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久留米シティプラザ - Web音遊人

世界的なマエストロが音響を絶賛!久留米の新たな文化発信施設/久留米シティプラザ ザ・グランドホール

福岡県南西部に位置する久留米市は筑後エリアの中核都市であり、ものづくりの精神を受け継いだ産業都市として、また文化の発信地として栄えてきた。活況の中心となっていたのはJR久留米駅と西鉄久留米駅の間、約2kmのエリア(六ツ門地区)だったが、一時期は郊外型の商業施設などが注目されて空洞化してしまう。そうした中、久留米市はコンパクトシティの発想による新しい都市計画を推進。かつて賑わっていたエリアにもう一度活気を呼び込むべく、その中心的な存在として建設されたのが、2016年4月に開館した文化交流施設「久留米シティプラザ」である。

人が集まり、楽しみ、情報を発信する場所として作られたこの施設は、館内にさまざまな空間や機能を有している。クラシックのコンサートや大規模なミュージカルなどを開催・上演できる「ザ・グランドホール」は、客席数1,514席の品格ある空間。ほかにも演劇や演芸などに活用できる客席数399席の「久留米座」や、舞台・客席共に可変式のコンパクトな空間「Cボックス」、さまざまな規模のコンベンションを誘致できる大中小の会議室、市民が発表会などに利用できる「展示室」、茶道ほか和の文化や会合に活用できる和室「長盛」など、まさに文化複合施設と呼ぶのにふさわしい機能が揃っているのだ。さらにはコミュニティFMのスタジオなどもある「六角堂広場」や、子供たちが集う場として作られた無料休憩室「カタチの森」などもあり、まさに「誰もが気軽に立ち寄れる場所」となっている。

もっとも広大な空間となる「ザ・グランドホール」の内部は、落ち着いたブラウンの色調が特徴。4階層の客席(左右のバルコニー席は5階層)によるオペラ劇場的な構造となっており、音響的にも視覚的にも臨場感のあるホールだという印象が強い。エントランスは、工場の街として栄えてきた久留米の歴史を感じさせるデザインとなっており、ホール内部の壁面にも木材(久留米近郊が産地である八女杉)を使ってレンガを積み重ねたような装飾が施されている。さらにはロビーのテーブルや椅子を、家具の街として有名な大川地区(大川市)の製品にするなど、地元の歴史や産業を重んじている施設なのだ。

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(写真左)ザ・グランドホール内のシートも大川地区で生産された製品。(写真右)ロビーのテーブルには、久留米の伝統工芸「籃胎(らんたい)」の美しい模様が施されている。

取材当日はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が日本ツアーの一環としてコンサートを行い、熱心なクラシック音楽ファンが「ザ・グランドホール」の客席を埋め尽くした。指揮者として同行した世界的なマエストロ、ズービン・メータ氏はリハーサルを終え「響きの性質がまったく異なる複数の作品を演奏しましたが、どの曲でもさまざまなパート(楽器)の音がとてもクリアに響いて素晴らしい」とホールの音響を絶賛。コンサートではモーツァルト、ドビュッシー、シューベルトの作品が演奏され、そのどれもが明快なハーモニーとなって客席へ届いた。

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ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団公演で披露されたのは、モーツァルト「『ドン・ジョヴァンニ』K527 序曲」、ドビュッシー「交響詩『海』-3つの交響的スケッチ」、シューベルト「交響曲第8番 ハ長調 D944『グレイト』」の3曲。演奏の余韻に浸るように、拍手がいつまでも鳴り止まなかった。

その「ザ・グランドホール」を設計したのは香山壽夫建築研究所、音響設計にあたったのはヤマハの空間音響グループである。音響設計をリードした宮崎秀生氏は「劇場とシューボックス型ホールの利点を併せもったホールであり、特に5階層のサイド・バルコニーが理想的な音響の実現にひと役買っています。内装デザインも独特で、まさに久留米ならではの魅力が集約されたホールだと言えるでしょう」と評する。

人が集まる街の中にあって、新しい久留米の文化を創造するべく生まれた「久留米シティプラザ」。地元のアマチュア・オーケストラや学校の吹奏楽部、合唱団ほか、多彩な活動を応援しながら「文化発信地」としての実績を積み上げていくことだろう。

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人が行き交う広場からホールへ。ガラス窓を多用し開放的な空間を演出。

■久留米シティプラザ  ザ・グランドホール

所在地:福岡県久留米市六ツ門町8-1
TEL:0942-36-3000
ホール形式:シューボックス型
席数:1,514席(車椅子10席、多目的室4席含む)

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