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「自分らしい色を!」ピアニカ新色開発の裏側
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2025.3.4
tagged: ピアニカ, お客様コミュニケーションセンター, カスタマーサポート通信, PE-37
幼稚園や小学校の音楽教育で広く使用されている鍵盤ハーモニカ。ヤマハの商品名である「ピアニカ」は、その代名詞といってもいいでしょう。
ヤマハが初めてピアニカを世に送り出した1967年以降、カラーバリエーションは長らくブルーとピンクという2色でしたが、2024年10月には新色のオレンジが登場。ピアニカの長い歴史に新たな1ページが加わりました。
その誕生の背景について、ヤマハミュージックジャパンお客様コミュニケーションセンターの加藤敦子さんと管弦打事業戦略部の安藤真生さんに聞きました。
1984年に発売し、学校教育の現場で愛され続けてきた普及モデルの定番「P-32D」は、30年にもわたるロングセラーになりました。そして、その遺伝子を受け継ぎ、実に30年ぶりとなるモデルチェンジで2014年に登場した「P-32E」は子どもたちや保護者、先生たちの意見を取り入れ、さらに使いやすく、より演奏しやすく進化しています。
「この時の進化ポイントとしては、例えば演奏用パイプを留めるクリップの新設です。演奏しない間もホースが邪魔にならないので授業に集中できるうえ、立奏時も便利になりました。吹き口がどこにも触れない設計にすることで衛生面の改善にもつながりました」
安藤さんはそう話します。さらに、ケースを開いた蓋の部分がタブレットを立てかけられる譜面台になったり、子どもの小さな手にフィットする持ち手を採用したりするなど細やかな改良がいくつも施されています。
管弦打事業戦略部の安藤真生さん
音質や耐久性、安全性などにおいて高く支持されてきたピアニカですが、近年、さらに魅力的なものにするため新色開発も検討され始めていたといいます。
そして、ほぼ同時期からお客様コミュニケーションセンターにもカラー展開に関する声が複数寄せられるようになりました。男の子はブルー、女の子はピンクという旧来の固定概念に対して、「ジェンダーバイアスという観点からも、色のバリエーションを増やしてほしい」「むしろ一色展開にしては?」といったご意見です。
「ピアニカは不具合に対するご相談がほとんどなく、手前みそですが、安定した品質だという自負がありました。でも、品質や安心・安全なつくりだけでなく、多面的な視点を持つことの重要性にあらためて気づかされました。こうした声を持っている方々がいることは、何としてでも私たちが社内に発信していかなければならないと強く感じました」
加藤さんはそう振り返ります。
お客様コミュニケーションセンターの加藤敦子さん
加藤さんはそうしたユーザーの声を、部門の垣根を超えたミーティングで情熱と使命感をもって伝え続けました。その声を安藤さんらピアニカの事業企画を担当する部門が開発部門と共有し、本格的な検討がスタートすることになりました。
カラーバリエーションを増やす。簡単なように聞こえますが、決して一朝一夕にできることではありません。
「本当に新色を出すべきなのか。出すならば、色はどうするのか。時間をかけて、さまざまな議論が交わされました」(安藤さん)
ヤマハは、ヤマハのブランドを冠するあらゆる製品のデザイン開発を行うデザイン研究所を有しています。その協力を仰いだ結果、子どもに親しまれるいくつかの色のうち、実際に使われるシーンに当てはめながら、明るさ、鮮やかさ、色味を調整した候補色が提案され、最終的には、品のある華やかさと活発さを兼ね備えたオレンジの新色が登場することになりました。既存のブルーやピンクと調和する色であることも重要なポイント。また、ケースを淡いイエローにしたことで、楽器をケースから取り出すときのワクワク感を創出しました。
ピアニカ「P-32EO」
「多様性をどのように伝えていくかにもこだわりました。その結果、打ち出したのが『自分らしい色を!』というキャッチコピーです」(安藤さん)
新色オレンジのピアニカは、子どもたち一人ひとりが個性を輝かせ、自分らしさを表現するための新たな選択肢となりました。お客様からは「待っていました!」という歓迎の声が多く届いています。
「お客様の意図をきちんと汲み取り、発信していくことは常々意識していますが、この件ではその大切さをあらためて痛感して、襟を正しました」(加藤さん)
ピアニカは多くの子どもたちにとって最初に持つ自分の楽器になる。だからこそ自分らしい色を選んでほしい。そして子どものころのピアニカ体験を入り口に、音楽や楽器に親しんでほしい。新色誕生の背景にはこうした願いも込められています。
「小学校の授業をもってピアニカを卒業するのではなく、その先もピアニカを楽しめたらと考えています。落ち着いたカラーとシンプルなデザインを採用した『大人のピアニカ(P-37E2)』という人気の機種もありますので、長く演奏していただけたらうれしいです」(安藤さん)
お客様に寄り添い、そして音楽とともにある豊かな生活を提案するために。本質的な課題の把握とフィードバックに日々努めています。
文/ 福田素子
photo/ 坂本ようこ
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