今月の音遊人
今月の音遊人:大西順子さん「ライブでは、練習で考えたことも悩んだことも全部捨てて自分を解放しています」
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心も体も揺さぶられる、クロスオーバーな音楽が詰まった新アルバム『HOME』で新たなステージへ/m.s.t.インタビュー
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2023.11.14
ピアノ、キーボードの持山翔子と、コントラバス、エレキベースの小山尚希からなるインストユニットm.s.t.が4年振りとなるアルバム『HOME』をリリースした。ジャズをベースにクラシックの要素を取り入れ、叙景的かつスリリングなサウンドを奏でてきたm.s.t.が、今作ではライブ映えするポップで軽快なサウンドを披露。新たなステージへと踏み込んだふたりの“いま”を封じ込めた一枚に仕上がっている。
「いままでどおり“曲を聴かせる”というスタンスは変わっていないのですが、それにプラスして、ライブでも楽しんでもらおうというか。これまでは着席して聴いてもらう曲が多かったイメージがあるので、今回は聴きながら体を揺らしてもらえるような、私たちと一緒により音楽を楽しんでもらえる曲作りを心掛けました」(持山)
2019年にそれまでの集大成的なアルバム『BEST』と、ギターを迎えた新編成によるアルバム『Days』をリリース。そこから気持ちも新たに歩みを進めようとした矢先、コロナ禍に突入。それでも立ち止まることなく、デュオ編成で制作した楽曲を配信リリースしたり、シンガーソングライターの竹澤汀をボーカルに迎えたプロジェクトCinématographe(シネマトグラフ)を立ち上げたりと、今作にたどり着くまでさまざまな活動を続けてきた。
「Cinématographeは竹澤さんが歌詞を書いて、m.s.t.が曲を書くというスタイル。m.s.t.では常にドラムかパーカッションありきで曲作りもライブも行ってきたので、Cinématographeの活動は僕らにとってチャレンジングなものでした。こうした新しい経験を積んで、あらためて自分たちのやりたいものを詰め込んだのが『HOME』というアルバムです」(小山)
温かみのあるピアノの音色と、躍動感あふれるリズムに心が躍るタイトル曲『HOME』で始まり、キーボードとサクソフォンのスタイリッシュでメロディアスな響きがまさにJフュージョンといったおもむきの『Warm-up』へと続く流れを聴いただけでも、m.s.t.がジャズにとらわれないユニットであることがわかる。
「わたしたちの音楽って、ジャズといえばジャズだし、ポップスと捉える人もいるし、“クロスオーバー”という表現をしていただいたこともあって。そうした多様な音楽性がm.s.t.らしさでもあるので、このアルバムでもそれを感じてもらえると嬉しいですね」(持山)
今作のレーベルSpice Up Recordsの主宰者であり、ジャンルに縛られない自由な音楽表現を続けるバイオリニストNAOTOを迎えたラテンナンバー『Con fuoco』では、両者の情熱的な演奏に思わず体を揺らして聴き入ってしまう。
「アルバムに入れる候補曲は20曲くらいあったのですが、NAOTOさんが参加してくれることが決まった瞬間に、“この曲だな”と思いました。NAOTOさんに曲をデータで送ったとき、こちらからはなんの指定もしなかったのですが、いきなり熱いテイクが送られてきて。さすがですよね」(小山)
一方、ジャズやR&Bのフィールドを中心に活躍するボーカリストKOTETSUをフィーチャーした『Today』は、ジャジーなサウンドの中にほんのり漂うソウルテイストがたまらない一曲だ。
「KOTETSUくんとはとても共演数が多いのですが、今回初めて彼のために曲を書き下ろしました。曲調はポップなものを意識しました」(持山)
「“m.s.t.の曲はいつも明るいけど、どこか悲しいよね”と彼がよく言っていて。そんなイメージを歌詞にしてくれました」(小山)
カラフルでドラマチックな楽曲は、ジャズ、クラシック、ポップス……と、いろいろな表情をあわせ持つ。それでいて、どの曲にもユニット結成時から一貫している、“曲を聴かせたい”という想いが共通している。これがアルバム『HOME』を、そしてm.s.t.の音楽を心地よく聴ける最大の要因なのだろう。
「私は4歳のころからヤマハ音楽教室でピアノとエレクトーンを習っていました。教室では作曲も習っていて、以前は演奏するよりも曲を作る方が好きだったんです。音大時代からいろいろなセッションに参加するようになって、そこで多くのプレイヤーを見て、自分もやりたいと思うようになりました。セッションのためにジャズを勉強して、いまでは演奏するのも大好きになったのですが、“曲を聴かせたい”という想いは昔もいまも変わらないですね」(持山)
現在、アルバムリリースを記念したライブツアーを展開しているm.s.t.。今作で彼らに興味を持った人は、ぜひ会場に足を運んでほしい。多様性にあふれ、心も体も揺さぶられるような、あなたにとって新たな“音楽の居場所”が見つかるかもしれない。
発売元:Spice Up Records
発売日:2023年9月27日
料金(税込):3,000円
詳細はこちら
2023年11月22日(水)東京・渋⾕JZBrat Sound of Tokyo
2023年12月9日(土)静岡・袋井MAM’SELLE
詳細はこちら
文/ 飯島健一
photo/ 阿部雄介
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