今月の音遊人
今月の音遊人: 上野耕平さん「アクセルを踏み続けることが“音で遊ぶ”へとつながる」
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カルテット、ピアノ、オーケストラ。注目の三枚を聴く
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2014.9.26
tagged: ピアノ, オーケストラ, CD, レビュー, カルテット, Brazil, R. シュトラウス:アルプス交響曲, バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻
近年、弦楽カルテットの分野で名声をほしいままにしてきたフランスの若手グループのエベーヌ弦楽四重奏団。モーツァルトやドビュッシー、ラヴェルなどのクラシックのレパートリーにおいてきわめてスタイリッシュかつ切れ味のある演奏で聴き手を魅了しているが、実は彼らにはもう一つの顔があって、ポップスやジャズ、映画音楽のアレンジ曲の演奏も得意とし、こちらでも心憎いセンスを発揮する。
そうしたエベーヌのポピュラー路線での最新盤のタイトルはずばり『Brazil/ブラジル!』。この夏ブラジルで繰り広げられたワールド・カップにちなんだネーミングだが、収録曲は南米をテーマに、サンバやボサノバ、はたまたマイケル・ジャクソンやスティングなどのナンバーをラテン風にアレンジしたものなど幅広い。さらにボーカルにステイシー・ケントとベルナール・ラヴィリエを迎え、洒脱なテイストに仕上がっている。
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同じくフランス出身のピアニスト、ピエール=ロラン・エマールはとりわけ現代もののスペシャリストとして名高いが、ここ数年バッハの鍵盤音楽にも取り組んできた。六年前の《フーガの技法》に続くバッハ第二弾として、この秋《平均律クラヴィーア曲集》第一巻をリリースする。
モダン・ピアノでバロック音楽を弾く場合、何よりも正しい楽器を選び、正しく調整することが大事、と語るエマール。《平均律》はピアノを学ぶ者なら誰もが何曲かは弾いたことあるだろうが、二十四の前奏曲とフーガ全曲をまとめて聴くと、そこには本当に壮大な宇宙がある。一つ一つの曲が異なるアイディアから成っているだけでも驚異的なのに、バッハはさらに全体を俯瞰的な視点から見事に構成しているのだ。エマールは十月の来日公演でも《平均律》を取り上げるので、ぜひ生の全曲演奏も味わってほしい。
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今年はアニヴァーサリーを迎える作曲家が多いのだが、ここではリヒャルト・シュトラウス(一八六四~一九四九)の生誕百五十周年を祝い、彼のオーケストラ曲の傑作の一つ、《アルプス交響曲》の新譜をご紹介しよう。目下、東京のオーケストラの中でも特に評価の高い東京都交響楽団(都響)が、気鋭の首席客演指揮者ヤクブ・フルシャと昨年サントリーホールで行った公演のライブ録音である。
フルシャは知性と情緒のバランスがきわめてよい指揮者で、オペラでもコンサートでもつねに見通しよくドラマを作り上げる。前半ではアルプスの牧歌的な情景を細やかな表情で描き、雷雨と嵐のシーンではオーケストラをたっぷり鳴らして劇的なクライマックスを築く。ライブならではの臨場感にあふれる一枚だ。
文/ 後藤菜穂子
tagged: ピアノ, オーケストラ, CD, レビュー, カルテット, Brazil, R. シュトラウス:アルプス交響曲, バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻
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