Web音遊人(みゅーじん)

Venova(ヴェノーヴァ)

やさしい指使いと豊かな音色を両立させた、「分岐管」と「蛇行管」

ヴェノーヴァの特徴的なフォルムをもう少し詳しく見ていきましょう。まず視覚的に引きつけられるのが「分岐管」。この分岐管があることで、ヴェノーヴァは円筒管(クラリネットなど、管の内側の太さが一定の管楽器)でありながら、円錐管(サクソフォンなど、管の内側の太さが広がっている管楽器)のような響きを出すことができるのです。

Venova(ヴェノーヴァ)

円筒管は楽器がコンパクトで大きな音孔は必要ないのですが、指使いが複雑です。一方、円錐管は、指使いはやさしいのですが音孔が大きくなり、指で塞げないためキイをつけるなど、楽器の構造が複雑になります。それに対してヴェノーヴァは、円筒管を分岐させることによって、やさしい指使いで豊かな音色と奥深い演奏表現を可能にしたのです。

次に興味がわくのは、蛇行している主管の形状。これは、「C管でソプラノリコーダーに似た運指」「演奏しやすさ」「シンプルで管楽器らしい造形」といったいくつものコンセプトを形にするために音孔の間隔を縮め、蛇行させたものです。
しかし、蛇行のさせ方は発音や音程に影響をおよぼします。2オクターブの音域と安定した音程、発音のしやすさといった条件をクリアする主管の曲げ方、音孔の位置や大きさなどが、試作を重ねるなかで導き出されていきました。
その過程で重要な役割を果たしたのが、ヤマハの高度な音響解析のシミュレーション技術と、長年にわたって培った管楽器製作のノウハウだったのです。

Venova(ヴェノーヴァ)

管の色をつけた部分が息の通り道。主管がどのように蛇行しているかがよくわかる。

ヴェノーヴァの誕生は、楽器音響分野の基礎研究に長年携わってきたヤマハ株式会社研究開発統括部の増田英之さんが、分岐管理論に着目したことに端を発しています。「ひとつの長い管と、もうひとつの短い管を分岐させることで、近似的にサクソフォンの音が出せることがわかりました。この理論を応用すれば、分岐管を用いた管楽器が作れるのではないかと思いつきました」と、増田さんは振り返ります。
そして、発音と音程の両立をはかるためのシミュレーションを担当したのが同じくヤマハ株式会社研究開発統括部の末永雄一朗さん。「管の蛇行のさせ方ひとつでも特性が変わるので、シミュレーションと3Dプリンタによる試作を繰り返して調整し、発音と音程のベストバランスを探りました」

さらに、デザイナーや末永さんと連携しながら、楽器としての形を確立していったのは、教育楽器開発での経験が豊富な大野徹さん。「子どもも持ちやすいようにという視点を盛り込み、リコーダーのノウハウも取り入れながら、具体的な生産方法を模索しました。主管が蛇行しているヴェノーヴァは、リコーダーと同じ成型はできません。息漏れせず、安全に演奏できる楽器を作るために、蛇行管そのものを金型内で成型する方法に行き着きました」。
こうして、開発、デザイン、生産、販売など、それぞれの専門家が垣根を越えて一丸となり、技術力とアイデアと情熱を注ぎ込んだ渾身の新作、ヴェノーヴァは、約25年にわたる基礎研究と約2年の商品開発を経て、ついに世に送り出されたのです。

Venova(ヴェノーヴァ)

(写真左)ヤマハ株式会社研究開発統括部の増田英之さん。(写真中)ヤマハ株式会社研究開発統括部の末永雄一朗さん。(写真右)ヤマハ株式会社楽器・音響開発本部大野徹さん。


Venova – 新技術で誕生した、今までにない楽器

 

Take3ではヴェノーヴァの「購入してから吹くまで」を見てみましょう。


Take1:スタイリッシュで斬新なデザイン。思わず吹いてみたくなるカジュアル管楽器「Venova(ヴェノーヴァ)」の誕生
Take2:やさしい指使いと豊かな音色を両立させた、「分岐管」と「蛇行管」
Take3:すぐに音を出せて、自由に演奏できる。管楽器の楽しみを多くの人に


■Venova(ヴェノーヴァ)

Venovaは手軽に始められて、かつ本格的な演奏も楽しめる新しい管楽器。
<手軽>
・手軽に持って行ける、軽くてコンパクトなデザイン
・水洗いOK, お手入れも簡単
・リコーダーに似たやさしい指使い
<本格的>
・サクソフォンのような表現力豊かな音色と本格的な吹き心地
・シンプルな構造ながら2オクターブの音域
詳細はこちら

■ヤマハ大人の音楽レッスン「ヴェノーヴァ」


気軽なのに本格的、新たな技術で開発された楽器を存分にお楽しみください。
無料体験レッスンも受付中!
詳細はこちら

特集

今月の音遊人 小沼ようすけ

今月の音遊人

今月の音遊人:小沼ようすけさん「本気で挑まなければ音楽の快感と至福は得られない」

22655views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#052 情動を理性に包んで発露したジャズ版協奏曲~マイルス・デイヴィス『クールの誕生』編

585views

練習用のバイオリンとして進化する機能と、守り続けるデザイン

楽器探訪 Anothertake

進化する機能と、守り続けるデザイン

5527views

楽器のあれこれQ&A

目指せ上達!アコースティックギター初心者の練習方法とお悩み解決

102734views

ホルンの精鋭、福川伸陽が アコースティックギターの 体験レッスンに挑戦! Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ホルンの精鋭、福川伸陽がアコースティックギターの体験レッスンに挑戦!

11430views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

わかりやすい言葉で、知られざる楽器の魅力を伝えたい/楽器博物館の学芸員の仕事(後編)

9162views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

6207views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

8017views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

13628views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

8713views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

大人の音楽レッスン、わたし、これでも10年つづけています!

7451views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10818views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

12207views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

25524views

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.4

音楽ライターの眼

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.4

5569views

オトノ仕事人

新たな音を生み出して音で空間を表現する/サウンド・スペース・コンポーザーの仕事

7774views

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

11482views

【楽器探訪 Another Take】人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

12503views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

22980views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

7102views

楽器のあれこれQ&A

モチベーションがアップ!ピアノを楽しく効率的に練習するコツ

42421views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7317views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32202views