Web音遊人(みゅーじん)

アーティストの個性を生かす演出で、音楽の魅力を視聴者に伝える/テレビの音楽番組をプロデュースする仕事

テレビ朝日系列で放送されている『関ジャム 完全燃SHOW』は、関ジャニ∞が毎回さまざまなアーティストをゲストに迎え、ジャムセッションやトークを繰り広げる音楽番組である。その番組制作はどのように作られているのか? プロデューサーを担当する藤城剛ふじしろごう さんに話を聞いた。

心がけているのは、作り込みすぎないスタイル

『関ジャム 完全燃SHOW』は、東京・六本木にひっそりと佇む「ライブ&トークハウス 関ジャム」という設定になっている。MCを担当するのは関ジャニ∞の村上信五、支配人は俳優の古田新太。番組のスタート以来、藤城さんはプロデューサーとして制作に携わっている。
「関ジャニ∞も古田さんも音楽の知識は豊富なので、番組内でのやり取りはほぼアドリブですね。収録の前に打ち合わせはしますけれど、各回の方向性だけを伝えて、話の内容など細かいことはお願いしません。一応台本はありますが、本番に入ると出演者がいろんなことを披露してくれるので、僕は裏方でただただ感心しています。また、ゲストもテレビによく出て慣れている人とは限りませんから、この辺りから話を進めた方がしゃべりやすいかな?と彼らが察したら臨機応変に対応してもらったり、僕が現場で目を合わせながら進めたりと、その場の雰囲気に合わせてジャズセッションのような感じで進めています」
番組がスタートして7年、構成の仕方や、見せ方も当初とは変化しているという。
「放送開始の頃は、ゲストのプライベートを探る企画をやっていて、今のように音楽に特化した形ではなかったんです。番組のオリジナリティを出すには、アーティストの個性や、音楽制作の部分を掘り下げた方がよいだろうと感じるようになり、番組のカラーが変わっていきました。さらに音楽のプロたちのすごさが伝わるよう、出演者に実演してもらうことも増えています」

スタジオで収録全体の流れを把握し、進行管理をする藤城さん。

ディレクターの仕事もするプロデューサー

藤城さんの肩書はプロデューサーである。そもそもプロデューサーとはどのような仕事なのだろうか?
「一般的にプロデューサーの仕事は、企画の立ち上げ、予算の管理、出演者のキャスティング、企画・進行などいろいろあると思うのですが、制作全体の総責任者、テレビ番組制作においては、番組全体を指揮する立場といえばいいでしょうか。僕の場合は基本的にキャスティングを少しと、あとは演出面全般を管理しています」

収録中はスタジオの撮影現場にいることの方が多いらしい。
「番組の各企画にはそれぞれ担当のディレクターがいます。彼、彼女らが出演者との打ち合わせを経て作成した台本をチェックし、事前に編集されたものを確認、直してほしいところがあれば指示を出すのも仕事の一部です。収録が始まったらサブにいることはありませんね」
サブとは、スタジオ内に設けられた、番組制作用機器の操作や音声、映像などをコントロールしている操作室のことである。インカムを使ってスタジオのスタッフに指示を出している光景はテレビでも目にすることがある。プロデューサーはここにいるものと思っていたが、藤城さんは違った。
「収録の間はスタジオにいて、進行を見ながらカンペ出しをしています」
カンペとは、スタッフから出演者に無言で手早く伝えるため、スケッチブックなどに文字で書いて見せているアレである。カンニングペーパーを略した業界用語だ。
「実は、テロップも自分で全部書いています。これはプロデューサーの役割というよりは、演出(ディレクター)業務に当たると思います。ですのでプロデューサーの肩書きもありますが、ディレクター寄りの仕事をしていると言ってもいいかもしれませんね」

入社した年に始まった『ロンドンハーツ』というお笑い番組をずっと担当してきたことも藤城さんの仕事スタイルに影響しているようだ。
「芸人さんメインのお笑いバラエティで、あまり決めて作り込まないスタイルで20年間番組を制作してきたんです。そこで覚えた番組の作り方を音楽番組でも活かして、出演者の個性を出しています」
自然な感じでトークや実演が進行する『関ジャム 完全燃SHOW』の魅力は、アーティストや出演者の個性を生かす演出にあったのである。

『関ジャム 完全燃SHOW』を観た視聴者から、「このゲストさんすごいなと思ってその人の曲を聴くようになりました」という声も多いという。

音楽についてはプロに委ね、視聴者に届く見せ方を気にかける

実際に『関ジャム 完全燃SHOW』はどのように作られていくのか、番組制作の流れを教えてもらった。
「まず企画を立てます。構成作家さんから企画を提案されてゼロから作り始める場合もあれば、音楽番組にみられる、アーティストさんがプロモーションなどで出られるタイミングに応じて企画を考えるケースもあります。テーマが決まったら、内容やスケジュールを詰めていきます」
番組の内容を決めるためには、情報集めが必要である。
「スタッフには『ミュージックステーション』(1986年から生放送されている長寿音楽番組)に携わっている音楽業界に精通する方もいますから、彼らからアーティスト情報を集めたり、プロの音楽関係者などを教えてもらって出演をオファーしたりすることもあります。余談ですが、入社直後の研修で配属されたのが『ミュージックステーション』でした。宇多田ヒカルさんが初めてテレビに出演した時、その場に研修でいたんです。それから16年経って音楽制作班に呼ばれて『関ジャム 完全燃SHOW』の演出をやることになりました」

番組を作り上げていくには、音楽プロデューサーやアーティストと打ち合わせをすることも大事なステップである。
「例えば、番組によく登場してもらっている蔦谷好位置つたやこういち さん(音楽プロデューサー)と打ち合わせをするときは、彼のスタジオに出向いて一緒にYouTubeの動画を見ながら、『これ、すごくないですか?』『おもしろいですね!』と、そんな感じで話をしています。その場で蔦谷さんがキーボードを弾きながら楽曲の特徴を説明してくれると、音楽に詳しくない僕でもわかった気になれるんです。プロの方からしたら当たり前のことでも、僕らが聴いたり見たりすると『そうだったのか!』みたいなことが結構あるんです。それならば、この打ち合わせのやり取りの感じをそのまま番組にしちゃおうと思ったこともありますね」
番組の中でキーボードが置かれているのは、そんな経緯があってのことだ。また、番組作りで常に気にかけているのは、どうやったら番組として楽しく見応えのあるものになるか、ということである。
「音楽に詳しい方に楽しんでもらうのはもちろんですが、詳しくない方にもバラエティ番組として楽しんでもらいたい。そのためにはどうしたらいいのか、という議題は放送開始から7年経った今でも、制作陣で話し合っています」

アーティストや音楽について細かく掘り下げる部分もあれば、賑やかなトークで笑いを誘う部分もある。広い視聴者を想定した作りは、こうしたほどよいバランスにあらわれている。制作のバックグラウンドを踏まえて番組を観れば、より深く楽しむことができそうだ。

Q.初めて買ったアルバムは何ですか?
A.あまり覚えていないのですが……記臆の限りでは、サザンオールスターズの『KAMAKURA』だったと思います。CDではなくレコードでした。

Q.今の仕事についていなかったら、どんな仕事を選んでいましたか?
A.ごめんなさい、思い浮かびません。小さい頃になりたかった職業とかもないですね。テレビ朝日に入社したのは番組制作枠の募集があって。僕はバラエティが好きだったので、ここならいろんなおもしろいことができるかなと。

Q.音楽はどのようなときに聴きますか?
A.移動や仕事の合間などに聴くことが多いですね。『関ジャム』の出演者の方の打ち合わせ資料を見て、そこで挙がった曲を聴くことが多いです。

Q.疲れたときのリフレッシュ法(気分転換など)はありますか?
A.疲れたなと感じた時にはすでに次の仕事がスタートしていることが多いので、それ自体が気分転換になっているのかもしれません。そのくらい、毎回、『関ジャム』の出演者の方との事前のやり取りは刺激的なことが多いです。仕事中心の生活ですので、個人的な趣味と言えるものは特にないですね。

Q.仕事をする中で心がけていることは?
A.『関ジャム』で言えば、“マニアックさの加減”です。視聴者の知的好奇心を重視していますが、内容が難解すぎたり説明過多になると番組として楽しさが半減してしまうので。ちょうどいいところで留めておくさじ加減が大事ですね。
これからも、音楽の新たな一面に迫れるような企画を、関ジャニのみなさんや古田新太さんたち出演者とともに作り上げていきたいですね。

■関ジャム 完全燃SHOW

テレビ朝日系列
毎週日曜 23:00〜 ※一部地域を除く
出演者:関ジャニ∞、古田新太 ほか
詳細はこちら

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