今月の音遊人
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われら音遊人:“ルールを作らない”ことが楽しく音楽を続ける秘訣
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2023.6.12
tagged: アマチュアミュージシャン, われら音遊人, ゲッゲロゾリステン
取材を行ったのは、2023年4月中旬。新緑が美しい仙台の街を抜けて郊外の練習会場に到着すると、「ゲッゲロゾリステン」のメンバーたちが少しずつ集まってきた。月に2回ほど練習日が決められていて、この日は新年度になって初の練習とのこと。皆それぞれ仕事や家庭の事情もあり、最初から全員が集まることは少ないという。何しろ、ゲッゲロゾリステンは30名以上ものメンバーを抱える大所帯の弦楽合奏団なのだ。
「以前は15名ほどだった時期もあります。仙台はもともと音楽が盛んな街ですし、人口の増加に伴い弦楽器を演奏する人も増えているのだと思います」とは、代表を務め、第一バイオリンを担当する原新太郎さん。入団してすでに35年以上にもなる生き字引的な存在だ。
結成は1979年。当時は「教会音楽の集い」という名称で、宗教音楽やバロック音楽を演奏し、年に数回の演奏会を開催していた。1988年には「教会音楽アンサンブル」と改称している。
現在の名称になったのは1991年で、同時に楽団のコンセプトも大幅に軌道修正し、主催者のもとに出向いて演奏を行う“出前コンサート”を活動の中心に据えることになった。
「いわゆる定期演奏会を企画して開催していくスタイルだと、チケットを売らなければならないのをはじめ、メンバーにかかるプレッシャーも大きいですよね。それよりも、私たちを必要としている人たちのところに出向いていくほうが音楽を楽しめるはずだ、と考えたのです」
当初は原さんも自ら積極的に営業も行い、学校や地域の施設といった場所で演奏を重ねていった。そのうち口コミに加え、団の活動が新聞で報じられたことも手伝い、「来てくれないか」という声がさまざまな場所からかかるようになった。
「ホテルでのパーティーや結婚式に招待されて演奏したり、珍しいところではお寺に呼ばれたりすることもありました。そして、活動を広げていくと同時に、聴く人に合わせた新しいレパートリーの開発も行うようになりました。従来のクラシック曲に加え、テレビ番組のテーマ曲や映画やミュージカルの曲、ポップスから童謡まで、これまで450曲ほどの作品を演奏してきました。もちろん現在でも新しいレパートリーは増え続けていますよ」
練習は夕方の7時ぐらいから始まった。最初は集まったメンバーがそれぞれ音出しや個人練習をして、30分ぐらいしたら全員で合わせるのがいつものパターンだという。この日は、6月に市内の市民センターで予定されている演奏会の準備がメインで、ミュージカル『オペラ座の怪人』からの曲をはじめ、レパートリーの確認をしていった。原さんが全体を見ながらメンバーを引っ張っていく。演奏に関する細かい部分の指摘はあれど、皆、終始笑顔で、リラックスした雰囲気で進んでいくのが印象的だった。
「この楽団では、練習は“義務”ではなく“権利”みたいなものなんですよ」と原さんは笑う。演奏以外でも、基本的にメンバーの自主性を尊重しているという。
「多くのメンバーをまとめるには、ルールを作ってそれを守る、という方法が簡単だと思うのですが、私たちは逆に決まりごとを作らないようにしているんです。そのほうがみんな誰に頼ることなくしっかりすると思いますので」
この日の練習は、見学にやってきた入団希望者がそのまま演奏に参加したり、「家庭の事情で3年間休んでいた」というメンバーが久々に復帰したり、とにかく賑やかで、風通しの良さが印象に残った。
「メンバー全員が、活動を通じて、音楽の楽しさはもちろん、音楽で人に喜んでいただくことの楽しさも感じてくれたらうれしいですね」
ゲッゲロゾリステンは、これからも音楽を必要とする人のために、楽しく自由に活動を続けていく。
Q.メンバーにはどんな人がいる?
学校の先生や公務員、会社員、主婦、学生まで、いろんな方がいます。ちなみに代表の原は、今年の3月まで小学校の校長先生でした。近年は学生さんや、転勤で仙台にやってきた会社員の方がメンバーになるケースが多いです。親子2代でメンバーになっている方もいますよ。
Q.コンサートで心がけていることは?
特に子どもに聴かせるときに多いのですが、できる限り参加してもらうようにしています。歌ってもらったり踊ってもらったり、クイズを出して答えてもらったり。プロジェクターで映像を流すときもあります。メンバーには学校の先生もいますので、授業でやっていることを公演で活かしたり、逆に公演でやってみたことを授業に取り入れたりもしています。
バンド紹介
●バンド名:ゲッゲロゾリステン
●結成時期:1979年
●活動内容:仙台市を中心に活動する弦楽合奏団。バロック・古典派音楽から映画音楽・ポップス、童謡、アニメソング、メンバー作曲のオリジナル曲まで幅広いレパートリーを持つ。依頼に応じて“音楽の出前”を行う。コロナ前は平均して月に2回の公演を行っていた。指揮者を置かず、メンバーの自主性を尊重して音楽を作るのがモットー。
●練習頻度:2週間に1回のペースで、市内の市民センターで練習。
●年齢構成:20~60代
●メンバー:バイオリン14名、ビオラ7名、チェロ6名、コントラバス1名、パーカッション1名、ボーカル2名 計31名(2023年1月現在)
オフィシャルサイト
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文/ 山崎隆一
photo/ 阿部雄介
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