今月の音遊人
今月の音遊人:生田絵梨花さん「ステージに立つと“音楽って楽しい!”という思いが、いっそう強くなります」
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われら音遊人:上海で生まれた縁が続く大家族のようなブラスバンド
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2023.12.15
tagged: アマチュアミュージシャン, われら音遊人, 上海ブラスバンド日本支部
ある週末の昼下がり。取材場所に到着すると、上海ブラスバンド日本支部(東京支部)の練習準備の真っ最中だった。時ににぎやかな笑い声を上げながら、慣れた手つきでティンパニやドラムセット、グロッケンなどを次々と運び入れている。
「仕事の都合もあって練習は土日が多いですね。私たちは活動拠点を持っていないので、公共施設と貸出楽器を利用して練習を行っています。“場所が確保できれば、とにかくそこに集まる”というスタンスで練習しており、メンバーが集まるのは月2回くらいでしょうか。夕方まで集中して練習したあとはみんなで乾杯。これが楽しみだったりもします」と笑顔で教えてくれたのは、パーカッションを担当する烏田裕さんだ。
そもそものスタートは2004年。仕事や留学などで中国・上海に滞在していた日本人によって、母体である上海ブラスバンドが現地で誕生した。以来、少しずつメンバーを増やし、一時期約80名の大所帯に成長。現在も約40名が在籍し、毎年夏冬の演奏会を通じて根強い人気を持つ楽団に成長している。
「そうやって上海で活動していたメンバーが帰国するにつれ“日本でも一緒に演奏したいね”と自主的に始めたアンサンブル会が日本支部の始まりです。2010年のことでした」(烏田さん)
この日の練習はアニメ主題歌『おジャ魔女カーニバル!!』からスタート。その後もアース・ウインド・アンド・ファイアーの『セプテンバー』やクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』、そして『オペラ座の怪人』『祝典のための音楽』『さくらのうた』など、バラエティに富んだ選曲が続く。
「“楽しく聴いていただけて、演奏する自分たちも楽しい曲を”という意識があります。上海の演奏会では、世界的に有名なミュージカルやジャズの曲、スタジオジブリなど日本のアニメ作品の主題歌などがものすごく盛り上がるんです。その中で“こういう曲も楽しいよ”と新しいものを提案しながら、観客の方に何かしらの思い出をお土産にしてもらえるような選曲を心がけていました。この思いは今も変わりません」(五十嵐秀和さん 指揮・パーカッション)
全体練習の際、指揮を担当する五十嵐さんがメンバーそれぞれに丁寧かつ具体的なアドバイスを送る姿が印象深い。
「うちのメンバーは、学生時代にずっと吹奏楽部で吹いていた人もいれば、音楽教室の体験レッスンでサクソフォンに興味を持ったからと参加した人もいて、経験レベルに差があるんです。ですから練習の日には毎回、まず全員に“自分自身の階段をひとつ上ろう”と伝えています。“また同じことを言ってるよ”と突っ込まれたりもするんですが(笑)、自分の課題にトライしてクリアするという成功体験は楽しさにつながりますし、少しずつでも全体としてまとまり、上達する道筋を作りたい。継続が力になるバンドにしたいですね」
日本支部として初めての演奏会を開催したのが2016年。コロナ禍の時期を挟むとバンドとしての活動期間は実質10年ほどだが、メンバーは“上海ブラスバンドで活動していた”という共通体験が大きな結びつきになっていると口をそろえる。「上海にいた時期が異なって面識がなくとも、日本支部で会った途端に古くからの友人のような感覚になるんです。海外で仕事や学業をしながら音楽活動をする経験をした者同士、家族に近い存在ですね」(正野達也さん トランペット)
「中国の大学に留学して慣れない毎日を送っていた私にとって、上海ブラスバンドは自分の居場所のようなものでした。そして、帰国した今も楽しく演奏活動ができている。こんなバンドは他にありません」(小林かす美さん パーカッション)
異国の地で生まれ、育まれた音楽の力とメンバーの絆は、日本でも豊かなハーモニーを響かせ続けている。
※写真1枚目は、2024年春の演奏会に向けて、合奏練習に参加した東京支部のメンバーたち。
Q.メンバーにはどんな人がいるの?
母体の上海ブラスバンドに在籍していたことが前提で、本人とその家族、元留学生が中心です。コンスタントに練習を行っている東京支部と、演奏会に合わせて活動している東海支部、関西支部の3支部で構成されています。年1回のつま恋合宿には全国各地からメンバーが集まり、練習と交流を行います。
Q.今後の目標は?
上海に在籍していたメンバーが元になって、アジア各地に吹奏楽団が生まれています。そこから帰国された方々も増えてきたので、今後新しい交流が持てればと考えています。あとは、日本支部の演奏会を上海で開催すること。来年は上海ブラスバンドが誕生して20年の節目ですし、まだ夢でしかありませんがかなえられればうれしいです。
バンド紹介
●楽団名:上海ブラスバンド日本支部
●結成時期:2010年
●活動内容:2016年に第1 回演奏会を開催して以降、毎年演奏会を実施(コロナ禍の2021~2022年は除く)。2024年4月28日(日)に東京の江東区文化センターで第7回演奏会を開催予定。
●練習頻度:メンバーが日本全国に広がっているため、全員が集まるのは年1回のつま恋合宿(静岡県)と演奏会当日。メンバーが多い東京支部では月2回程度の練習を行い、その様子を撮影した動画を全国のメンバーと共有している。
●年齢構成:10代から60代まで幅広く、平均年齢は45歳。
●メンバー:約180人。演奏会メンバーは約70人。
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文/ 高内優
photo/ 阿部雄介
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