Web音遊人(みゅーじん)

ゲッゲロゾリステン

われら音遊人:“ルールを作らない”ことが楽しく音楽を続ける秘訣

取材を行ったのは、2023年4月中旬。新緑が美しい仙台の街を抜けて郊外の練習会場に到着すると、「ゲッゲロゾリステン」のメンバーたちが少しずつ集まってきた。月に2回ほど練習日が決められていて、この日は新年度になって初の練習とのこと。皆それぞれ仕事や家庭の事情もあり、最初から全員が集まることは少ないという。何しろ、ゲッゲロゾリステンは30名以上ものメンバーを抱える大所帯の弦楽合奏団なのだ。

結成は1979年!1991年に現在の路線に軌道修正

「以前は15名ほどだった時期もあります。仙台はもともと音楽が盛んな街ですし、人口の増加に伴い弦楽器を演奏する人も増えているのだと思います」とは、代表を務め、第一バイオリンを担当する原新太郎さん。入団してすでに35年以上にもなる生き字引的な存在だ。
結成は1979年。当時は「教会音楽の集い」という名称で、宗教音楽やバロック音楽を演奏し、年に数回の演奏会を開催していた。1988年には「教会音楽アンサンブル」と改称している。

ゲッゲロゾリステン

学校や市民センターなどを中心に、2020年末頃までは月に2回ほどのペースで公演を行っていた。コロナ禍を経て、2022年頃から再び公演依頼も増えてきているという。(写真提供:ゲッゲロゾリステン)

現在の名称になったのは1991年で、同時に楽団のコンセプトも大幅に軌道修正し、主催者のもとに出向いて演奏を行う“出前コンサート”を活動の中心に据えることになった。
「いわゆる定期演奏会を企画して開催していくスタイルだと、チケットを売らなければならないのをはじめ、メンバーにかかるプレッシャーも大きいですよね。それよりも、私たちを必要としている人たちのところに出向いていくほうが音楽を楽しめるはずだ、と考えたのです」
当初は原さんも自ら積極的に営業も行い、学校や地域の施設といった場所で演奏を重ねていった。そのうち口コミに加え、団の活動が新聞で報じられたことも手伝い、「来てくれないか」という声がさまざまな場所からかかるようになった。
「ホテルでのパーティーや結婚式に招待されて演奏したり、珍しいところではお寺に呼ばれたりすることもありました。そして、活動を広げていくと同時に、聴く人に合わせた新しいレパートリーの開発も行うようになりました。従来のクラシック曲に加え、テレビ番組のテーマ曲や映画やミュージカルの曲、ポップスから童謡まで、これまで450曲ほどの作品を演奏してきました。もちろん現在でも新しいレパートリーは増え続けていますよ」

音楽で人に喜んでもらう楽しさも追求したい

練習は夕方の7時ぐらいから始まった。最初は集まったメンバーがそれぞれ音出しや個人練習をして、30分ぐらいしたら全員で合わせるのがいつものパターンだという。この日は、6月に市内の市民センターで予定されている演奏会の準備がメインで、ミュージカル『オペラ座の怪人』からの曲をはじめ、レパートリーの確認をしていった。原さんが全体を見ながらメンバーを引っ張っていく。演奏に関する細かい部分の指摘はあれど、皆、終始笑顔で、リラックスした雰囲気で進んでいくのが印象的だった。

ゲッゲロゾリステン

ゲッゲロゾリステンは指揮者を置かないスタイル(左の写真で立っているのはボーカリスト)。「ゾリステン」というのはドイツ語で「独演者」のこと。「ゲッゲロ(göggero)」というのは、「カエルの鳴き声がモチーフ」、「ウムラウトをつけたかっただけ(笑)」、「そういう名前の大道芸人から取った」など諸説アリ?

「この楽団では、練習は“義務”ではなく“権利”みたいなものなんですよ」と原さんは笑う。演奏以外でも、基本的にメンバーの自主性を尊重しているという。
「多くのメンバーをまとめるには、ルールを作ってそれを守る、という方法が簡単だと思うのですが、私たちは逆に決まりごとを作らないようにしているんです。そのほうがみんな誰に頼ることなくしっかりすると思いますので」
この日の練習は、見学にやってきた入団希望者がそのまま演奏に参加したり、「家庭の事情で3年間休んでいた」というメンバーが久々に復帰したり、とにかく賑やかで、風通しの良さが印象に残った。
「メンバー全員が、活動を通じて、音楽の楽しさはもちろん、音楽で人に喜んでいただくことの楽しさも感じてくれたらうれしいですね」
ゲッゲロゾリステンは、これからも音楽を必要とする人のために、楽しく自由に活動を続けていく。

ゲッゲロゾリステンのQ&A

Q.メンバーにはどんな人がいる?
学校の先生や公務員、会社員、主婦、学生まで、いろんな方がいます。ちなみに代表の原は、今年の3月まで小学校の校長先生でした。近年は学生さんや、転勤で仙台にやってきた会社員の方がメンバーになるケースが多いです。親子2代でメンバーになっている方もいますよ。

Q.コンサートで心がけていることは?
特に子どもに聴かせるときに多いのですが、できる限り参加してもらうようにしています。歌ってもらったり踊ってもらったり、クイズを出して答えてもらったり。プロジェクターで映像を流すときもあります。メンバーには学校の先生もいますので、授業でやっていることを公演で活かしたり、逆に公演でやってみたことを授業に取り入れたりもしています。

バンド紹介

●バンド名:ゲッゲロゾリステン
●結成時期:1979年
●活動内容:仙台市を中心に活動する弦楽合奏団。バロック・古典派音楽から映画音楽・ポップス、童謡、アニメソング、メンバー作曲のオリジナル曲まで幅広いレパートリーを持つ。依頼に応じて“音楽の出前”を行う。コロナ前は平均して月に2回の公演を行っていた。指揮者を置かず、メンバーの自主性を尊重して音楽を作るのがモットー。
●練習頻度:2週間に1回のペースで、市内の市民センターで練習。
●年齢構成:20~60代
●メンバー:バイオリン14名、ビオラ7名、チェロ6名、コントラバス1名、パーカッション1名、ボーカル2名 計31名(2023年1月現在)
オフィシャルサイト

仕事を持ちながら音楽を楽しむ「われら音遊人」大募集!

音楽情報誌「音遊人」とWebマガジン「Web音遊人」にご登場いただける、仕事をしながら活動を続けているアマチュアバンドや楽団を募集しています。ジャンルは問いません。ぜひ、取材にご協力ください。
詳細はこちら

photo/ 阿部雄介

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人:清水ミチコさん「歌モノのネタができることは自分にとって強みです」

今月の音遊人

今月の音遊人:清水ミチコさん「ピアノをちょっと絶ってみると、どれだけ自分に必要かわかります」

19520views

音楽ライターの眼

連載42[ジャズ事始め]『ランドゥーガ〜セレクト・ライブ・アンダー・ザ・スカイ’90』解説その2

1183views

楽器探訪 Anothertake

ピアノならではのシンプルで美しいデザインと、最新のデジタル技術を両立

6452views

楽器上達の心強い味方「サイレント™シリーズ」&「サイレントブラス™」

楽器のあれこれQ&A

楽器上達の心強い味方「サイレント™シリーズ」&「サイレントブラス™」

37806views

ホルンの精鋭、福川伸陽が アコースティックギターの 体験レッスンに挑戦! Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ホルンの精鋭、福川伸陽がアコースティックギターの体験レッスンに挑戦!

10508views

オトノ仕事人

コンサートの音の責任者/サウンドデザイナーの仕事

11733views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

22955views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6457views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

29749views

練馬だいこんず

われら音遊人

われら音遊人:好きな音楽を通じて人のためになることをしたい

5706views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

5048views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29023views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

13044views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

18871views

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.1

音楽ライターの眼

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.1

12610views

オトノ仕事人

あらゆるトラブルに対応できる、優れたリペア技術者を世に送り出す/管楽器のリペア技術者を育てる仕事

5282views

われら音遊人

われら音遊人:みんなの灯をひとつに集め、大きく照らす

5347views

NU1XA

楽器探訪 Anothertake

アコースティックピアノを演奏する喜びをもっと身近に。アバングランド「NU1XA」

2223views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

11173views

山口正介さん

パイドパイパー・ダイアリー

「自転車を漕ぐように」。これが長時間の演奏に耐える秘訣らしい

5878views

楽器のあれこれQ&A

目指せ上達!アコースティックギター初心者の練習方法とお悩み解決

96830views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6457views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29023views