Web音遊人(みゅーじん)

八代亜紀さん

今月の音遊人:八代亜紀さん「人間だって動物だって、音楽がないと生きていけないと思います」

情感溢れるハスキーな歌声で、人々の心を揺さぶってきた歌手、八代亜紀さん。最近は、演歌歌手の枠を超え、ジャズやブルースでファンの幅を広げています。大ベテランとは思えない明るく気さくな語り口の中に、音楽に対するひたむきな姿勢がにじみます。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

自分の曲じゃダメかしら。「八代亜紀」として歌って48 年目ですから、一番聴いて一番歌った曲はやっぱり八代亜紀の歌でしょう。『なみだ恋』と『舟唄』。『なみだ恋』は最初の大ヒット。『舟唄』は八代亜紀のイメージを変えるために、阿久悠先生がレコード会社から何十曲も却下された末に作ってくれた曲。歌詞を最初の2行読んだだけで大ヒットすると思いました。
でも、私の曲を度外視して選ぶのだったら、『Fly me to the moon』かしら。小学生の時に父が買ってきてくれた、ジャズシンガーのジュリー・ロンドンのLPレコードに入っていた曲です。爽やかで心地良いボサノバのリズムにビックリしました。父は浪曲しか聴かない人だったから、そのレコードは「ジャケ買い」したと思うんです。私は子どもの頃からよく絵を描いていたのですが、ロングヘアーのジュリー・ロンドンが、私の描く絵にとってもよく似ていたんですね。
当時、父は運送会社を経営し始めたので、ガレージに停めたトラックでジュリー・ロンドンを流しながら練習していました。たくさん聴いて、たくさん練習しました。家族の前で「18番!ふらいみーとぅーざむーん、歌いますっ!」なんて、意味も分からないのに歌っていましたね。

八代亜紀さん

Q2.八代亜紀さんにとって「音」や「音楽」とは?

音や音楽がないと人間は生きていけないと思います。だって、ウチの「チビたん」でさえもそうです。「チビたん」って?猫ちゃんです。以前飼っていたヒマラヤン。母がテープで私の曲『舟唄』をかけた時のこと。寝ていたはずの「チビたん」が「ミィミィミィミィミィ!」と走っていって、テープレコーダーを抱きしめたんですよ。面白くて、面白くて。母は「音楽は何でも好きなんじゃない?」と言って、今度はクラシックをかけたんです。そうしたら、全然知らんぷりだったの。また、入れ替えて私の曲をかけたら、やっぱり「ミィミィミィミィミィ!」って。笑っちゃいました。私の声や曲に愛の響きを感じるんでしょうね。動物だって、音楽がないと生きていけないのかもしれません。その時の様子を撮影していたら、ネット上で相当な再生回数だったと思いますよ(笑)。
出先で偶然音楽が流れてくるのはうれしいですね。何気なくコーヒーを飲んだり、みんなと話したりしている時に、ジャズとか流れてくると心が溶けちゃいます。やっぱり、音楽は必要なものですね。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人をイメージしますか?

2018年の冬は平昌オリンピックで盛り上がりましたが、フィギュアスケートを見ている時の私は、まさに「音遊人」でしたね。どの選手も楽しめる素敵な音楽を使っていて、フィギュアと音楽は切っても切れない関係だと思いました。選手たちが美しく躍る姿を見ながら、好きな音楽に心を委ねているとき、音楽で遊んでいるなあという感じがします。
『アランフェス協奏曲』が大好きでリサイタルで歌ったこともあるんですけど、五輪でも誰かが使っていました。やっぱりいいなと思いましたね。
以前行われたフィギュアの大会では、あまり上位の選手じゃなかったのですが『Bensonhurst Blues』という曲が使われていて、私のブルースアルバム『哀歌-aiuta-』にも入れたんです。超かっこいいです!超難しかったですけどね(笑)。フィギュア選手は、羽生(結弦)君も、宇野(昌麿 )君も好きだけど、特にネイサン・チェンが好き。姪の息子にソックリなこともあって、応援しちゃいました。
また、絵を描くためにアトリエに行くときは、移動中の車の中で必ず自分の昔のアルバムをかけるのですが、その時も音と遊んでいるのかもしれません。懐かしんだり、今度のコンサートで歌おうと考えたり。自分の作品に酔えるのは幸せだなと思います。

八代亜紀〔やしろ・あき〕
熊本県八代市出身。1971年デビュー。1973年に『なみだ恋』がヒット。その後、『愛の終着駅』『もう一度逢いたい』『舟唄』など、数々の名曲をリリース、1980年には『雨の慕情』で日本レコード大賞を受賞。芸能生活40周年を迎えた2010年には、文化庁長官表彰を受賞した。歌手活動の一方で、画家としても活躍し、“画家の登竜門”といわれるフランスの美術展「ル・サロン」で5年連続入選を果たす。2012年には、ジャズアルバム『夜のアルバム』を発表、以降は「フジロックフェスティバル」への出演など、幅広いジャンルで活躍。2017年10月に、ジャズアルバム第2弾『夜のつづき』を発売した。
八代亜紀オフィシャルサイト  http://yashiro.mirion.co.jp/

 

特集

出口大地

今月の音遊人

今月の音遊人:出口大地さん「命を懸けて全力で取り組んだ先でこそ、純粋に音楽を楽しむ心を忘れてはいけない」

2928views

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase27)バルトーク「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」、エスノの抽象化とトーキング・ヘッズ

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase27)バルトーク「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」、エスノの抽象化とトーキング・ヘッズ

2045views

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

24532views

楽器のあれこれQ&A リコーダー

楽器のあれこれQ&A

リコーダーを長く楽しむためのお手入れ方法

11856views

大人の楽器練習機

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:世界的ピアニスト上原彩子がチェロ1日体験レッスン

18268views

オトノ仕事人

テレビ番組の映像にBGMや効果音をつけて演出をする音の専門家/音響効果の仕事

5033views

しらかわホール

ホール自慢を聞きましょう

豊潤な響きと贅沢な空間が多くの人を魅了する/三井住友海上しらかわホール

14740views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

9485views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

8949views

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

われら音遊人

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

7665views

山口正介 Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

マウスピースの抵抗?音切れ?まだまだ知りたいことが出てくる、そこが面白い

6212views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32278views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:和洋折衷のユニット竜馬四重奏がアルトヴェノーヴァのレッスンを初体験!

5650views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

25572views

ジャズとデュオの新たな関係性を考える

音楽ライターの眼

ジャズとデュオの新たな関係性を考えるvol.11

4154views

音楽文化のひとつとしてレコーディングを守りたい/レコーディングエンジニアの仕事(後編)

オトノ仕事人

音楽文化のひとつとしてレコーディングを守りたい/レコーディングエンジニアの仕事(後編)

6591views

練馬だいこんず

われら音遊人

われら音遊人:好きな音楽を通じて人のためになることをしたい

6399views

豊かで自然な音と響きを再現するサイレントバイオリン「YSV104」

楽器探訪 Anothertake

アコースティックの豊かで自然な音色に極限まで迫る、サイレントバイオリン™「YSV104」

12740views

札幌コンサートホールKitara - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

あたたかみのあるデザインと音響を両立した、北海道を代表する音楽の殿堂/札幌コンサートホールKitara 大ホール

18968views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

8946views

楽器のあれこれQ&A

エレクトーンについて、知っておきたいことや気をつけたいこと

26928views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11443views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26806views