今月の音遊人
今月の音遊人:大西順子さん「ライブでは、練習で考えたことも悩んだことも全部捨てて自分を解放しています」
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オカリナと聞いてどんなイメージを抱くだろう。素朴で温かな音?癒やされる?それだけではないことを教えてくれるのが、オカリナ、クラシックギター、ピアノのトリオ、「Kakky(カッキー)」だ。この日練習していた曲は、プッチーニ作曲のオペラ『トゥーランドット』のアリア『誰も寝てはならぬ』。クラシックギターとピアノの伴奏に乗ったオカリナの音色はダイナミックで、壮大なスケールを感じさせた。
オカリナを繰るのは、ユニット名にもなっているカッキーこと垣花樹(かきのはなたつる)さん。介護士として働きながら、音楽活動を行っている。実は、かつてはビジュアル系アマチュアバンドのボーカリストをしていたそう。そんな彼がなぜオカリナを?
「入院していたとき、病床でたまたまオカリナのCDを聴いたんです。やってみたいなと思いました」
その後、オカリナを購入して、すっかりハマってしまい、プロ演奏家のレッスンを受けた。
「オカリナはシンプルな楽器ですが、サクソフォンやフルートなどの管楽器にも負けない力強さがあると感じました」
ひと口にオカリナといっても、多くの種類がある。この日、垣花さんが使用していたオカリナのひとつは、最大3オクターブもの音域が出せる。奏者の技術・音楽性で多彩な表現が可能になるのだ。
オカリナのユニットを結成したのは2014年。クラシックギター担当で、垣花さんの奥様でもあるルツさんとの結婚式がきっかけだった。
「ゲストへのサプライズとして、オカリナと伴奏というスタイルで、夫婦ふたりで演奏したんです。それで終わる予定だったのですが、演奏を聴いた知人から声がかかり、コンサートに出ることになりました。その後、さまざまな依頼が来るようになって」(ルツさん)
そう振り返るルツさんは、当初はクラシックギター、ピアノ、ときにはオカリナも担当。そして、2017年からピアノ担当として大井麻衣さんが加わった。
「人前で弾くのが苦手だったのですが、楽しくなりました。オカリナとぴったり合ったときは幸せだなと感じます」(麻衣さん)
主な活動は首都圏を中心とした福祉施設や病院、チャリティーイベント、ライブでの演奏。ボランティア専門の掲示板やフェイスブック、ブログを通じての依頼に加え、再訪の依頼も多い。埼玉県のボランティアアーティストにも登録している。それぞれの仕事の合間をぬって月に7公演を行ったこともあり、大忙しだ。
レパートリーはクラシック、ジャズ、ポップス、民謡、童謡など幅広く、訪問先や季節に合わせてプログラムを組む。ただ聴いてもらうだけでなく、一緒に歌ったり踊ったりと聴き手が存分に楽しめるステージが真骨頂。トークも交え、客席には笑顔が絶えない。
「ボランティアではあるのですが、逆に励まされたり元気をもらったりして帰ってくる感じです」(ルツさん)
3人が顔を合わせての練習は2か月に一度ほど。「楽器可」の条件を優先して物件探しをした垣花さん夫妻の自宅がふだんの練習場だ。合同練習のほかは、動画を共有して、その動画に合わせて各自で練習をする。
「みんな性格がまったく違うから、逆になんだかまとまる」と笑う3人には、共通の思いがある。それは自分たちが“演奏を楽しむ”こと。自分たちが楽しめば、それが聴き手に伝わり、楽しんでもらうことができる。
「オカリナのすばらしさを広めたいという気持ちも強いです。そのためにも、今後は単独のコンサートもやりたいですね。エレキギターとロック調のオカリナ演奏なんかもできたら……」(垣花さん)
多くの可能性を秘めたオカリナという楽器と、「Kakky」というユニット。これからもたくさんの人たちに笑顔を届けることだろう。
●バンド名:Kakky(カッキー)
●結成時期:2014年
●モットー:音楽を楽しむ
●練習頻度:個人練習が中心。3人での合同練習は2か月に一回程度。
●平均年齢:36歳
●メンバー:垣花 樹(オカリナ)垣花 ルツ(ギター)大井 麻衣(ピアノ)
●活動内容:福祉施設、病院、チャリティーイベント、ライブハウスなどでの演奏。
文/ 福田素子
photo/ 坂本ようこ
tagged: アマチュアミュージシャン, われら音遊人, Kakky(カッキー)
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