Web音遊人(みゅーじん)

明日また歌いたいと思っていることが原動力/由紀さおりインタビュー

この世に“永遠”はないかもしれないけれど、この人にはその言葉が似つかわしい。
『夜明けのスキャット』でデビューしてから、2019年で50年を迎えた由紀さおり。澄んだ歌声は70代を迎えてなお美しく響きわたり、白く透き通った肌は変わらない。
「明日また歌いたいと思っていることが私の原動力です。私の毎日は、明日歌うためにあるといっても過言ではありません」
そう断言し、真のプロフェッショナル魂をうかがわせる一方、美しい肌の秘訣を尋ねると由紀はチャーミングな笑顔を見せた。
「人前に出ますからね(笑)。由紀さおりとしてだけでなく、女としてもそうありたいと思ってはいますけれどね」

“永遠”の美しい歌声で人々を魅了し、常に第一線を走り続ける由紀さおり。2019年から2020年をアニバーサリーイヤーと位置づけ、多彩な活動を展開している。
そのひとつが、2019年3月にリリースされたデビュー50年記念アルバム『BEGINNING~あなたにとって~』。後ろを振り返るのではなく前を向いて新たな一歩を踏み出す、まさにBEGINNING(はじまり)となる作品だ。
「若い方々がつくってくださる曲をどこまで歌えるか挑戦したくて、亀田誠治さんにプロデュースをお願いしました。自分が大切にしてきた歌を歌うだけでは、枯渇する感じがしますから」
同アルバムには、アンジェラ・アキ、いしわたり淳治、水野良樹(いきものががり)、永積崇(ハナレグミ)らアーティストによる書き下ろし全8曲を収録。なかでも、アンジェラ・アキが作詞・作曲を手がけ、アルバムタイトルにも冠された『あなたにとって』は、由紀にとって特別な存在となった。
「聴いてくださる方、一人ひとりのテーマソングにしていただきたい歌です。私という存在が消えても歌は残る。そういう作品に育てていきたいという大きな野望を持って、いろいろなところで歌っていきたいと思っています」
また、“感謝”と題した50年記念コンサートも進行中だ。このコンサートでは由紀が大切にしてきた珠玉の名曲に加え、ニューアルバムからも数曲を披露。円熟味をたたえ、ますます磨き抜かれた歌声で聴き手の心を揺さぶる。

女優、由紀さおりとしても新たな高みを目指す。
2019年9月、銀座の観世能楽堂は、ひときわ喝采に包まれた。上演されたのは、由紀のひとり芝居『夢の花-蔦代という女―』。有吉佐和子の名作『芝桜』が原作で、戦前の花街で生きた東京の芸者、蔦代の物語だ。
ひとり芝居の上演は、由紀が十数年来あたためてきた願いであり、思い入れは強い。それが実現したのは2018年秋。紀尾井町ホールでの1ステージ限りの舞台だった。
「足りないところもたくさんあって、それから1年かけてお稽古をしました」
そして2019年の秋、新たな趣向を加えての待望の再演。演じながら、歌に三味線に日舞とひとり4役をこなし、由紀はたおやかな姿を見せた。
「人間国宝の野村四郎先生に監修していただき、所作も教えていただきました。新しい発見があって、本当に刺激的でしたね。やはり能舞台は神様がおいでになる場所ですから、ものすごく力をもらえました」
3日間4公演を終えてすぐに再演の話が持ち上がったというから、由紀の笑顔はいっそう晴れやかだ。
「私は、その時どきの空気感やお客さまの呼吸みたいなものを常に自分の肌で感じ取り、歌ったり、演じたりしてきました。ある種研ぎ澄まされたその感覚を私は忘れたくないのです。今回の舞台も、そんな自分の感覚を信じることにつながったと思います」
さらに研鑽を積み、磨きをかけた渾身の舞台は2020年秋開催予定。由紀のチャレンジは、これからも続く。

■アルバムインフォメーション

『BEGINNING~あなたにとって~』


発売:ユニバーサルミュージック合同会社
発売日:2019年3月
価格:2,778円(税抜)
詳細はこちら

■公演インフォメーション

『由紀さおり50年記念コンサート2019~2020〝感謝〟』

2020年3月7日(土)開演15:30 加古川市民会館(兵庫県加古川市)
3月18日(水)開演18:30 和歌山県民文化会館(和歌山県和歌山市)
3月19日(木)開演18:30 びわ湖ホール(滋賀県大津市)
4月9日(木)開演16:00 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール(東京都葛飾区)
4月24日(金)開演16:00 たましんRISURUホール(立川市市民会館)(東京都立川市)
4月28日(火)開演16:00 レクザムホール(香川県県民ホール)(香川県高松市)
4月29日(水・祝)開演17:00 新歌舞伎座(大阪府大阪市)
5月14日(木)開演15:00 御園座(愛知県名古屋市)
5月28日(木)1.開演14:30/2.開演18:30 カナモトホール(札幌市民ホール)(北海道札幌市)
6月6日(土)開演15:00 中野サンプラザ(東京都中野区)
6月12日(金)開演16:00 関内ホール(神奈川県横浜市)

その他の公演情報は下記「公演情報はこちら」でご確認ください。
公演情報はこちら

■ブックインフォメーション

『明日へのスキャット』

著者:由紀さおり
発売:集英社
発売日:2019年7月25日
価格:1,389円(税抜)
詳細はこちら

特集

出口大地

今月の音遊人

今月の音遊人:出口大地さん「命を懸けて全力で取り組んだ先でこそ、純粋に音楽を楽しむ心を忘れてはいけない」

3701views

音楽ライターの眼

レスリー・ウェストの追悼CDボックス2作が発売。暑苦しい夏は暑苦しいロック・ギターで

3459views

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

25653views

知って得する!木製楽器の お手入れ方法

楽器のあれこれQ&A

木製楽器に起こりやすいトラブルは?保管やお手入れで気を付けること

23716views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

14819views

オトノ仕事人

コンサートの音の責任者/サウンドデザイナーの仕事

14708views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

30254views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7869views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

21755views

ゲッゲロゾリステン

われら音遊人

われら音遊人:“ルールを作らない”ことが楽しく音楽を続ける秘訣

3199views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

6549views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11794views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目のピアノデュオ鍵盤男子の二人がチェロに挑戦!

9702views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

25107views

音楽ライターの眼

1980年へのタイムマシン。レッド・クロスのデビュー40周年を記念してEP『レッド・クロス』新装再発

3761views

オトノ仕事人

アーティストの個性を生かす演出で、音楽の魅力を視聴者に伝える/テレビの音楽番組をプロデュースする仕事

10047views

ざぶとんず

われら音遊人

われら音遊人:本家ディアマンテスが認めた 力強く、心躍るサウンド!

1119views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

限りなく高い精度で鍵盤とハンマーの動きを計測するヤマハ独自の自動演奏ピアノの技術

28934views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

30254views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

8914views

楽器のあれこれQ&A

目的別に選ぼう電子ピアノ「クラビノーバ」3シリーズ

4928views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

4143views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

34970views