Web音遊人(みゅーじん)

村松崇継

今月の音遊人:村松崇継さん「音・音楽は親友、そしてピアノは人生をともに歩む相棒なのかもしれません」

デビュー以来、作曲家として映画やドラマなど多くの映像作品の音楽を担当する一方で、国内外のアーティストへ楽曲を提供。そして、自ら舞台に立つピアニストとしての活動も続ける村松崇継さん。“親友で相棒”と呼ぶピアノや音楽に対する思いを伺いました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

デイヴィッド・フォスターの『ウォーター・ファウンテン』です。彼は音楽プロデューサーとして有名ですが、『シンフォニー・セッションズ』というピアノとオーケストラで構成されたインストゥルメンタル・アルバムをリリースしていて、その中の一曲です。中学2年生くらいで出会って以来、人生のバイブルになりました。
この曲に出会うまでは、どちらかというとチャイコフスキーの交響曲などクラシックの管弦楽曲が好きで、はまり込んで聴いていました。そこから映画のサントラを聴くようになって、ポップスも聴き始めて……という感じです。
ポップスと言えば、初めて買ったJ-POPはTUBEの『夏を待ちきれなくて』。サビ始まりの切ないバラードかと思いきや一気にロックになるところが格好いいんです。クラシック以外のいろいろなジャンルを聴き始めて世界が広がった中学時代でした。

Q2.村松さんにとって「音」や「音楽」とは?

親友ですね。思春期の頃は、毎日の練習やコンクールに向けたレッスンなどが厳しくて、友達と会ったり、遊んだりする時間がほとんどありませんでした。だからそんな時は、自分の好きな曲をピアノで弾いてストレスを解消していました。今でも「寂しいな」とか「ちょっと疲れたかも」と感じる時はピアノを弾きます。そうやって音と触れ合うことが癒しになっています。僕は小さい頃から五線譜を絵日記の代わりにするようなところがあって、皆さんがその日にあった出来事を日記に書いて整理するように、小さな曲をつくって自分の気持ちを整えてきました。そうして書き溜めたものの中から、たまに作品が生まれることもありますね。レッスンを始めてから今までずっと、「音」や「音楽」は僕に寄り添ってくれている親友のような存在であり、ピアノはともに人生を歩む相棒なのかもしれません。

村松崇継

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

自分の好きな音楽や楽器を趣味や生き甲斐にして、人生を楽しんでいる人というイメージです。最近はNコン(NHK全国学校音楽コンクール)の小学校の部の課題曲「緑の虎」を制作した経緯もあってお子さんたちと会う機会も多いのですが、その時に伝えているのが「とにかく自分が楽しめる曲を奏でてください」ということ。練習に一生懸命になり過ぎると、たまに「もう嫌だ!」と思うこともありますが、音楽は字の通り「音を楽しむ」のが一番です。楽しいからこそ好きになって、可能性や才能が育まれる。そしてその先に多くの「音遊人」が生まれるのだと思います。
「音遊人」はプロに限ったことではなく、自分の好きな音楽を楽しんでいる方たちすべてがそうですし、皆さんが輝いていますよね。もちろん僕自身も、一生「音遊人」でありたいと願っています。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

頭の中で音が鳴った時にすぐ奏でられることでしょうか。僕は学生時代に吹奏楽やオーケストラに接することがあって、ピアノ以外にもトロンボーンなど、さまざまな楽器に触れてきました。「これはおもしろいメロディだな」と思った時に、それを音楽として再現できることは、やはり楽器をやっていたからこそだと実感しますし、作曲家としてもそれぞれの楽器の良さを知っていることは普段の曲づくりやアレンジに役立っています。そう考えると、自分の気持ちを表現するひとつの方法なのかもしれません。伝えたい何かを音楽で表現することもできるし、受け取る人の感性によってそれぞれのとらえ方ができる。そんなところも音楽のおもしろさ、楽しさですよね。僕は子どもの頃からピアノを弾いていますが、楽器や音楽を始めるタイミングはいつでもいいんです。「弾いてみたいな」「歌いたいな」と感じた時がスタートの時。何歳からでも始められるのがいいところですし、ずっと続けられる。僕自身、おじいちゃんになっても作曲をしていると思います。

村松崇継〔むらまつ・たかつぐ〕
静岡県浜松市出身。国立音楽大学作曲学科卒業。オリジナルピアノソロアルバム『窓』で1996年にデビュー。角川映画『狗神』の音楽を大学在学中に担当したことを皮切りに数多くの映画、テレビドラマ、舞台、ミュージカル等の音楽を手がける。映画『護られなかった者たちへ』の劇伴音楽で自身3度目となる日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。近年は『西本願寺音舞台』の音楽監督や舞台、コンサートにと精力的に活動中。
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photo/ 宮地たか子

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