがドラマーの山木だった。以来、ふたりは共演こそすれ、デュオとしてガッチリと組むのはこれが初めてなのだという。その理由を「お互いに忙しかったから」と、渡辺は笑う。
「彼は福山雅治さんのバンドをはじめ、いろんなアーティストのサポートで引っ張りだこの人気ドラマーですしね。それが2020年のコロナ禍で、ふたりとも予定されていた公演がことごとくキャンセルになってしまって。それで『久しぶりに会おうか』ということになったんです。お互いに新しい表現方法を模索している時期だったこともありますし」
最初は山木の自宅のスタジオへ。そこで試したセッションに手ごたえを感じ、続きは渡辺が軽井沢に建てたアトリエでやろう、と話は進んでいった。山木はそこに自身のドラムセットを持ち込んだ。2020年、秋のことだ。
「最初は室内のスタジオでやろうかと思ったんだけど、天気がよくて、外に出ると気持ちいい。試しにバルコニーで音を出してみたら、もう最高(笑)。『ここで収録しよう!』と決めました」
そうして録った3曲に、ふたりのトークセッションを加えた音楽映像作品が、『Stay Forest』なのだ。

ドラマー山木秀夫(写真左)

オーガニックなサウンドの鍵はヤマハのナイロン弦ギター「NCX5」

木の葉が揺れる音まで聴こえてきそうな、爽やかな秋の光の中、渡辺が操るナイロン弦ギターの音色に、山木のドラムが呼応する。ふたりが生みだすサウンドは大地にしかと根を下ろすようでいて、だけど空中をたゆたうようでもあり、お互いに離れたり絡み合ったりしながら、やがて空に消えていく。一発録りならではの緊張感と、ふたりの熱量の高さが、ジャズという音楽の醍醐味を視聴する者に改めて教えてくれるようである。
山木のスタジオでのセッションはエレクトリック中心だったというが、「『Stay Forest』では、軽井沢の森のようなオーガニックな感じを出したかった」という渡辺は、3曲中2曲でナイロン弦ギターを使用した。そこで選んだのがヤマハのNCX5。新開発のピックアップシステムAtmosfeel™(アトモスフィール)とカッタウェイで高い操作性を実現したモデルである。
「全体的なサイズ感やネックの太さ、指板の幅はクラシックギターなんだけど、弦高を低めにセッティングしてあるのでアドリブも演奏しやすいし、いろんなタイプの音楽に使えるギターだと思います。エフェクトも乗りやすく、今回も隠し味的にいろいろ使っていますよ。幅の広い音作りが楽しめる新しいタイプのナイロン弦ギターですね」

今後はロックなアプローチも!?渡辺香津美が見据えるSusiの未来

「今回、収録したのは3曲だけど、実はほかにも当日に録った面白いテイクがあるので、どこかのタイミングで発表するかもしれません。実は、NCX5でも歪みを試してみたのですが、なかなか面白い音色が作れましたよ」
アルバムではオーガニックな音色を追求したが、それとは真逆の、歪み満載のロック的な音作りも試みていた渡辺。いやがうえにも期待は高まる。
2021年でデビュー50周年を迎え、記念のコンサートシリーズKW50も展開している渡辺だが、絶えず好奇心を持って新たなサウンドを探求するどん欲な姿勢には、本当に恐れ入る。Susiというネーミングには、日本から新しいフリースタイルのジャズを発信するという想いが込められているのだが、日本を代表する食べ物Sushiのスペルからあえて〈h〉を省くことで、ユニバーサルで斬新な感覚をまとっている。
「音源を聴いたり、ライブを観ていただいたりした方が、自由にイマジネーションを膨らませられる名前なんじゃないかな、と思います」
現在はライブ、あるいはそのさらに先を見据えてアイデアをため込んでいるという渡辺。Susiによるジャズの可能性を探る旅は、まだ始まったばかりである。

■インフォメーション

アルバム『Stay Forest』


発売元:GRACIM RECORDS
発売日:2021年4月16日
価格:1,200円(税込)
詳細はこちら

デビュー50周年記念のコンサートシリーズ『KW50』

●KW50 渡辺香津美ソロ フィンガープリンツ
日時:2021年7月4日(日)14:00開演(13:30開場)
会場::玉島市民交流センター 湊ホール(岡山県)
●サマーナイト・ジャズ渡辺香津美KW50「トワイライト・ジャム」
日時:2021年7月24日(土)17:00開演(16:00開場)
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川県)

渡辺香津美 meets 押尾コータロー

日時:2021年7月10日(土)14:00開演(13:15開場)
会場:東京文化会館小ホール
出演:渡辺香津美、押尾コータロー
詳細はこちら

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