今月の音遊人
今月の音遊人:原田慶太楼さん「音楽によるコミュニケーションには、言葉では決して伝わらない『魔法』があるんです」
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シンガー・ソングライターの岡本真夜が『TOMORROW』でデビューしたのは1995年。2015年の20周年を経て、2016年は大胆な変化に挑んでいる。一つは、3月にmayoとしてピアニストデビューしたこと。そして、岡本真夜として4年ぶりとなるオリジナルアルバム『Love Story』は、密かな願いとして温めていた切ないラブソング集を形にすることができた。
岡本真夜といえば応援歌、というイメージを抱いてしまうのは、200万枚のヒットとなったデビュー曲があるから無理もない。これまでのアルバム制作にあたっても、期待にこたえて応援ソングを意識せざるを得なかったという。
「でも、デビュー前、聴くのも歌うのも好きだったのは、切ないラブソングだったんです」
同様の思いは、今作セルフカバーとして収録した『Alone』を発売した時も感じていた。「3枚目のシングルで『Alone』を出せた時、すごくうれしかった。『TOMORROW』の時は実感もなかったし、アップテンポは苦手。自分の得意なバラードはいつ受け入れてもらえるかなという葛藤があった。『Alone』をファンの方に受け入れてもらえたことで、初めて自信を持てたんです」。今作では、ライブでの弾き語りで披露しているという、アレンジでの自身によるピアノ伴奏も光る。
平原綾香の最新アルバム『LOVE』に提供した『未送信の恋』もセルフカバー。「『Alone』みたいな切ない物語が欲しいということで、『未送信のままで』という言葉を自分のストックとして大事にしていたので、そこから広げて書きました」。『Alone』の歌詞の肝となる「欲しいのは同情じゃない、あなたの愛がほしい」という部分を逆にして、「同情でもそばにいてほしい」という仕掛けも施した。
『always love you~恋しくて~』は、mayoとしてのピアノアルバムの収録曲であり表題曲。「インスト曲として作ったので、歌になることは考えてなかったけど、言葉がメロディに対して浮かんできて止められなくなりました。映画『夢二』のメインテーマとして書いたので、自然に夢二の恋愛シーンが重なって言葉が出てきたのかもしれません」。2オクターブ近い音域がある難曲だが、裏声を生かして見事に歌い上げている。
小さい頃はクラシックのピアニストが夢だった。高校生の時、ポップスに魅了されて歌手になったが、夢を捨てきれない思いも心の奥底にあった。それに気づいたのは、東日本大震災の時だった。『TOMORROW』へのリクエストも多くうれしかった反面、複雑な思いも抱えていた。
「人によっては『頑張れ』という言葉を聞きたくないという人もいると思う。そんな時に言葉がないピアノで少しでも気持ちを和らげてもらえればと思ったんです。余震が相次いだ時期、眠れない方もたくさんいらっしゃったと思う。そういう人を思いながらピアノを弾いたり、曲を作ったりしていました。言葉がない分、皆さん自由に気持ちを乗せて聴ける。それがインストの醍醐味ですね」
プライベートでは、高校一年生の男の子の母親だ。「だからといって、子供向けの曲や親の思いを書きたい気持ちは一切ない。皆さんが聴いて元気になれたり優しい気持ちになれたり、何かに気づくことができるような楽曲を作りたい。それは、ずっとこの先も変わらない思いです」
『Love Story』
発売元:ドリーミュージック
発売日:2016年7月6日
価格:2,500円(税込)
文/ 仁川清
photo/ 後藤泰宏
Hair&Make-up/渡辺雅江(イーズ)
tagged: インタビュー, アルバム, 岡本真夜, Love Story
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